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✧ Chapter 1
エロゾンビ・アウトブレイク【2】
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鈴見によってシェアハウスの全員がリビングに集められた。
テレビのチャンネルが変えられ、ニュース中継が映る。
「なんだ、これ?」
現場へ駆けつけたリポーターが、様子のおかしな通行人に襲われている。カメラがあわててフレームアウトさせていた。
どうやら、街中で錯乱した人間が複数いるらしい。
正気そうには見えない表情の男がカメラに向かって突進してくる。カメラマンが必死に逃げるのに合わせて画面が上下に揺れた。少しすると、追っ手を巻けたのか揺れが落ち着き始める。しばし息を整えた後、道を引き返しはじめた。残して来たリポーターを心配したのかもしれない。
だが、元の場所に着いてもリポーターの姿はなかった。彼が握っていたマイクだけが落ちており、カメラが困ったようにそれを映し続けている。
直後、カメラが後ろを振り向いた。ブレのひどい画面いっぱいに人の姿が映る。それは消えたリポーターだった。彼は真っ青な顔で牙を剥き、カメラへ――カメラマンへ襲いかかる。そして画像が乱れて何も映らなくなった。
砂嵐が続き、ようやくスタジオ放送に切り替わる。
ニュースキャスターも言葉に困っているようだった。
「……ドッキリ?」
ソファでジュースを飲んでいた明くる──シェアハウス最年少ながら、しっかり者でみんなから頼られている。鴉色の髪に蜂蜜色の瞳をした青年──が言った。チープなゾンビ映画を見せられたような顔だ。
リモコンを握る鈴見は、大真面目に首を左右に振る。
「駅を出たら街はパニック状態でした。人が人を襲っていて……。どうにか逃げて来ましたが、このあたりにも来るかもしれません。窓や扉はすべて施錠して、解決するまで外出しないようにしましょう」
大和はキッチンの裏口扉を、誰々は風呂場の窓を――鈴見は一人一人に指示を出していく。
まだ事態を飲み込めていない明くるは、窓辺へ行って外を見た。そこにあるのはいつも通りの景色だ。
「なあ、みんなでオレをからかってるんだよな?」
どうしても信じられないと言いたげな明くるへ、鈴見はしばらく考えて意を決したように袖をまくった。
さらされた左腕には、はっきりと人間の歯形があり、痛々しく血が滲んでいる。
「人が……冗談で噛みついたりします?」
「まじか……」
傍観者だった周囲も事態を受け入れたのか、そそくさと動き出した。安全な自分の部屋にこもるのだろう。
過密だったリビングがすっかり静まり返る。
鈴見の他に、俺と明くるが残っていた。
明くるが何かを言い出しづらそうにしている。俺はなんとなく言いたいことの察しがついていた。誰かが確かめなければならないことだ。
彼が言わないなら、俺が言おう。
ため息混じりに口を開く。
「セオリーでいくと、噛まれたならヤバいんじゃないか?」
「そうなんですよね……」
噛まれてウイルスに感染し、自分もゾンビになってしまう展開はゾンビ映画あるあるだ。
歯形のある腕を手で隠し、鈴見は不安そうに目を伏せる。
時間の経過で答え合わせはできるだろう。
最悪を見越したのか、彼は自分から提案した。
「……隔離して、様子を見てもらえますか?」
すぐ隣が彼の家だから、帰らせることは簡単だがかわいそうだ。
一階の奥に空き部屋がある。個室はみな鍵がかけられるようになっているから、経過観察にはちょうど良いだろう。
隣を見ると、明くるも同じことを考えているようだった。反対するでもなくウンとうなずき、着ている甚平のポケットから何かを取り出す。
「俺のビスコやるよ」
鈴見に菓子を握らせ、部屋への案内を買ってでていた。
「ありがとう、明くるくん……」
■
戸締りを見回って戻ってきた大和にも、鈴見を空き部屋に収容したことを伝えた。
本人が納得しているうちは良いが、そうでなくなったら内側から鍵を開けられてしまうため、隣の明くるの部屋から運んだ漫画棚で外側から扉を塞いだことも。
俺たちはリビングのソファに座り、同じ屋根の下にいながら部屋を分かちて鈴見と通話する。
テーブル上の大和のスマホは、スピーカーモードになっている。そこから鈴見の声が聞こえた。
『……やつらは、映画に出るようなゾンビに動きこそ似ていますが、目的は違うようでした』
