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死にたがりオーディション
資料
しおりを挟むビニール封筒の中身は以前見た終夜くんの資料と何ら変わらなかった。
死にたがりオーディションと白文字で書かれた一面真っ暗のチラシに、薄い数ページ分しかない資料。
…そして、一面真っ黄色のチラシ?
「…あれ?」
「なになに?なにか入ってたの!?」
その、黄色いチラシを手に取ると終夜くんが覗き込んで来た。
「ちょ…近いんだけど…!」
「ねぇねぇ!なんなのそれ!」
何がそんなに気になるのか分からないけど興味津々のご様子だ。
オレの言葉なんて全く持って、どういういいらしい。
「なんなのって、終夜くんのには入ってなかったの?」
「うん、入ってなかった!で、何が書いてあるの?」
「あ、そう…んとね…」
…嘘をついているわけでもなさそうだ。
まぁ今は終夜くんのことよりも、問題はこのチラシだ。
やっぱり一番に目を引くのは、このチラシの色。
そして、そこには黒い文字でこう印字されていた。
【幸福の黄色いチラシ】
友達紹介としてご参加いただいた月鎖兎馬さまには、この【幸福の黄色いチラシ】を差し上げます。
死にたがりオーディションをきっかけに貴方にも幸福が、つまりは幸せが訪れますように、そう願って。
死にたがり事務局総員
「はあ…?」
読んでみて、第一声がそれだった。
全く持って理解が出来ない。
なんだこのどっかの某映画みたいな題名は。
それに理解出来ないのはこのネーミングだけじゃない、内容もだ。
ーしあわせの黄色いチラシ?ハンカチとかじゃなくて?
しかもその内容が、幸せ?
いやこの場合は幸福と書いてしあわせと呼ぶべきなんだろうけど…。
大体この差し上げますって書き方も気になる…。
「いいな~、僕のにはそんなチラシ入ってなかったのに…」
「いやいや…そんな呑気なこと言ってる場合じゃ…なんか一気に宗教臭くなってきてるし…」
「でも、この死にたがりオーディションの目的って人生の成功なんだし…その先にあるのが幸福でも別におかしくはないんじゃないかな?」
「…終夜くんは、人生の成功の先にあるのが幸福って思うの?」
「そりゃあそうだよ!兎馬くんはそうは思わないの?」
「……オレは…っ」
終夜くんは迷いなくハッキリとそう言い切った。
たしかに終夜くんの言ってることは分からなくはない。
だけど、オレは何故かそう言い切れなかった。
きっと人生の成功なんて…あまりにも現実味がなさ過ぎて、実感が湧かないせいなんだと思う。
多分終夜くんはそのキップを少なからず持ってるからこそ、言えるんだろうな。
一次審査だけどはいえ一万人という中から選ばれたってだけどすごいことだもんね。
「でも見てよかったね!友達紹介のおかげでそんなチラシが貰えるなんてさ!」
「ええ…でもただのチラシでしょ?」
「ただのじゃないでしょ!幸福の黄色いチラシ!それ、絶対捨てちゃ駄目だよ?」
「大丈夫だよ、最初から捨てるつもりなんてないし」
…差し上げるって言葉が書かれてある以上、無下に扱えないし。
「うんうん!それが良いと思うよ!それに、そんなチラシが入ってるってことはやっぱり兎馬くんも選ばれたってことなんじゃない?」
「いや…それはどうかな…。一次審査とはまた別の話な気がするし…」
「いやいや絶対そうだよ!だって、オーディション会場も僕たちの通ってるカミ塾であるくらいだもん!」
「それはそれでなんか怖い気もするけどね…」
「怖い?なんで?」
「だって…なんか仕組まれてるみたいじゃない?色々と都合が良すぎるっていうか…」
「だからそれは選ばれたからだって!」
全くといって聞く耳も持ってくれない。
まぁいいけど。
もしかしたら一次審査を受けてみれば分かることかもしれないし。
「あれ…そういえばオーディション日っていつだっけ?」
「え、兎馬くん確認してないの!?メールに書いてあったでしょ」
「ご、ごめん…オーディション会場のことで頭いっぱいになってた…」
「…なんか兎馬くんて結構ぬけてるとこあるよね…」
「え」
…え、それ終夜くんが言っちゃうの?
「ほら、URLの下に書いてあるでしょ?」
そう言って終夜くんは自分の携帯を差し出した。
「…今日は、月曜日だよね」
「うん、本当だったら僕たち今学校にいるはずだよ」
「オーディション日…明日の火曜日になってない?」
「うん、そうだよ?」
「いやそうだよって…ええ!?ちょ…急過ぎない?」
「そうなの?僕オーディションなんて受けたことないから、よく分かんないんだけど…」
「え…だって普通はさ、もうちょい期間が空いてるものでしょ?せめて二週間とかさ…メール来て早々明日一次審査なんて…」
「でも僕は早くオーディション受けたかったから別に問題ないよ!」
「…そりゃあ終夜くんは既に一次審査合格してるから良いかもしれないけど…こっちにだって準備ってものがあるのに…」
「大丈夫だよ!メールにも簡単な面接だって言ってたし、きっと選ばれた兎馬くんなら受かるよ!」
「いやだからそれは……まぁ…なるようになる…か…」
いきなり急展開で目が回りそうになるけど、明日…オーディションか。
しかもオレ達が通ってるカミ塾で一次審査が行われる。
「そのいきだよ!兎馬くん」
「…うん、そうだね」
そうだ、オレは自分の秘密のためにも絶対に合格しなきゃいけないんだ。
面接でなにを聞かれるか分からないけど…気を引き締めなきゃ。
「よし、じゃあ…明日に備えて今日はさっさとご飯食べて、寝よっか」
「え…ご飯って、僕もご馳走になっていいの?」
「ん?いいもなにも…オレは最初からそのつもりだったよ?まさか明日が一次審査なんて夢にも思わなかったけど…せっかくだし泊まっていきなよ」
「兎馬くん…ありがとう。」
「良いって。とはいってもオレ料理なんて出来ないから…カップ麺とかでもいい?」
「カップ麺!?やった!すごいご馳走だね!すごく嬉しいっ!!」
…まさか、今日一の笑顔をカップ麺で見ることになるとは…。
「…明日、楽しみだなぁ…」
オレがキッチンでカップ麺を用意する中、終夜くんはそんなことを呟いていた。
…これが、オレと終夜くんの歯車を大きく狂わす、人生の起点とも知らずに。
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