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7.国宝級イケメンは前婚約者に遭遇しました
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オーディスは窓の外を眺めて、話を続ける。
「ここから近いのは確かリズリー伯爵領にある宿場町だな」
「…え」
オーディスの一言でセシルの表情が曇った。
「どうした?」
「…いえ、なんでもありません」
セシルは取り繕うように笑顔を作るが、胸中は憂鬱であった。
彼にとって、リズリー子爵の娘は避けたい存在。
2人は貴族学校の同級生だったが、リズリー子爵の娘はセシルを事あるごとに『貧乏』と蔑んできたのだ。
(彼女と会いたくないなぁ…。会わなければいいのだけれど…)
セシルが心配しているうちに、馬車はリズリー子爵領の宿場町に到着した。
宿屋で部屋を取り、食事を済ませた後、オーディスとセシルは街へ散策に出た。
「伯爵様!あれ、見てください!パンが山みたいに積んであります!」
「パンは大抵山みたいに積んで売るものだぞ?」
セシルは空元気を出して明るく振る舞うが、上手くいかない。
周りをキョロキョロと見回すと、雑貨屋の店先にあるハンカチに目が止まる。
「可愛い…」
それはピンクのバラの刺繍が施されたタオル地のハンカチだった。
オーディスは咄嗟に声を出していた。
「…買うか」
「え、ええっ!高いですっ!パンが10個も買えますよっ!」
「…お前の価値基準はパンなのか」
オーディスはハンカチを手に取ると、完全な無表情で店内に入り、会計を済ませた。
そして店を出た後、セシルにハンカチを差し出した。
「ほら」
「わぁ、ありがとうございますっ!伯爵様からのプレゼント、嬉しいですっ!俺、一生大事にします!」
セシルが受け取ろうとした瞬間、ひゅうっと風がハンカチをさらっていった。
「あぁっ!ま、待ってー!」
「おい、走ると危ないぞ!」
セシルの耳にオーディスの言葉は届いていなかった。
おっちょこちょいな足取りで石畳をバタバタと駆けていき、どうにかハンカチをその手に掴み取った。
だが、しかし。
「わあっ⁉︎」
「きゃっ‼︎」
セシルは何かに盛大にぶつかった。
「ちょっと!何するのよっ!」
「も、申し訳ありません…!…えっ」
そこへセシルが聞き慣れた罵声が落ちる。
「リズリー子爵令嬢…?」
「あなた…」
ぶつかったのはセシルが最も会いたくなかった相手、リズリー子爵令嬢であった。
「まぁ…。あなた、そんな安っぽいハンカチを追いかけて…。学生の頃から相も変わらず貧乏たらしいのね」
セシルのことを馬鹿にして、リズリー子爵令嬢はお付きの侍女たちと一緒にクスクスと笑った。
「それは俺が婚約者に贈ったものだ」
「伯爵様…!」
オーディスは穏やかに、しかし容赦なく遮った。
声の温度は低く、その表情には冷徹さが滲み出ている。
令嬢は言葉を詰まらせると、ふらふらとオーディスに近づく。
「オーディス様、私のためにこのハンカチを…?」
「あぁ…?フランチェスカ嬢…」
「えっ…⁉︎お、お2人、知り合いなんですか…?」
リズリー子爵令嬢もとい、フランチェスカ・リズリーはつい先日、オーディスに婚約破棄を申し入れた前婚約者であった。
執事から婚約破棄の話を聞いてもなお、興味を持たなかった上、セシルのことで頭がいっぱいだったオーディス。
リズリー子爵領内に入るのにも関わらず、フランチェスカの存在をすっかり忘れていた。
(そういえば、彼女はリズリー子爵の娘だったか…)
前婚約者に会っても無関心なオーディスとは対照的に、フランチェスカはどこか嬉しそうだ。
「オーディス様、私を迎えに来て下さったのね!」
フランチェスカはそう言うと、オーディスの右腕にくっついた。