外の様子を知っているのは鈴見だけだ。正気のうちに情報を引き出しておかねばならない。
隣では明くるがメモをとっていた。
「なんだったんですか? 目的って」
大和が質問すると、通話の向こうで鈴見が言いよどんでいる。
『それが……その……』
「鈴見さん?」
『えっと、まず、街で暴れているのはみんな男でした。でも、襲われているのは男も女もいて。男性にしか感染しないのかもしれません』
いやに遠回しな考察から始まった。急かしたりはせず黙っていると、話が続く。
『僕が改札から出たとき、やつらは無差別な人間に襲いかかって……服を脱がそうとしていました』
「服ぅ?」
明くるのメモする手が止まる。
大和は真面目に相槌を打っていた。
「肉を食べやすいようにでしょうか」
『……いえ。映画のゾンビみたいに、脳みそや肉は食べていませんでした。……表現によっては確かに食べてるんですけど。服を脱がされた人間は、その、犯されるんです」
「は?」
俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。そんな……。
「そんな、企画モノAVじゃあるまいし」
大和が俺の考えと同じことを口にしていた。
明くるも開いた口が塞がらない様子だ。
ゾンビが発生するだけでも非日常だというのに。なんなんだよ、この街は。
「本当なんですよ。ゾンビになると性衝動に支配されるみたいで」
現場を見た者にしかわからない恐怖があるのだろう。鈴見の声は震えていた。
「そんなことある……?」
明くると顔を見合わせていると、俺のスマホが着信を知らせた。
自室にこもっているシェアメイト──アダンから電話だ。
アダンは異世界でオークに襲われるなか東京に転移し救助されるという異例の経歴を持つエルフだ。聖騎士らしいが、東京では無知な外国人と変わらない。日本語を覚え、最近やっとスマホを使いこなせるようになった。
受話マークを押してスピーカーモードにする。
『もしもし、トリクシー? 今すぐテレビを見ろ!』
通話のとき音が邪魔だと消していた。テレビをつけると、また中継が流れている。どうやら騒ぎは都心の方まで広がっているらしい。
血相を変えたレポーターが避難や外出の自粛を叫んでいた。その背景のほとんどはモザイク処理されていて、なんの状況も伝わってこない。
が、誤魔化しきれない卑猥な音が公共の電波に乗っている。
「……鈴見さんの言う通り、ただのゾンビではなくエロゾンビだったわけですね」
「どえれぇな」
鈴見の話を聞いていない者も、自室からテレビやネットを介して外の状況を把握しつつあるようだった。
アダンは鈴見の噛み傷を思い出し、心配して電話してきたようだ。
『いまも一緒にいるのか? 彼の様子は?』
「アダン、鈴見は空き部屋に隔離してる。何かあれば共有するから安心しろ」
『そうか。あなたも気をつけて』
アダンは安心した様子で通話を終了した。
テーブル上のスマホは今も通話中の画面だ。テレビの音や、アダンとのやりとりも聞こえていただろう。
『……では、スマホの充電が切れてもいけないので、いったん切りますね』
「鈴見さん、お大事に」
通話が切れて画面がホームに戻る。大和がスマホを回収し、すぐに操作していた。おおかた、鈴見を励ますメッセージでも打ち込んでいるのだろう。
俺はリモコンを手に取り、テレビをザッピングする。どこのチャンネルも似たようなもので、新たな情報は得られない。
「でもさぁ、考えてみたら鈴見のやつ、性的に食われそうになることなんか、この屋根の下じゃしょっちゅうじゃん。あんなに怖がるなんてな」
唐突に、明くるがフフッと笑った。腹でも括ったのか、ソファに寝転がってリラックスしている。
「童貞食われるのと処女掘られるのじゃ、違うからだろ」
立ち上がり、窓から外を見る。すると、不穏な様子で徘徊する人間がまばらに確認できた。着実に駅前から感染が広がりつつある。
このあたりは住宅街だ。人口は決して少なくない。下手するとゾンビは一気に増えるぞ。
よたよたと歩くそれは、全裸もいれば、半裸もいる。襲われたときの状態がそのままだ。着衣を正す知能も失われてしまうらしい。
そして、共通して勃起している。
「鈴見さん、童貞をエロゾンビとして失うのは気の毒すぎます……。なんとかしてあげられないんでしょうか」
「完全なゾンビになってしまう前に、卒業させてあげるとか?」
「なるほど」
