死にたがりオーディション

本音云海

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死にたがりオーディション:一次審査

話1

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「いやー悪かったな。まさかあんな急に人が入ってくるとは思わなくてよ」 

「全然大丈夫。どうせオレ達もオーディション始まるまでどうしようか悩んでたところだったし、丁度良かったよ」

「あはは、確かにそれもそうだな」


あの後、彼は何食わぬ顔で戻って来た。

わりーわりーとお調子付いた声で謝っては来たけど、きっと本当のところで悪いとは思っていないんだろう。

オレ達が大丈夫だよって答えると、あっという間の切り替えの速さで話をし始めたのだから。

とはいえ、いくらなんでも入り口前での立ち話なんて出来るわけもなくオレ達は彼の提案で、近くのファミレスに寄ることになった。

そして、現在。彼と終夜くんとオレは今ファミレスにいる。

因みに、オレ達…というか、終夜くんは分からないけどオレは初ファミレスだったりする。

…憧れの四人テーブル席だ。ちょっと感動…。


「なんか、嬉しそうだな」

「え!いや…別にそんなことないけど…そ、それより話って何?」


恥ずかしさのあまり慌てて話を変える。


「お、おう…じゃあ手始めに自己紹介からしておくぜ。俺の名前は守山星太(モリヤマ セイタ)だ。よろしくな」

「守山くん…だね。オレは月鎖兎馬(ツキクサ トウマ)よろしく」

「星太でいいよ、よろしくな!トーマ。で、そこの細っこいのは?」

「……ッ…入原終夜です(イリハラ シュウヤ)あの、それと細っこいのって言うのやめてほしいんですけど…」

「あー、わりーわりー。名前も聞いたし、もう呼ばねえから、改めてシューヤもよろしくな」

「うん…ならいいけど」


あれ…珍しく終夜くんがムッとしてる…。

ふふ、なんかおかしい。


「さっきから表情コロコロ変わるなー、トーマって」

「え、そうかな?」

「ああ、でもオレはいいと思うぜ。見てて面白れぇし」

「あ、そう…」


そう言って、楽しそうに笑っている。
そういう守山くんこそ顔に思いっきり出てるんだけど。


「そ、それより話はなんですか?」

「ん?まあそう固くなるなって。つーかさっきから気になってたけどよ、シューヤはます敬語止めろって」

「え、でも…」

「いーっていーって。これも何かの縁だしよ。仲良くしようぜ!な?」

「は、はあ…」


守山くんのあまりの気さくさに終夜くんは対応に困ってるみたいだった。

いやこればかりは終夜くんだけじゃない。

なんというか今までにないタイプでオレもどう対処すればいいか分からないかも。

…だって、今までこんな風にオレ達に気さくに話しかけてくる人なんて今までいなかったしなぁ…。

とは言ってもオレの場合はのせいで話しかけてくる人は少なからずいたけど、今となってはそれも遠い記憶に等しい。


「んじゃあトーマ、シューヤ!まずはドリンクバー頼もうぜ!」

「え、それより話は?」

「ばーか、話の前に飲みもんが先だろ?すいませーーん!!」


慣れているのか流れ作業のように店員を呼ぶ。

すると、近くにいた店員さんが来た際には守山くんは間髪容れずにそのまま三人分のドリンクバーを頼んだのだった。

案の定というか、やっぱりオレの声は届くはずもなかった。


「よーし!じゃあ行こうぜ!トーマとシューヤは何にするんだ?」

「えっと…オレ初めてきたからやり方分からないんだけど…」

「え、マジ?シューヤはどうなんだ?」

「あ、僕も教えて欲しいかな…」

「今時珍しいやつもいるんだな。よーし、任せておけ!オレがしっかりレクチャーしてやるからよ!」

「お、お願いします…」


こればかりはオレも終夜くんも彼に頭を下げるしか他なかった。

結局、飲み物は守山くんに任せることになった。

なんでもドリンクバーというのは混ぜて自分好みのドリンクを作るのが通のやり方らしい。

彼はドリンクバーの位置に着くや否や、彼は意気揚々と星太特性のお手製のドリンクを作ってやるからな!といい、オレと終夜くんはその光景をただ見ていることしか出来なかった。


「さぁーて、出来たぜ!俺オリジナル☆星太ジュースだ!」


本当に彼に任せていいだろうかと微かな不安は残しつつも、ようやく完成したらしい。

何はともあれオレ達はそのジュースを持って、先ほどいた席に戻って来ることが出来た。


「さあ、召しあがれ☆」

「…」


そのときの感情をどう表したらいいんだろうか…。

目の前には真っ暗いジュース…?と呼ぶべきものがそこにはあった。

…やばい。よく分からないけど、感覚的にこれは飲んじゃいけない気がする…。


「も、守山くん…それもいいけどお話しようよ!ね?」


どうやら終夜くんもオレと同じく気持ちだったらしい。

今日何度目か分からないが、慌てて話を変えようとしていた。


「だから星太でいいって…まぁいいかそれは。それより話だったな」

「…う、うん!」


どうやら今回の話を変える作戦は成功したようだ。

思わず安堵する。

ここに来てようやく本題に入ることが出来そうだ。



「まぁ…なんだ。本当ならこういうこと誰にも言いたくねーとは思うんだけどよ…お前らもオーディションを受けたからには、資料請求…したんだろ?」

「…!」


思わぬ一言に心臓がドキッと跳ね上がった。

…まさか、彼がしたい話って…資料請求のことなのか…?
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