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第2部 人類の反撃
第16話(2)平和な日々-晴夏と千鶴-
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東京都内 某所 19:00
「うわっぷ!」
気がつくと、千鶴はコンクリートの上に転がるように倒れ込んでいた。同時に、顔を上げた彼女は周囲の建物に目をやる。
どこも崩壊はおろか、傷ひとつない建物ばかりの、見慣れた住宅街がそこに広がっていた。
「帰ってこれたんだ…!!あぁ…!!私んちだ!」
千鶴は立ち上がり、目の前にある自宅を見て声を上げる。そんな千鶴の背後から、誰かが倒れ込む音と、うめき声がきこえてきた。
「いってー…」
千鶴はその声に振り向く。そこに膝をついていたのは、ブレザー姿の、若々しい青年だった。
「ハルくん!元の姿に戻ってるよ!」
千鶴はその青年、本来の姿の晴夏に明るく声をかける。晴夏は立ち上がって自分の姿を見ると、自分の胸と股ぐらを触った。
「…ホントだ…!男に戻ってる…!」
「よかったね、ハルくん!これで戦わなくてもいいんだよ!元の世界に戻ってこれたんだよ!」
「よくはねぇよ!」
千鶴の言葉に対して、晴夏は思わず声を大きくする。戸惑う千鶴をよそに、晴夏は周囲を見回しながら話し始めた。
「オレたちがこうしてる間にも、星霊隊のみんなは戦ってる…早く戻ってやらねぇと!」
「もういいじゃん!こっちに来ちゃったんだったら、もう無関係だよ!」
「薄情な奴だな!お前仮にも一緒に戦ってきた仲間だぞ!?心配にならねぇのかよ!!」
「成り行きで数日間一緒にいただけの他人だよ!!」
「テンメェみんなに助けられておきながらよくも!!」
晴夏は千鶴の胸ぐらを掴みあげる。そんな晴夏と千鶴の横から、扉が開くような音が響くと、女性の声がした。
「こら、晴夏!千鶴ちゃんに暴力を振るうんじゃないよ!」
晴夏にとって聞き覚えのある声。晴夏が声のしたほうに振り向くと、彼の母が晴夏の方に向かってきていた。
「げぇっ!おふくろ!」
「女の子に乱暴して!こっち来な!」
言うが早いか、晴夏の母親は晴夏を捕まえ、晴夏を家の中に引っ張っていく。晴夏はギャーギャーと文句を言っていたが、それも無視されて家の中に連れていかれるのだった。
一方、その場にひとり残された千鶴は、そんな光景になつかしさを覚えていた。
(そうだったなぁ...昔から暴れん坊のハルくんを、ハルくんのお母さんがああやって抑えてたなぁ)
千鶴はそんな感傷に浸りながら、晴夏が連れていかれた家の、その隣の家の扉へと歩き、中にへと入った。
「ただいまー」
「おかえりー」
(あぁ...やっと聞けた…ママの声だ…!!)
4時間後 23:00
千鶴は、夕食を終え、数日ぶりの風呂を堪能し、家族との会話も楽しみ終えたあと、ベッドの上で横になっていた。
(ママの手料理にあったかいお風呂…ふかふかのベッド…あぁ、幸せだなぁ…!)
千鶴は、この数日間のことを思い返す。戦いに次ぐ戦い、シャワーで汗を流すだけの風呂に、焔たちが作る時短の料理、寝袋に包まる夜。今この瞬間とは、全てが真逆だった。
(もういいんだ、戦わなくて。痛い思いもしないし、美味しいご飯だって食べられる…そりゃあ、日菜子さんたちのことは心配っていうか、ちょっと申し訳ない気もするけど…そもそも、本当なら関わるはずもない人なんだもん…だったら、もう忘れる。忘れて、今の生活を思い切り楽しむ!明日からの学校、楽しみだなぁ...!)