バカなやりとりを始めた大和と明くるを無視する。俺も部屋にこもろうかな。
ぽつりと明くるがつぶやく。
「禁断症状こじらせてる俺らとエロゾンビ、どっちが強いんだろうな」
テレビのチャンネルが変えられ、ニュース中継が映る。
「なんだ、これ?」
現場へ駆けつけたリポーターが、様子のおかしな通行人に襲われている。カメラがあわててフレームアウトさせていた。
どうやら、街中で錯乱した人間が複数いるらしい。
正気そうには見えない表情の男がカメラに向かって突進してくる。カメラマンが必死に逃げるのに合わせて画面が上下に揺れた。少しすると、追っ手を巻けたのか揺れが落ち着き始める。しばし息を整えた後、道を引き返しはじめた。残して来たリポーターを心配したのかもしれない。
だが、元の場所に着いてもリポーターの姿はなかった。彼が握っていたマイクだけが落ちており、カメラが困ったようにそれを映し続けている。
直後、カメラが後ろを振り向いた。ブレのひどい画面いっぱいに人の姿が映る。それは消えたリポーターだった。彼は真っ青な顔で牙を剥き、カメラへ――カメラマンへ襲いかかる。そして画像が乱れて何も映らなくなった。
砂嵐が続き、ようやくスタジオ放送に切り替わる。
ニュースキャスターも言葉に困っているようだった。
「……ドッキリ?」
ソファでジュースを飲んでいた明くる──シェアハウス最年少ながら、しっかり者でみんなから頼られている。鴉色の髪に蜂蜜色の瞳をした青年──が言った。チープなゾンビ映画を見せられたような顔だ。
リモコンを握る鈴見は、大真面目に首を左右に振る。
「駅を出たら街はパニック状態でした。人が人を襲っていて……。どうにか逃げて来ましたが、このあたりにも来るかもしれません。窓や扉はすべて施錠して、解決するまで外出しないようにしましょう」
大和はキッチンの裏口扉を、誰々は風呂場の窓を――鈴見は一人一人に指示を出していく。
まだ事態を飲み込めていない明くるは、窓辺へ行って外を見た。そこにあるのはいつも通りの景色だ。
「なあ、みんなでオレをからかってるんだよな?」
どうしても信じられないと言いたげな明くるへ、鈴見はしばらく考えて意を決したように袖をまくった。
さらされた左腕には、はっきりと人間の歯形があり、痛々しく血が滲んでいる。
「人が……冗談で噛みついたりします?」
「まじか……」
傍観者だった周囲も事態を受け入れたのか、そそくさと動き出した。安全な自分の部屋にこもるのだろう。
過密だったリビングがすっかり静まり返る。
鈴見の他に、俺と明くるが残っていた。
明くるが何かを言い出しづらそうにしている。俺はなんとなく言いたいことの察しがついていた。誰かが確かめなければならないことだ。
彼が言わないなら、俺が言おう。
ため息混じりに口を開く。
「セオリーでいくと、噛まれたならヤバいんじゃないか?」
「そうなんですよね……」
噛まれてウイルスに感染し、自分もゾンビになってしまう展開はゾンビ映画あるあるだ。
歯形のある腕を手で隠し、鈴見は不安そうに目を伏せる。
時間の経過で答え合わせはできるだろう。
最悪を見越したのか、彼は自分から提案した。
「……隔離して、様子を見てもらえますか?」
すぐ隣が彼の家だから、帰らせることは簡単だがかわいそうだ。
一階の奥に空き部屋がある。個室はみな鍵がかけられるようになっているから、経過観察にはちょうど良いだろう。
隣を見ると、明くるも同じことを考えているようだった。反対するでもなくウンとうなずき、着ている甚平のポケットから何かを取り出す。
「俺のビスコやるよ」
鈴見に菓子を握らせ、部屋への案内を買ってでていた。
「ありがとう、明くるくん……」
■
戸締りを見回って戻ってきた大和にも、鈴見を空き部屋に収容したことを伝えた。
本人が納得しているうちは良いが、そうでなくなったら内側から鍵を開けられてしまうため、隣の明くるの部屋から運んだ漫画棚で外側から扉を塞いだことも。
俺たちはリビングのソファに座り、同じ屋根の下にいながら部屋を分かちて鈴見と通話する。
テーブル上の大和のスマホは、スピーカーモードになっている。そこから鈴見の声が聞こえた。
『……やつらは、映画に出るようなゾンビに動きこそ似ていますが、目的は違うようでした』
外の様子を知っているのは鈴見だけだ。正気のうちに情報を引き出しておかねばならない。
隣では明くるがメモをとっていた。
「なんだったんですか? 目的って」
