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短編用
6 契約の内容
しおりを挟む困りました。やはり面倒な事になってしまったようです。
婚約時の契約が無効になり、元の姿に戻れたのは良いのですが、王子は何やらご立腹のご様子です。
致し方ない事なのかもしれませんね。契約内容さえご存知無いのですから。
「陛下に詳しくお伺いして下さい」
悪足掻きだとわかっておりますが、早く家に帰りたいなと思ってしまうのです。
「陛下はあと2日は戻らぬ。知っているなら全て話せ。」
今にも噛みつかれそうな顔で王子は言いますが、全てを話すのは酷かと思います…。
諦ようとは思いましたが、予想通り足掻いても通用しないようです。仕方ありません、書類の確認は必要な事だったのですから。
「まず、私はこの国の者ではありません」
「はっ?!」
まぁまぁ、王子らしからぬ声が出てしまっておりますわ。それはもうすごく驚かれているのが表情に見て取れるので、失礼だと思いながらもクスクスと笑ってしまいました。
「失礼致しました。ここには同学年の方が多くいらっしゃいますが、もう契約は無効となりましたので、歴史を振り返っていただけるとわかるはずです。ティレット伯爵家がそこにない事を」
ざわりと周りの方々からも困惑の声が聞こえますが、私は続けます。
「赤子の頃より婚約を結ばれておりましたが、ティレットの爵位は、私をナサニエル第一王子の婚約者とする為に、陛下より父が賜ったものにございます」
「なぜ……そうまでして…」
「私の家系は子が生しづらいのです。その為、陛下は私を王子への婚約者と望み、年齢の見合う者がいないと私を不憫に思った両親は、ある条件を出して婚約を成立させました」
「それが先程の契約か」
「そうでございます」
正確には、年齢の見合う者がいないだけではないのだけれど、これは言わなくても良い事だと判断しますわ。
「その契約内容は?」
「一つ、20歳の婚姻の儀まで、クレア・ティレットの容姿は国の標準とする。一つ、『ちょっと待て!なんだそれは!?』ちの……」
折角説明をしているのに、王子が遮ってきました。王子に対して無礼だとは思うものの、ジトリと見つめてしまいます。
「ぁ…その…。すまん、続けてくれ」
遮ってしまった事が恥ずかしいのか、王子は顔を染めて視線を外して先を促しました。
「では最初から。
一つ、20歳の婚姻の儀まで、クレア・ティレットの容姿は国の標準とする。
一つ、20歳の婚姻の儀まで、知能と魔力は王妃になる者として劣らぬ程度に制限する。
一つ、クレア・ティレットを国で利用する事はしない。
一つ、20歳の婚姻の儀まで、ナサニエル・マクローリンはクレア・ティレットと契る事はしない。
一つ、婚姻時には新たに契約を結ぶ事とする。
一つ、この契約内容はナサニエル・マクローリンには秘匿とする。
この六つですわ」
私は笑顔で契約内容を明かしましたが、王子はまだ反芻しているようです。
「その姿が本来の…、真実の姿という事か?」
「そうですわね。今の姿が本来のクレア・ティレットです」
「制限……という事は、それ以上の能力があったという事なのか?」
「それもその通りですわね。今は無効となり、制限はかけられておりませんが」
「なぜ…俺には秘匿されていたんだ……」
王子の問いに答える度に、顔色が悪くなっていきますが、大丈夫でしょうか…。倒れたりしませんよね?
「あ~。それは両親の希望なのです」
言いにくい事ですが、ここまでくると話さなければなりませんね。
「先程も申したように子が生しづらいので、容姿や国への利用価値として嫁いで欲しくなかったと言っておりました。赤子より結ぶ婚約ならば、見た目に惑わされず、絆を結んで愛を育んで欲しいと思っていたそうです」
実際のところ、最後の一つを除けば契約なんて結ばなくても良いのです。
ただ、それをしてしまうと陛下か王妃が王子に言ってしまうかもしれないし、言わないようにしようとすると、両親の事を忘れて私が利用されてしまうかもしれない可能性があるだけで…。
強いて言うなれば、両親が私への愛で、微塵も危険が無いようにと契約として記しただけのものなのです。
それを自分から言わなくちゃいけないのは、やはり少し恥ずかしいですわ。
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