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新しい生活
22 Rainy【1】
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ランドに行ってからあっという間に一ヶ月が過ぎた。
様々な変化が当たり前の日常になったころ。
残業しているとスマホが震えた。会社の外に千裕が到着した連絡だ。
俺がいつまでも働いていると、あの過保護な男はせっせとその足で迎えに来る。
退勤して夜風の中で合流し、夕食をどうするか聞かれた。
食べたいものはないか確認されてもいつも任せてしまう。彼は嫌な顔ひとつせずに「じゃあ」と俺を導いていく。
着いた先はラーメン屋だった。何度か来たことがあり、千裕のお気に入りの店だ。
千裕はしょうゆラーメンの半チャーハンセットに、餃子を二人前注文していた。俺は塩ラーメン。
品が届くと、当たり前のように餃子の一皿が俺のほうへ差し出された。
食えと言われれば食うが……。
「おまえと暮らして少し太った」
「標準になったって言うんですよ」
本当だろうか。スープが絡んだちぢれ麺をすすった。
ラーメン屋を出ると、雨が降っていた。音で気付いていたが結構な雨量だ。
今日に限って天気予報をチェックしておらず、傘はない。千裕もそのようで手ぶらだ。顔を見合わせる。
「……家までもう少しですし、走っちゃいますか?」
「構わない」
というわけで、俺たちは小走りで帰宅した。
濡れネズミになって玄関に駆け込むと、千裕が先に靴を脱いで風呂場からタオルを持ってきた。
それを受け取り、水が滴る髪を拭く。
「先にシャワー浴びていいぞ」
「風邪ひいちゃいますよ、一緒に入りましょう」
男二人で?
返事しあぐねているうちに、千裕はさっさと先に行ってしまった。風呂場のドアを開け放ったままなのかシャワーの音が聞こえる。
「大慈さん、早く」
「いつもおまえのペースだな。まったく……」
びたびたの靴下を脱ぎ、湿った裸足で向かった。
脱衣所には千裕の脱いだ服が落ちている。俺も裸になって浴室に進み、後ろ手にドアを閉じた。
足に温かいシャワーをかけられる。そうして初めて、自分の体温が下がっていることに気付く。
「熱くないですか?」
頷けば、シャワーヘッドが壁の上段フックにかけられた。湯は出したままだ。必要に応じて使おうということだろう。
差し出されたシャンプーボトルを受け取り、立ったままそれぞれ髪を洗った。
「う」
泡が髪から目に垂れてきた。目をつむったままシャワーを手探りすると、千裕がシャワーヘッドを取る音がする。
「流しますよ」
宣言と共に頭へ湯がかけられた。自分でやれるのに、千裕の手が俺の髪をすすいでいく。わしゃわしゃと。
「おいっ、犬を洗うみたいに俺を洗うな」
「あはは、おとなしくできていい子ですね」
シャワーを奪い取り、同じように千裕の髪を流してやった。
そうしている間に、千裕は手でボディーソープを泡立てて俺の身体を洗い始める。最後まで世話するつもりか?
……いや、触り方がいやらしい。
「初めからそのつもりだったな?」
俺があきれた顔で見つめると、千裕は気恥ずかしそうに目を泳がせた。
「良い機会だと思って……」
「どういう機会だ」
「お風呂Playの……」
「変態……」
「うっ。で、でも、いつも同じPlayだとCommandもワンパターンになって難しいんですよ」
「わかったわかった」
最近はタイミングが合わず、Careを受けられていなかった。欲求不満じゃないと言えば嘘になるから、断る理由はない。
様々な変化が当たり前の日常になったころ。
残業しているとスマホが震えた。会社の外に千裕が到着した連絡だ。
俺がいつまでも働いていると、あの過保護な男はせっせとその足で迎えに来る。
退勤して夜風の中で合流し、夕食をどうするか聞かれた。
食べたいものはないか確認されてもいつも任せてしまう。彼は嫌な顔ひとつせずに「じゃあ」と俺を導いていく。
着いた先はラーメン屋だった。何度か来たことがあり、千裕のお気に入りの店だ。
千裕はしょうゆラーメンの半チャーハンセットに、餃子を二人前注文していた。俺は塩ラーメン。
品が届くと、当たり前のように餃子の一皿が俺のほうへ差し出された。
食えと言われれば食うが……。
「おまえと暮らして少し太った」
「標準になったって言うんですよ」
本当だろうか。スープが絡んだちぢれ麺をすすった。
ラーメン屋を出ると、雨が降っていた。音で気付いていたが結構な雨量だ。
今日に限って天気予報をチェックしておらず、傘はない。千裕もそのようで手ぶらだ。顔を見合わせる。
「……家までもう少しですし、走っちゃいますか?」
「構わない」
というわけで、俺たちは小走りで帰宅した。
濡れネズミになって玄関に駆け込むと、千裕が先に靴を脱いで風呂場からタオルを持ってきた。
それを受け取り、水が滴る髪を拭く。
「先にシャワー浴びていいぞ」
「風邪ひいちゃいますよ、一緒に入りましょう」
男二人で?
返事しあぐねているうちに、千裕はさっさと先に行ってしまった。風呂場のドアを開け放ったままなのかシャワーの音が聞こえる。
「大慈さん、早く」
「いつもおまえのペースだな。まったく……」
びたびたの靴下を脱ぎ、湿った裸足で向かった。
脱衣所には千裕の脱いだ服が落ちている。俺も裸になって浴室に進み、後ろ手にドアを閉じた。
足に温かいシャワーをかけられる。そうして初めて、自分の体温が下がっていることに気付く。
「熱くないですか?」
頷けば、シャワーヘッドが壁の上段フックにかけられた。湯は出したままだ。必要に応じて使おうということだろう。
差し出されたシャンプーボトルを受け取り、立ったままそれぞれ髪を洗った。
「う」
泡が髪から目に垂れてきた。目をつむったままシャワーを手探りすると、千裕がシャワーヘッドを取る音がする。
「流しますよ」
宣言と共に頭へ湯がかけられた。自分でやれるのに、千裕の手が俺の髪をすすいでいく。わしゃわしゃと。
「おいっ、犬を洗うみたいに俺を洗うな」
「あはは、おとなしくできていい子ですね」
シャワーを奪い取り、同じように千裕の髪を流してやった。
そうしている間に、千裕は手でボディーソープを泡立てて俺の身体を洗い始める。最後まで世話するつもりか?
……いや、触り方がいやらしい。
「初めからそのつもりだったな?」
俺があきれた顔で見つめると、千裕は気恥ずかしそうに目を泳がせた。
「良い機会だと思って……」
「どういう機会だ」
「お風呂Playの……」
「変態……」
「うっ。で、でも、いつも同じPlayだとCommandもワンパターンになって難しいんですよ」
「わかったわかった」
最近はタイミングが合わず、Careを受けられていなかった。欲求不満じゃないと言えば嘘になるから、断る理由はない。
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