千鶴は明日から自分を待っているであろう平和な日常を思いながら目を閉じる。彼女は今までの疲労も相まって、次の瞬間には夢の世界へ落ちていた。
次に千鶴の意識が戻ると、千鶴は、見覚えのない真っ白な空間に、ひとりで立っていた。
(…あぁ、夢の世界ってやつね)
千鶴は至って冷静に自分の置かれた状況を理解する。
(じゃ、このまま眠ろっと…)
「いやああああ!!!!」
眠ろうとした千鶴の耳に突き刺さる、若い女性の悲鳴。千鶴が思わず振り向くと、星霊隊として戦っていた時に幾度となく見てきた悪魔が、若い女性の首筋に歯を突き立てて噛み付いていた。
「!!?」
千鶴が驚きで動けないでいると、その女性が倒れ込み、顔が千鶴にも見えるようになる。千鶴が通っている高校と同じ制服を着ている彼女は、千鶴が一緒に過ごしている親友のひとりだった。
「ゆ、ユウカ!?」
「たす…け…ぎゃああああ!!!」
助けを求める彼女に、悪魔はさらに喰らいつく。千鶴に腕を伸ばしながら力尽きるユウカの体を、悪魔は貪り食い始めた。
千鶴は、目の前で起きている惨劇に、言葉を失う。血の海に倒れているユウカの名前を弱々しく呼ぶが、ユウカは返事をしなかった。
(なに…なんなの…!?)
悪魔がゆっくりと振り向き、千鶴の方を向く。悪魔はゆっくりと千鶴ににじり寄っていき、千鶴を見て舌なめずりをしていた。
「キヘヘヘ…!」
(大丈夫…これは夢だから…!)
後ずさる千鶴は、自分に必死に言い聞かせる。そんな千鶴の背中に、何かがぶつかった。
千鶴は背後に目をやろうとする。しかし、そんな千鶴の腕を、千鶴の背後にいたその何かが掴み上げ、身動きを取れなくする。
「なに!?なんなの!?」
「ヒヒヒ…」
千鶴がもがくのも虚しく、身動きが取れないままの千鶴にユウカを食った悪魔が近づいてきていた。
「やめて、来ないで…!嫌だ…!いやああっ!!」
千鶴の悲痛な叫びが何もない空間にこだまする。次の瞬間には、千鶴の首元に鋭い痛みが走り、彼女の体は生きたまま喰われていくのだった。
「うわっぷ!」
気がつくと、千鶴はコンクリートの上に転がるように倒れ込んでいた。同時に、顔を上げた彼女は周囲の建物に目をやる。
どこも崩壊はおろか、傷ひとつない建物ばかりの、見慣れた住宅街がそこに広がっていた。
「帰ってこれたんだ…!!あぁ…!!私んちだ!」
千鶴は立ち上がり、目の前にある自宅を見て声を上げる。そんな千鶴の背後から、誰かが倒れ込む音と、うめき声がきこえてきた。
「いってー…」
千鶴はその声に振り向く。そこに膝をついていたのは、ブレザー姿の、若々しい青年だった。
「ハルくん!元の姿に戻ってるよ!」
千鶴はその青年、本来の姿の晴夏に明るく声をかける。晴夏は立ち上がって自分の姿を見ると、自分の胸と股ぐらを触った。
「…ホントだ…!男に戻ってる…!」
「よかったね、ハルくん!これで戦わなくてもいいんだよ!元の世界に戻ってこれたんだよ!」
「よくはねぇよ!」
千鶴の言葉に対して、晴夏は思わず声を大きくする。戸惑う千鶴をよそに、晴夏は周囲を見回しながら話し始めた。
「オレたちがこうしてる間にも、星霊隊のみんなは戦ってる…早く戻ってやらねぇと!」
「もういいじゃん!こっちに来ちゃったんだったら、もう無関係だよ!」
「薄情な奴だな!お前仮にも一緒に戦ってきた仲間だぞ!?心配にならねぇのかよ!!」
「成り行きで数日間一緒にいただけの他人だよ!!」
「テンメェみんなに助けられておきながらよくも!!」
晴夏は千鶴の胸ぐらを掴みあげる。そんな晴夏と千鶴の横から、扉が開くような音が響くと、女性の声がした。
「こら、晴夏!千鶴ちゃんに暴力を振るうんじゃないよ!」
晴夏にとって聞き覚えのある声。晴夏が声のしたほうに振り向くと、彼の母が晴夏の方に向かってきていた。
「げぇっ!おふくろ!」
「女の子に乱暴して!こっち来な!」
言うが早いか、晴夏の母親は晴夏を捕まえ、晴夏を家の中に引っ張っていく。晴夏はギャーギャーと文句を言っていたが、それも無視されて家の中に連れていかれるのだった。
一方、その場にひとり残された千鶴は、そんな光景になつかしさを覚えていた。
(そうだったなぁ...昔から暴れん坊のハルくんを、ハルくんのお母さんがああやって抑えてたなぁ)
千鶴はそんな感傷に浸りながら、晴夏が連れていかれた家の、その隣の家の扉へと歩き、中にへと入った。
「ただいまー」
「おかえりー」
(あぁ...やっと聞けた…ママの声だ…!!)