「なっ…!」
「は、はぁ…⁉︎どういう勘違いをしているんだ!お前は俺に婚約破棄をしただろう!」
「ここから近いのは確かリズリー伯爵領にある宿場町だな」
「…え」
オーディスの一言でセシルの表情が曇った。
「どうした?」
「…いえ、なんでもありません」
セシルは取り繕うように笑顔を作るが、胸中は憂鬱であった。
彼にとって、リズリー子爵の娘は避けたい存在。
2人は貴族学校の同級生だったが、リズリー子爵の娘はセシルを事あるごとに『貧乏』と蔑んできたのだ。
(彼女と会いたくないなぁ…。会わなければいいのだけれど…)
セシルが心配しているうちに、馬車はリズリー子爵領の宿場町に到着した。
宿屋で部屋を取り、食事を済ませた後、オーディスとセシルは街へ散策に出た。
「伯爵様!あれ、見てください!パンが山みたいに積んであります!」
「パンは大抵山みたいに積んで売るものだぞ?」
セシルは空元気を出して明るく振る舞うが、上手くいかない。
周りをキョロキョロと見回すと、雑貨屋の店先にあるハンカチに目が止まる。
「可愛い…」
それはピンクのバラの刺繍が施されたタオル地のハンカチだった。
オーディスは咄嗟に声を出していた。
「…買うか」
「え、ええっ!高いですっ!パンが10個も買えますよっ!」
「…お前の価値基準はパンなのか」
オーディスはハンカチを手に取ると、完全な無表情で店内に入り、会計を済ませた。
そして店を出た後、セシルにハンカチを差し出した。
「ほら」
「わぁ、ありがとうございますっ!伯爵様からのプレゼント、嬉しいですっ!俺、一生大事にします!」
セシルが受け取ろうとした瞬間、ひゅうっと風がハンカチをさらっていった。
「あぁっ!ま、待ってー!」
「おい、走ると危ないぞ!」
セシルの耳にオーディスの言葉は届いていなかった。
おっちょこちょいな足取りで石畳をバタバタと駆けていき、どうにかハンカチをその手に掴み取った。
だが、しかし。
「わあっ⁉︎」
「きゃっ‼︎」
セシルは何かに盛大にぶつかった。
「ちょっと!何するのよっ!」
「も、申し訳ありません…!…えっ」
そこへセシルが聞き慣れた罵声が落ちる。
「リズリー子爵令嬢…?」
「あなた…」
ぶつかったのはセシルが最も会いたくなかった相手、リズリー子爵令嬢であった。
「まぁ…。あなた、そんな安っぽいハンカチを追いかけて…。学生の頃から相も変わらず貧乏たらしいのね」
セシルのことを馬鹿にして、リズリー子爵令嬢はお付きの侍女たちと一緒にクスクスと笑った。
「それは俺が婚約者に贈ったものだ」
「伯爵様…!」
オーディスは穏やかに、しかし容赦なく遮った。
声の温度は低く、その表情には冷徹さが滲み出ている。
令嬢は言葉を詰まらせると、ふらふらとオーディスに近づく。
「オーディス様、私のためにこのハンカチを…?」
「あぁ…?フランチェスカ嬢…」
「えっ…⁉︎お、お2人、知り合いなんですか…?」
リズリー子爵令嬢もとい、フランチェスカ・リズリーはつい先日、オーディスに婚約破棄を申し入れた前婚約者であった。
執事から婚約破棄の話を聞いてもなお、興味を持たなかった上、セシルのことで頭がいっぱいだったオーディス。
リズリー子爵領内に入るのにも関わらず、フランチェスカの存在をすっかり忘れていた。
(そういえば、彼女はリズリー子爵の娘だったか…)
前婚約者に会っても無関心なオーディスとは対照的に、フランチェスカはどこか嬉しそうだ。
「オーディス様、私を迎えに来て下さったのね!」
フランチェスカはそう言うと、オーディスの右腕にくっついた。
「なっ…!」
「は、はぁ…⁉︎どういう勘違いをしているんだ!お前は俺に婚約破棄をしただろう!」
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