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しおりを挟む「ねぇノア、ジョエル怒ってない?あの笑顔やばいよ」
「僕もそう思うけど絶対口に出しちゃ駄目だよ」
念話とは大変に便利である。目の前からやってくる夫の一人、ジョエルはなんかもう作り笑顔ですってわかるくらいの笑顔でこちらに来る。後ろに男3人を従えて。
「ミズキ、遅くなりました。待ちました?」
「い、いいえ…そんなに」
「なぜか呼んでもいない方がどうしても、どうしても行きたいと離してくれなかったので」
呼んでもいないというのは王子様だろう。忘れていた。本当に忘れていた。故意に呼ばなかったのではない、忘れていたのだ。ノアはおそらく気付いた。ジョエルもわかっているだろうけど、絶対とんでもないイヤミを言いまくったことがわかる。なんかもう空気が重い。多分王子様の横の2人も犠牲になってる、イヤミの。
「まぁでも連れてくるだけ連れてきましたよ。歓迎はしていませんが」
「はははっ…」
「招待客の方々と乾杯でもしましょうか?殿下もよろしければ御一緒に」
ノアに帰りたいと言ったら無理だと言われた。ジョエルが来てすぐ帰るなんてしたらミズキがお説教されるよと。それは嫌だ。
先生は殿下達が来て大喜びだった。奥さんも公認なのだろうか?奥さんはただ笑ってた。これは奥さんマナー講師してくれないな。今わかった。先生が来られない日にはしてくれそうだけど。でも嫉妬するってことは先生愛されてるじゃん!
何度目かわからない乾杯はミシェルからの差し入れ。今年の新作でまだ世間に出ていないものらしい。あーおいしい。ジョエルはルネさんと話をしている。ドレスの話だろうけど。
「そもそもさー、3人でお天道様の下で昼間っからビール飲んでいちゃつきたかっただけなのー。わかる?」
「うん、わかってる。ごめんね。僕たちパーティーのことかと思っちゃったから」
「結婚式の予行練習とかいらないのー!式場の下見とかはしたかったけど、リアルパーティーで予行練習なんて聞いたこともない!」
先にお酒ばっかり飲んでたからちょっと酔いがまわったのかノアに言いたいことをぶちまけている。ジョエルはシェフとかバーカウンターの人と話をしている。もう、そんなに結婚式の話がしたいなら別のときにすればいいのに。あー、不安になるってこれはこれ絶対生理前。ほんとイヤな女になるから毎月本当にイヤ。そういえばこの国生理あるの?子どもできるからあるか。魔術で楽にできたりしないのかな?
本当はもう帰りたいけど、口に出してしまったらろくなことにならない。とりあえず一人になりたい。これ以上ノアにとんでもない暴言を吐く前に一人になりたい。とりあえずトイレだトイレ。一人になれるところがそれしか思い付かないけどトイレ!
「ノア、」
「ん?」
「トイレ行ってくる!ついてこないで!」
絶対ノア困ってるけど、飛び出してしまったからどうしようもない。庭に出た大きな扉からお城の中に入ったはいいけれど、肝心のトイレの場所がわからない。でも『トイレの場所わかんなかったから戻ってきた』って笑いながら戻れる雰囲気でもないし、部屋への戻り方もわからないから詰んだ。転移は…いまいちまだ使い方がわからないから恐ろしくて使えない。あーどうしよう
「ミズキ」
後ろから声をかけてきたのはノアでもジョエルでもなくロランだった
「なんで?王子様は?いいの?」
「ミシェルがいるから大丈夫だ。そもそも殿下はここには呼ばれていないのに来たからな」
強引だけど痛くないように手を引いてくれる。手を繋ぐんじゃなくて手首を掴むあたりが男らしくていい。なんか小さなときめき。ノアとジョエルは結婚ありきだから超優しいんだけど、このなんか男らしさみたいなのはこっちに来てからあんまり感じなかったからきゅんだわ。
「化粧室は少し行かないとないんだ」
そうか、男ばっかりだからいらないんだ。女子高に男子トイレが先生用しかないのと、男子校に女子トイレが先生用くらいしかないみたいなもんだろうな。
でも着いた化粧室は綺麗だった。掃除的な綺麗もだけど、ライトとか色々。鏡も大きいし三面鏡のドレッサーまである。すげー。百貨店のトイレじゃん。いや、百貨店のトイレって思ったより普通だから、新しい商業施設とかの有料スペースってかんじ。
「おまたせ」
「いや、待ってない」
壁に寄っ掛かって腕組んでた男の言う台詞ではない。絶対待ってた。
「ノアとジョエルに頼まれたの?」
「いや、たしかにあの二人は困っていたが、ミズキを追いかけたのは自分の意思で」
「そっか…」
あの二人は追いかけたくても追いかけなかったんだろう。あたしが嫌がるのをわかっているから。トイレの場所くらいは教えてほしかったけど、頭の中に話しかけられても無視してたと思うからよかったっちゃよかった。
少し歩いてから外に戻ろうと提案されたのも助かった。化粧室で少しは冷静になれたけど、時間が短すぎる。遠回りして酔い醒ましがてら散歩して、夫でない人と話すのは気分転換になる。気分転換?現実逃避なのかな?
