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短編用
4 比較 side ナサニエル
しおりを挟むそれからヴィクトリアと会う回数は増えた。
少しずつ距離は縮まっているのは感じるが、俺から少しでも触れようものなら、婚約者様がいらっしゃるのですからと、するりと躱してしまう。
触れたいのは君だけだと伝えても、顔を染めながらもいけませんわと言われてしまう。
勉学の成績はクレアの方が高いが、魔力の成績はヴィクトリアの方が上、爵位も伯爵と公爵で取って代われる、不足のない人物だと父上に進言すること数回。
一度たりとも首を縦に振ることは無かった。
「取って代わるくらいならクレア嬢で良いだろう」
「お前が産まれた頃より決められていた事だ」
「幼き頃からの相手を大切にしなさい」
「一人の女性を大切にできず、国民を大切にできると思っているのか!」
「昔から言っているであろう?目に見えるものが全ての価値であるとは限らないのだ。絆を大切にせよ」
何を言っても父上だけではなく、貴方も結婚をすればわかるわと、母上までもがクレアの肩を持った。
それどころか、最近クレアを招いていないのではないかと、学園では仲良くやっているのかと、以前のように時間を設けようとしてきた。
父上に悟られぬよう変わらず親しくしていると言い、ヴィクトリアの件については、国の為にそういう道もあるのではないかと、聞いておきたかっただけだと言った。
良い方に受けとった父上が、心配するなと、クレアを娶れば側室を迎え入れる事も、その必要もないと言ったのだ。
少なからず俺には衝撃的だった。一生クレアだけを愛していけと、意思もない赤子の頃から定められていたのだ。
どうにか抗おうと策を練った。父上も母上も目の届かない場所で、婚約破棄はできないものかと思った。そして、その時知ったのだ。
半年後に友好国である王族の結婚パーティーがある事を。
天啓だと思った。卒業パーティーの後でも2日は帰国しない事から、何かあれば自身で判断せず、宰相や父上の側近達に力を仰ぐ事を条件に、3日間俺に国を任せてくれと頼み込んだ。
最初はやはり認められず、俺が代理として友好国へ迎えという話だったが、今の俺に何ができて何が足りないのかわからないと、国を知りたいと説得を重ねて、卒業の翌日執り行うパーティーの日を含めた、3日間の国王代理としての権利を手に入れたのだ。
権利を得た翌日に、ヴィクトリアへ俺の胸の内を告白した。
クレアではなくヴィクトリアを想い妃へと望んでいる事、内密な話であるがクレアとの婚約破棄の予定がある事を。
「ヴィクトリア。どうか俺の想いを受け入れて欲しい」
「ナサニエル様……私、嬉しいです!」
打ち明けた想いを聞いて、ヴィクトリアは俺の腕へ飛び込んで来た。その体を抱き締めて、俺は幸福に包まれていた。
ずっとこうしたかったと可愛らしい事を言うものだから、思わず口付けをしようとすると、恥ずかしいですと俯いてしまったので、額に落とすだけに留めた。
今まで我慢をしていたのか、ヴィクトリアから俺に触れる事が多くなり、俺をとられまいと近寄る女性に威嚇するような言葉を言い始めた。
今まで触れる事さえも拒んできた存在が見せる俺への執着が、愛しいと思った。
それから半年、額から頬へ、頬から唇へと口付けをするようになり、今ではその唇の中の熱も感じ合う仲になった。
それ以上進もうとすると、まだ婚約者様がいらっしゃる身ですのでと、悲しげに言われてしまう。
この時はもう、俺の中でクレアは婚約者ではなく、ただの障害でしかなかった。
卒業の日にいつものようにヴィクトリアの唇を味わい、明日婚約破棄が済んだら俺の部屋まで来て欲しいと告げた。
意図を理解したヴィクトリアは、小さく頷くと恥じらうように俺の胸に顔を埋めた。
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