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死にたがりオーディション:一次審査
受付
しおりを挟む「着いたね…」
「うん…」
道中はいつもと同じだった。
なんたってここは、オレ達がいつも通っているカミ塾なのだから。
…にしても、本当にここで死にたがりオーディションの一次審査があるんだろうか?
「なんか…見た感じ、いつもと一緒だね…」
「そりゃあいつも通ってたわけだし、そんな大きな変化はないと思うけど…」
いざ着いてみると、外観自体も何ら変わっていなかった。
せめて貼り紙とか目印になるものくらい置いてあってもいいくらいなのに。
「…やっぱり、早く着き過ぎたのかな」
「んー…まだ僕たち以外に誰も来てないみたいだね」
外をざっと見渡しても誰もいない。
と、すると…中はどうだろう?
いくらなんでもオーディションをするくらいだから、それに関わってる人くらい、いるはず…
…そう、例えばオーディション事務局の人とか。
おそるおそるクリアタイプのドア越しから中を覗いてみる。
「…あら」
目があった。
…いやこの場合は目があったというより、あくまで目線があったと言った方が正しいかもしれない。
なんせこの声を掛けて来た人は、一面真っ暗い仮面らしきものを付けていたから、目があったとは言えなかった。
むしろオレはあまりの怪しさに目を背けた。
「と、兎馬くん…あれ、事務局の人かな…?」
さすがの終夜くんもこの怪しさには怖気付いてるみたいだ。
…だけど、声を掛けられた以上無視は出来ない。
「と、とりあえず入ってみようか…受付、とかもしなきゃだし…」
「う、うん…」
恐れながらも、扉を開けゆっくりと中に入っていく。
「あなたたち…死にたがりオーディションを受けに来た人?」
「は、はい…そうです…ね?終夜くん…」
終夜くんはこくこくと頷いた。
声といい…体格といい…仮面を付けてるから素顔はわからないけど、女性のように思えた。
「こちらへどうぞ」
こうして、真っ暗い仮面を付けた女性らしき人にオレ達は案内された。
「どうぞ、お座りください」
入り口から少し行った先に小さなローテーブルとどこにでもあるパイプ椅子がある。
おそらくここは受付なんだろうけど、一万人も受ける膨大なオーディションにしてはやけに雑なように思えた。
だけど、断るわけにも行かず…しぶしぶ案内された椅子に座った。
「お早いんですね、まだオーディション開始まで一時間もありますよ」
「え!あの…そ、そうですか…?」
「ええ、普通は皆さん時間ギリギリに来ますから」
「ははは…そうなんですか…」
まさかこんな会話が始まるなんて思ってもいなかったから、上手く言葉が続かない。
というか何でさっきから終夜くんは黙ったまんまなんだ?
「緊張されてます?」
「いやぁ…その…」
というか、なんでこの人こんなにもグイグイくるんだろう。
死にたがりオーディションの受付をしてるくらいだから、事務局の関係者だとは思うんだけど。
…普通こんなに気さくに話すものなんだろうか?
電話の時みたいな淡々とした、あの緊張感みたいなものが全然感じられないんだけど…。
それにこの声なんか…どっかで聞き覚えがあるんだよなぁ…。
「あの…受付、なんですよね?僕たち…早く済ましたいんです…」
そんなことを考えていると、ここにきてようやく終夜くんの口が開いた。
「あら、ごめんなさい。じゃあお名前教えてもらえますか?」
「入原終夜です…」
「オレは…月鎖兎馬…」
「入原終夜くんと、月鎖兎馬くんね…はい、たしかに。承っております。こちらをお受け取りください」
「!これは…」
そう言って手渡されたのは、受験番号のついた名札だった。
肝心の番号を見てみるとーー
「え…よ、44番!?大体こういうのって受け付け順じゃないんですか!?」
「ごめんなさい、番号はあらかじめ決められているらしいんです」
…ん?らしい?
「あ…そう、ですか…」
なんとなく言い方は気になったけど、それ以上に44番目という番号にわりとショックを受けていた。
ふ、不吉だ…しかも44番って今日だけで、どれくらいオーディションを受ける人がいるんだろう?
「兎馬くん兎馬くん!僕、77番だった!!」
「はっ!?な、77番!?」
てっきり早くに請求した終夜くんが早い番号だと思ったのに…。
いやでも今さっき受付順じゃないって言ってたし…あんまりそれは関係ないのかな。
てか77番って。オレなんかよりめちゃくちゃ待たないと駄目じゃん。
「77番って待つの大変だね…」
「え、別に平気!だってラッキーセブンだし!」
「あ、そう…」
いやいやその間どうやって時間潰す気だよ…。
まぁ終夜くんは嬉しそうだし、べつに良いけど。
「ここでお待ちになりますか?まだ開始時間まで30分くらいありますが…」
スマホの時計を見てみると、時刻は9時30分を指していた。
手荷物はいらないとはいえ一応スマホだけは持って来たけど、やっぱり持ってきて良かった。
「あの…因みに自分の番が来たら呼び出しとかしてもらえるんですか?」
「ええ、もちろん。月鎖くんは、14時。入原くんは、17時を目処にこちらに戻ってきていただければ後は大丈夫ですよ」
「え、自由にして良いんですか?」
「はい、受付と確認は済んでますので。」
「はあ…分かりました。」
なんというか、あっさりとした受付だった。
「ねえねえ、この後どうする?」
「んー…」
とりあえずは提示された時間さえ守れば後は問題ないらしい。
…けど、その後のことは何にも考えていなかった。
手荷物不要と言われた手前、手元にはスマホしかないわけだし…
「とりあえず、一旦出よっか。」
「りょーかい」
悩んでても仕方ない。
ひとまず塾から離れようとしたーーその時だった。
「うわああああっ!!どいてくれー!!!」
入り口のドアを開けると、向こうから凄い勢いで走ってくる人が近づいて来るのがわかった。
「っ!!?え、ちょま…」
車は急に止まれないーー
と、言わんばかりの猛スピードで走ってきて、この後はまさにお約束の展開だった。
そう、オレと、その人は…まるで交通事故のように正面衝突。
勢いよくぶつかる羽目となった。
「と、兎馬くん!?大丈夫っ!?」
そして、薄れゆく意識の中…終夜くんの声だけが鮮明に頭の中に響いていた。
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