死にたがりオーディション

本音云海

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死にたがりオーディション:一次審査

話2

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「…資料請求が、どうかしたの?」


すかさずオレは答えた。

本来ならこんな話すべきことではないかもしれない。

…けど、彼も…いや守山くんもオレ達と同じく死にたがりオーディションを受けた身なんだ。

ということは自ずと彼も、アレを受け取っていることになる。


「ん?ああ…その、なんだ…嫌だったら無理して答えなくても大丈夫だからな?」

「う、うん…」


言いにくいのか、やけに念を押す守山くん。

けどオレはもう既に彼が聞きたいことはなんとなく分かっていた。


「…お前らのところにも…写真、来たのか?」

「……来たよ。オレも、もちろん終夜くんにも…ね?」

「うん…僕のところにも来たよ」

「そうか……」


彼は、それ以上のことは聞いてはこなかった。

けどオレ達の答えを聞いて納得したのか…そのまま言葉を続けた。


「はは…そうだよな…。一次審査に来てるっつーなら…ンなのわざわざ聞くまでもないよな…」

「ううん…大丈夫よ。その気持ち…オレにも分かるから」


きっと、守山くんもあの写真を見ても信じられなかったんだ。

もちろん彼がオーディションを受けている以上、自分で資料請求したのか間違いないとは思う。

その結果、あの写真と一緒に資料が送られてきたんだ。

とはいえそれも結局、自分が招いたこと。

そこにどんな理由があったのか、事情は知らない。

…ただ、写真を見た瞬間の信じられないって気持ちはオレにもよく分かる。


「…トーマって、良いやつだな。」

「え!そう…かな?ただ思ったことを言っただけだよ?」

「いや…それでもそう言って貰えて嬉しかったよ。お前みたいなヤツが資料請求するなんざ…よっぽどの理由があったんだな」

「え…!」

「…っ」


終夜くんはただ黙っていた。

まぁこの場合は黙るしか出来なかったってだけなのかもしれないけど。
いくらなんでも友達紹介されました、なんて言えないし…。


「…あのさ、トーマさえ良ければなんだけど…少しだけ、俺の話…聞いてくれるか?」

「うん…守山くんさえいいなら…」

「さんきゅ。…シューヤもいいか?」

「う、うん…いいよ」

「そうか…ありがとな」


そうして、彼は一呼吸入れると自分がどうして死にたがりオーディションに応募したのか、その経緯を話し始めた。


「…本当はな、このオーディション受けるかずっと迷っていたんだ…」


彼は言葉を続けた。

なんでも、彼の両親…つまりは彼のお父さんとお母さんは初めは仲の良い普通の夫婦だったそうだ。

だけど、父親が突然酒に溺れアルコール中毒になって家庭は崩壊した。

父親は荒れた。息子にすら暴力を振るわなかったが、母親に対しては酷い有り様で毎日のように暴行を加えていた。

もちろん息子は止めた。これ以上、母を殴るのは止めてくれと。

けどそれは何一つ父親には届かなかった。

それどころか、日に日に暴力は増していき、とうとう母親も心を病んでしまったそうだ。

だけど母親はそれでも息子を愛していた。

弱い自分を必死になって隠して、あくまで息子の前ではいい母親になろうとしていた。

「大丈夫」と口癖のように、笑顔を浮かべて。



「…本当に大好きだった。母さんは…オレのやりたいこととか、したいこととか常に優先的に考えてくれて…自分のことなんて二の次で…」

「その…やりたいことってなんだったの?」


つい、聞いてしまった。
だけど彼は嫌な顔一つせず、むしろ誇らしげに答えてくれた。


「ん?陸上だよ。こう見えてもオレは陸の推薦で高校に入ったんだぜ」

「そっか…頑張ったんだね…」

「ああ…これ以上、母さんの負担にはなりたくなかったんだ。せめて、高校の学費くらい…楽させてやりたくてな」

「そんな強豪校だったんだ。学費免除なんて…すごい」


オレと終夜くんは思った。

きっと、その強豪校の推薦を取るために彼は…死にものぐるいで努力したのだと。


「ああ…それはもう。推薦取れた時は一目散に母さんに報告して…そんで、一緒になって喜んでくれた」

「そっか…」

「でもよ…結局はそこまでだったんだ。」

「え…?」


ここで、彼の雲行きは変わった。


「…部活終わって、家に帰ったら…母さんが、酒に酔ったあのクソ親父に殺されていたんだ」

「…!」

「もちろんすぐに警察を呼んで、親父は捕まった。…だけど、俺は未だ親父が許せなかった。そんな時だった。母さんの寝室から遺言書のようなものが見つかったんだ。自分がいつか死ぬことを分かっていたのか、それはよく分からねぇけど…明らかに内容は俺宛に書いたものだった」


彼の言う、内容は簡単に言うとこう書いてあったそうだ。


ーーーーーーーーーーーー

星太へ

カミ塾に行きなさい。

そして、通い続けていれば…いつか貴方の耳に入るはず。

その言葉が耳に入ったら、迷わず受けなさい。


その言葉を…最後に記します。



ーーーーーーーーーーーー




「…それって、もしかして…」

「ああ、それがこの…死にたがりオーディションだ。」

「そんなことが…」

「もちろん、最初は半信半疑だったさ。けどオレは最後の…母さんの頼みだったから。オレはこことは違う別のカミ塾に通うことにした。そして…しばらくしたら、本当に死にたがりオーディションのことを耳にした」

「そ、それで…電話したの?」

「ああ…迷ったんだけどな。でも正直言うとクソ親父がムショで死のうがどうでも良かったし、むしろ…」


彼はその後の言葉は続けなかった。

けど、予想は出来る。

多分彼は…殺したかった、と…そう言いたかったんだと思う。



「…ということは、結局…資料請求したってこと?」

「ああ、まあ…そういうことになるな」

「じゃあ、写真にはその父親が映っていたの?」

「ちょ…終夜くん…」


今まで黙っていた終夜くんが、ここぞとばかりに質問攻めだ。

いきなりどうしたんだろう?

何か気になることでもあったんだろうか?


「…いや、それが違ったんだよ」

「え?」


…違う?それは、意外な答えだった。

終夜くんの失礼な質問にも関わらず、彼は答え続けた。


「……最初は目を疑った!信じれなかった!…けど、俺が…自分の母親を見間違えるなんてことはあり得ねぇんだよッ!!」


彼は酷く興奮していた。

その気迫に思わずビビりそうになる。

彼は、言った。

それは、彼にとって…いや、オレ達にとっても衝撃的な一言だった。




「写真に写っていたのは…親父だけじゃねえ!!母さんも親父と一緒に…ッ!」


ただ、最後の言葉だけは…消え入りそうな声だけで、そう呟いた。




「……生首に…されていたんだ…っ」



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