【完結】Switchなんて聞いてない──氷のエリート様が年下の溺愛Domに溶かされるまで──

牛丸 ちよ

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Subとしての生活

15 Holic【4】 *R18

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 店を出て、会話もほとんどないまま近くのホテルへ移動する。
 部屋に入るなり抱き寄せられた。

 唇が重なり、せっかちにシャツのボタンを外し合った。
 ベッドへもつれ込めば、ぎしりと軋む音がする。

「セーフワードは覚えてますね」

「ああ」

 背中をシーツに預け、覆い被さる彼を見上げる。
 ホテルまでの道中、「久しぶりに飲んで酒に弱くなった」とこぼしていたが、酔っているようには見えなかった。ワインを一口だけ飲んだ俺のほうがよっぽどふわふわしている。

 再び口付けされ、はだけたワイシャツの中に彼の手が滑り込んでくる。
 肌寒い外にいたから指先の熱がはっきりと伝わってきた。
 鎖骨を、胸板を──乳首を撫でられ、くすぐったい。

 行き場のない手で彼の腰もとを撫でる。
 ベルトを外して引き抜き、スラックスの前を開けた。
 下着のふくらみを撫でると、ひくりと反応するのを感じる。

「ん……」

 彼が離れると、俺は思わず期待して注目してしまう。その口の動きに。

「──《舐めて》」

「……中々なCommandめいれいだな」

 待ちわびた命令に胸が高鳴るが、Subになりきれないプライドが口ごたえする。

「難しい課題のほうが、あなたは好きでしょう」

 その通りの指摘をされるともう何も言えなかった。
 おとなしく起き上がり、ベッドの上で座る彼の前にひざまずいて屈む。

 下着から引き出した性器をたどたどしく口に含んだ。
 こんなことをする日が来るとは思わなかった。酒で痺れた舌の先に肉の感触がある。
 探り探りに頭を動かすと、口の中のそれは息づくようにかたちを変えていった。

「……っ」

 頭上で杜上が息を呑むのがわかる。
 快感のあまり、というよりかは俺が下手すぎて。
 どうやっても歯が当たる。彼からしたら気が気ではないだろう。

 うまく何度かストロークできたときはわかりやすく硬くなるのだが、いまいちコツが掴めずしっかり勃たせられない。
 口だけでやるのは諦め、先端のほうだけを咥えて根元は手で扱くことにした。
 するとさっきよりマシらしく、杜上が呼吸を乱すのが聞こえる。
 ようやく、彼の性感帯をくすぐっている実感がわいた。

「ふ、ぅっ……」

 頭を引きすぎて、じゅると亀頭の先をすすってしまう。
 先走りと唾液の水気をたっぷりと含んだ音の下品さに少し驚いた。
 同時に、自分が彼の様子につられて興奮していることにもやっと気付く。
 自身の下肢に溜まった熱を自覚すると、うずうずして落ち着かなくなってくる。

 黙々と扱き舐めていると、杜上がそっと俺の頭を撫でた。

「《上手ですよ》」

 他愛のないRewardこんなことで嬉しくなってしまうなんて、もう本当に……どうしようもない。
 唾液まみれのそれから口を離し、彼を上目遣いに見た。

「足りない」

 今夜くらいは、本能のままふるまう。
 仰向けになると、キスが首筋から鎖骨へそそがれていった。

 スラックスごと下着を脱がされ、脚の間へ杜上が割り入ってくる。

 彼は俺の下肢へ顔を埋め、性器を舐めた。俺にさせたことなら自分もできるとばかりに。
 不慣れなのは彼も同じらしく、俺の反応をうかがう様子にどこかホッとした。自分ばかりが下手ではないこと。かつ、こういった状況が当たり前というわけでもなさそうなこと。

「んく、うぅっ……!?」

 どさくさに紛れて尻の──後ろの穴に触られて変な声が出る。
 何やらごそごそしていると思ったが、潤滑剤をまぶした指で窄まりをほぐそうとしていた。

「ちょっと、待っ」

「《静かにShh》、こっちに集中してくださいね」

 舌が這い、熱い口内に呑まれる。前後の快感と違和感にくらくらした。
 彼のための身体へほどかれていく。

「──これがここに入るようにするんですよ」

 あんまりに無言なことが気になったのか、杜上は身体を起こした。
 口元を拭い、それから俺の手をとる。導かれた先で触れたのは、杜上の性器だ。
 すっかり大きくなった容をなぞる。柔和な顔付きとはギャップのあるサイズ感だった。