「足は?痛くないか?」
「平気。ハイヒール慣れてるもん」
今日もピンヒールだけど、爪先側もある程度高さがあるものだから、見た目ほど大変ではない。指の付け根も痛くならない。
無言でただ歩いてるだけかとおもいきや、なんかよくわかんない部屋?いや、部屋じゃない。路地?路地も違うか、お城の中だろうし。窪み?でもソファがあるとかマジおあつらえむき。
「密会によく使われる」
そうか。たしかに人目にもつかないかも。聞けば使うのはカップルだけではないらしい。口説くためとか、不倫、男性同士でもあるとか。夫が何人もいても不倫するとかヤバイわ。
「あたしも端から見たら不倫も」
結婚式はまだだけれど、夫が2人なのはめっちゃ公らしい。新聞にも載りまくり、盗撮されまくりだから。そもそも盗撮とかやばくない?カメラ持ってる人とか全然会わないのに。魔術で写真?とかスマホよりヤバイじゃんって思ったけど、そもそもその魔術が使える人が限られているらしい。まぁその魔術使えるならゴシップ紙行くと儲けられるんだろうな。パパラッチってめちゃくちゃ嫌われそうだけど。
「不倫、ではなく…俺と、付き合ってくれないか」
「え?どこに?」
「いや、どことかではなく…婚約、結婚を前提に…」
「えーっ!?」
思わず大きな声も出るわこれ。なんか似たようなことミシェルにも言われたけど、まさかロランにも言われるとは。確かにいい男だ。どうせノアにもジョエルにも許可をとってるって絶対言われる。
「いや、か?」
イヤとかではない。ノアとジョエルに言えないこととかこれから出てくるかもしれないし、そんなときに他に相談したり愚痴言える相手がこの世界にはいない。いきなり夫じゃないし、彼氏としてなら正直アリかもしれない。いや、ありよりのありというかナシではない。あれ?夫いるのに彼氏?なんかおかしい気もするけど、なんかもうここに来てからおかしいことしかないから、ちょっとくらいおかしくてもなんかいい気がしてきた
「はいと答えてくれるか首を縦に振ってくれればいい」
いや、どっちもOKってことじゃん。断られるとも思ってないのか?まぁ多少強引な男が彼氏ってのも悪くないのかもしれない。
「公にしないって約束してくれるなら」
それだけは守ってもらいたかった。彼とあたしにとかではなく、夫二人に迷惑がかかる方が耐えられないから。ジョエルも夫増やせって言うくらいだし、まぁ夫じゃないけど彼氏ができるくらいはいいだろう。ミシェルじゃなくてロランってところも重要。ミシェルも悪くはないけれど、構えないで話せる相手がほしかったからロランの申し出をうけた。
「本当か!?ミズキ!愛している」
「いや、まだ彼氏なだけだから」
「それでもいいんだ!」
折れるんじゃないかってくらい強く抱き締められてマジで息止まるかと思って腕を回していた背中を叩いた。軍人なめたらダメだわ。
彼氏できたことノアとジョエルに言わなきゃ。ジョエルはいいとして問題はノアかも。
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