4時間後 23:00
千鶴は、夕食を終え、数日ぶりの風呂を堪能し、家族との会話も楽しみ終えたあと、ベッドの上で横になっていた。
(ママの手料理にあったかいお風呂…ふかふかのベッド…あぁ、幸せだなぁ…!)
千鶴は、この数日間のことを思い返す。戦いに次ぐ戦い、シャワーで汗を流すだけの風呂に、焔たちが作る時短の料理、寝袋に包まる夜。今この瞬間とは、全てが真逆だった。
(もういいんだ、戦わなくて。痛い思いもしないし、美味しいご飯だって食べられる…そりゃあ、日菜子さんたちのことは心配っていうか、ちょっと申し訳ない気もするけど…そもそも、本当なら関わるはずもない人なんだもん…だったら、もう忘れる。忘れて、今の生活を思い切り楽しむ!明日からの学校、楽しみだなぁ...!)
千鶴は明日から自分を待っているであろう平和な日常を思いながら目を閉じる。彼女は今までの疲労も相まって、次の瞬間には夢の世界へ落ちていた。
次に千鶴の意識が戻ると、千鶴は、見覚えのない真っ白な空間に、ひとりで立っていた。
(…あぁ、夢の世界ってやつね)
千鶴は至って冷静に自分の置かれた状況を理解する。
(じゃ、このまま眠ろっと…)
「いやああああ!!!!」
眠ろうとした千鶴の耳に突き刺さる、若い女性の悲鳴。千鶴が思わず振り向くと、星霊隊として戦っていた時に幾度となく見てきた悪魔が、若い女性の首筋に歯を突き立てて噛み付いていた。
「!!?」
千鶴が驚きで動けないでいると、その女性が倒れ込み、顔が千鶴にも見えるようになる。千鶴が通っている高校と同じ制服を着ている彼女は、千鶴が一緒に過ごしている親友のひとりだった。
「ゆ、ユウカ!?」
「たす…け…ぎゃああああ!!!」
助けを求める彼女に、悪魔はさらに喰らいつく。千鶴に腕を伸ばしながら力尽きるユウカの体を、悪魔は貪り食い始めた。
千鶴は、目の前で起きている惨劇に、言葉を失う。血の海に倒れているユウカの名前を弱々しく呼ぶが、ユウカは返事をしなかった。
(なに…なんなの…!?)
悪魔がゆっくりと振り向き、千鶴の方を向く。悪魔はゆっくりと千鶴ににじり寄っていき、千鶴を見て舌なめずりをしていた。
「キヘヘヘ…!」
(大丈夫…これは夢だから…!)
後ずさる千鶴は、自分に必死に言い聞かせる。そんな千鶴の背中に、何かがぶつかった。
千鶴は背後に目をやろうとする。しかし、そんな千鶴の腕を、千鶴の背後にいたその何かが掴み上げ、身動きを取れなくする。
「なに!?なんなの!?」
「ヒヒヒ…」
千鶴がもがくのも虚しく、身動きが取れないままの千鶴にユウカを食った悪魔が近づいてきていた。
「やめて、来ないで…!嫌だ…!いやああっ!!」
千鶴の悲痛な叫びが何もない空間にこだまする。次の瞬間には、千鶴の首元に鋭い痛みが走り、彼女の体は生きたまま喰われていくのだった。
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