 さらに手を引かれて、ほんの直前まで杜上にいじられていた自身の後孔を確かめさせられた。
 そこは潤滑剤にまみれて柔らかくなっている。

 じ、と見つめる瞳の言わんとすることを察してしまう。
 自分が少しだけ憎く思えた。気が付く賢さをアピールせずにはいられないし、とぼけられるほど器用でもない。

「も、いい、挿れろ……」

 百歩譲った言葉を絞り出したが、ニコリと微笑んだ彼の続く言葉でおねだりルビは不正解だったと知る。

「いいえ、あなたから《来て》ください」

 意味は理解できたが、「なぜ俺が」という思考の処理でしばし口を開けてほうけた。

 心なしか杜上は楽しそうに見える。なんて意地の悪いヤツだ。

 渋々、彼を押し倒す。
 おとなしく横たわった彼に跨った。作法もわからないまま自身をあてがう。

「大慈さんのそういう素直なところ、好きですよ」

「黙って、ろ……!」

 彼の視線から逃げるように顔を背けていた。羞恥心がチラつくものの、こんなところでも負けず嫌いが発動している。
 情けない態度を取りたくなくて、杜上の手にサポートされながらゆっくり腰を下ろしていく。

「ぅ、う……っ、あぁあ……!」 

 息が詰まるような異物感に戸惑う。
 いまの行いが性行為だと理解しているが、この先に快感があるとは到底思えなかった。
 時間をかけ、ようやく呑み込めたように感じて接合部に触れてみるが──

(ま、まだ全然……入ってない……)

 ──ほんの先端と繋がっただけだった。

「くっ……ぅ、ふぅぅっ……!」

 おそるおそるさらに腰を落とせば、潤滑剤の滑りを借りて硬いそれが入ってくるのがわかる。
 杜上と深く繋がり、身体をこじ開けられていくほど表現しがたい感覚に襲われた。
 腹の奥から登ってくる何かにビクリと肩が震えてしまう。身体が熱い。

「はぁ、ぁ……っ、くっ、ぅ」

 やっと半分を超えた。
 これ以上は無理だ。両手をついて腰を使う。
 接合が解ける不安もあってのろい動きではあったが、騎乗位らしくなってくる。
 ちゃんと杜上が気持ち良いのかはわからない。


「っ、は……」

 彼は時折、動きたそうな顔をしながら静かに俺を見守っている。
 生殺しにあっているのは彼のほうかもしれなかった。

「ん、んっ……ふっ……」

 後ろの経験がない俺は肉体的な快楽を得られないが、Playという側面では充分すぎる報酬を得ている。
 疲れて一旦止まると、杜上は繋がりが解けないようにしながら上体を起こした。
 体重を支えるように俺を抱き留め、ほんのりと汗ばんだ背中を撫でる。

「──《よくできました》、《がんばりましたね》」

「っ……こんなことをさせて、趣味が悪いぞ」

「燃えました」

 冗談なのか本気なのかわからないことを言うな。
 ──挟まれる雑談に集中できない。早く次の命令が欲しかった。この渇望がSubの本能か。

 会社ではCommandを向けられるたび強烈な不快感を感じていた。だからこそ反射的に反発し、従わずにいられた。杜上相手だとどうだ。不快を感じる隙もなく応えてしまう。

「……どうして、おまえのRewardはこんなに効くんだ」

 杜上は驚いたように目をぱちくりさせた。

「それはかなり……ずるいセリフですね」

「どういう意味だ」

「信頼が強いほどRewardは効果を発揮しますから」

 ム、と口をへの字にしてしまう。確かにそのへんの他人よりかは杜上を気に入っているかもしれないが、だからといって信頼が強いと表現されると語弊がある。

「これは……単に抑制剤を飲んでないからだ」

 そう、これは信頼の証明などではなく、杜上が優秀なDomであることの証明でしかない。

「そうかもしれませんね」

 言い返されると思っていたのに、さらりと同意されて拍子抜けする。

「……杜上?」

 なぜか嫌な予感がして、名前を呼んだ。

「続き、しましょうか」

 ふわりと身体が後ろへ倒される。ベッドが軋む。
 杜上が俺の脚の間で腰を寄せ、さらに接合が深くなる。
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