大和が質問すると、通話の向こうで鈴見が言いよどんでいる。
『それが……その……』
「鈴見さん?」
『えっと、まず、街で暴れているのはみんな男でした。でも、襲われているのは男も女もいて。男性にしか感染しないのかもしれません』
いやに遠回しな考察から始まった。急かしたりはせず黙っていると、話が続く。
『僕が改札から出たとき、やつらは無差別な人間に襲いかかって……服を脱がそうとしていました』
「服ぅ?」
明くるのメモする手が止まる。
大和は真面目に相槌を打っていた。
「肉を食べやすいようにでしょうか」
『……いえ。映画のゾンビみたいに、脳みそや肉は食べていませんでした。……表現によっては確かに食べてるんですけど。服を脱がされた人間は、その、犯されるんです」
「は?」
俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。そんな……。
「そんな、企画モノAVじゃあるまいし」
大和が俺の考えと同じことを口にしていた。
明くるも開いた口が塞がらない様子だ。
ゾンビが発生するだけでも非日常だというのに。なんなんだよ、この街は。
「本当なんですよ。ゾンビになると性衝動に支配されるみたいで」
現場を見た者にしかわからない恐怖があるのだろう。鈴見の声は震えていた。
「そんなことある……?」
明くると顔を見合わせていると、俺のスマホが着信を知らせた。
自室にこもっているシェアメイト──アダンから電話だ。
アダンは異世界でオークに襲われるなか東京に転移し救助されるという異例の経歴を持つエルフだ。聖騎士らしいが、東京では無知な外国人と変わらない。日本語を覚え、最近やっとスマホを使いこなせるようになった。
受話マークを押してスピーカーモードにする。
『もしもし、トリクシー? 今すぐテレビを見ろ!』
通話のとき音が邪魔だと消していた。テレビをつけると、また中継が流れている。どうやら騒ぎは都心の方まで広がっているらしい。
血相を変えたレポーターが避難や外出の自粛を叫んでいた。その背景のほとんどはモザイク処理されていて、なんの状況も伝わってこない。
が、誤魔化しきれない卑猥な音が公共の電波に乗っている。
「……鈴見さんの言う通り、ただのゾンビではなくエロゾンビだったわけですね」
「どえれぇな」
鈴見の話を聞いていない者も、自室からテレビやネットを介して外の状況を把握しつつあるようだった。
アダンは鈴見の噛み傷を思い出し、心配して電話してきたようだ。
『いまも一緒にいるのか? 彼の様子は?』
「アダン、鈴見は空き部屋に隔離してる。何かあれば共有するから安心しろ」
『そうか。あなたも気をつけて』
アダンは安心した様子で通話を終了した。
テーブル上のスマホは今も通話中の画面だ。テレビの音や、アダンとのやりとりも聞こえていただろう。
『……では、スマホの充電が切れてもいけないので、いったん切りますね』
「鈴見さん、お大事に」
通話が切れて画面がホームに戻る。大和がスマホを回収し、すぐに操作していた。おおかた、鈴見を励ますメッセージでも打ち込んでいるのだろう。
俺はリモコンを手に取り、テレビをザッピングする。どこのチャンネルも似たようなもので、新たな情報は得られない。
「でもさぁ、考えてみたら鈴見のやつ、性的に食われそうになることなんか、この屋根の下じゃしょっちゅうじゃん。あんなに怖がるなんてな」
唐突に、明くるがフフッと笑った。腹でも括ったのか、ソファに寝転がってリラックスしている。
「童貞食われるのと処女掘られるのじゃ、違うからだろ」
立ち上がり、窓から外を見る。すると、不穏な様子で徘徊する人間がまばらに確認できた。着実に駅前から感染が広がりつつある。
このあたりは住宅街だ。人口は決して少なくない。下手するとゾンビは一気に増えるぞ。
よたよたと歩くそれは、全裸もいれば、半裸もいる。襲われたときの状態がそのままだ。着衣を正す知能も失われてしまうらしい。
そして、共通して勃起している。
「鈴見さん、童貞をエロゾンビとして失うのは気の毒すぎます……。なんとかしてあげられないんでしょうか」
「完全なゾンビになってしまう前に、卒業させてあげるとか?」
「なるほど」
バカなやりとりを始めた大和と明くるを無視する。俺も部屋にこもろうかな。
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