単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

文字の大きさ
2 / 167

第1話 咲子

しおりを挟む
 8月中旬……。世間ではお盆休みの真っ只中。
 俺(父)は駅の改札付近で娘が来るのを待っていた。

(たしか、次に来る電車のはずだが……)

 昼下がりの駅の改札。地方都市の駅だけ有って人の往来は結構多い。ベッドタウンの町だけ有って、その中核都市に向かったり、そこから帰ってくる人が殆どだろう……
 そして、改札付近に1人だけ、“ぽつん”と立って居るのも何だか恥ずかしい///

 最近は電車に乗ること、人との待ち合わせも殆ど無かったため、この待つ時間が何とも言えない気持ちになる。時折、すれ違う人のチラ見目線が非常に気になる。只の自意識過剰だと思うが結構辛い。

 それからしばらく時間が経つと、改札から人がゾロゾロと出て来た。改札の上に表示されている電光表示板を見ると、娘が乗っているはずの電車が到着している。
 降りてくる人がそう多くなかったので、俺は直ぐに娘を見つけ、また娘も気付いたようだ。改札を抜けた娘に声を掛けながら俺は近づく……

「お疲れ、咲子。道中迷わなかったか?」

「お父さん! 向かえに来てくれてありがとう!!」
「平気、全然迷わなかったよ!」

 ツインテールの髪型に少し大きな瞳。童顔さがやや残る娘が明るく返す。今時の女の子のファションは俺には良く判らないが、ロゴTシャツにスカートパンツ。肩には少し大きめなバックを掛けていた。

「……どうしたの? 私の事ジロジロ見て?」
「何か付いている?」

「まあ、可愛いけど……少し幼いかな…」

 すると、咲子は急に顔が真っ赤になる。

「お父さん!! いきなり何言い出すの!?」

「俺は今時のファッションは全くの無知だが、もう少し大人っぽいのを着た方が良いぞ!」

 俺は思わず咲子にそう言ってしまうが、もちろん咲子は反発してくる。

「良いのよ! 私はこの恰好が良いと思っているんだから!!」

 当然、咲子は少しむくれながら言ってくる。

「まあ、ケチを付ける気は無いが、○学生に間違われるぞ!」

 俺は笑いながら言ってしまう。

「すいませんね! 子どもに間違われそうで……私だって後、10cmは欲しかったよ!」

 からかいすぎたか、今度は完全にむくれてしまった。

「まぁ、でも…父さんは咲子位の背丈の方が好きだがな……」

「それ褒め言葉に成ってない! 他の人が聞いていたら、只のロリコンだよ」

「いや~、咲子の口からロリコンの言葉が出てくるとは思わなかったよ」

「だって、今の情報社会。簡単に何でも判るんだよ」
「言葉の意味なんて、goggleで一発だよ!」

『エヘン』と言わんばかりの顔をする咲子。えらいのはgoggleで有って咲子ではない。しかし、咲子の機嫌は少し直ったようだ。

「まぁ、この話はお終いにして。折角だし、家に行く前に観光案内でもしようか?」

「んっ、観光?」
「……今日はちょっと疲れたし、お父さんの家に早速行こうよ!」

「そうか……まあ、そうだよな。長旅で疲れているだろうし。なら帰るか」

「うん!」

 駅近くの駐車場に止めた車に、俺と咲子は乗り込んで、俺は車を走らせる。咲子の着替えとかの荷物は、前日に宅配便で仮住まいの家に届いている。

「家に行く前に、ホームセンターに寄るから」

 助手席に座っている咲子に話し掛ける。

「ホームセンター? 良いけど、どうして?」

「食器とかが足りないから……後、日用品かな?」

「ふ~ん」

 家近くに有るホームセンターに寄る。
 此所のホームセンターは、俺が単身赴任で来る、少し前に出来たらしく、店舗面積も結構大きくて品揃えも豊富で有り、駐車場も広めで有る。その駐車場に車を止めて2人で店内に入る。

「へぇ~、まだ、新しそうなお店だね。お父さん!」

「半年位前に、出来たらしいよ!」

「やっぱり、新しいお店は良いわね!」

 咲子は店内の回りを、きょろきょろ見ながら歩く……物珍しのだろう。

「まずは、食器から買っていくからね!」

 俺は咲子にそう言いながら、食器が置いてある場所に向かう。

「……で、何の食器を買うの?」

 食器コーナーに着いた途端、咲子が不思議そうな顔をしながら俺に話し掛けてくる。

「もちろん、咲子が使う茶碗とかの食器だよ!」

「えっ、えっっ!!」
「私、1週間位しか滞在しないよ!!」

 わざとかどうか判らないが、咲子は素っ頓狂の声を出す。

「知っているよ!」

「じゃあ、わざわざ買わなくても良いよ。勿体ないよ……」

 咲子は少々困った顔をしながら言う。

「と言われても……。誰かが来る予定なんて無かったから、ほぼ自分の食器しか無いんだよ」
「流石に娘を、紙皿と紙コップで持て成すのは……」

 すると咲子はため息を付く。

「はぁ~」
「事前に言ってくれれば持って来たのに……」

 咲子は呆れ声で言う。

「でも、父さんは、咲子が気に入った食器を使って貰いたかったんだ」
「ほら、この丸皿。可愛らしいデザインじゃないか!」

 俺は目に付いた丸皿を棚から持って、咲子にアピールするが……

「うん。可愛らしいけど……だけど、無駄遣いはやっぱり駄目だよ!」

「父さんにとっては、無駄遣いでは無いんだけどな…」

 しかし、咲子はそれを遮る様に言う。

「私から見れば無駄遣いなの!!」
「私が帰ったら、今日買ったお皿達が、全部荷物に成るでしょ!!」

 咲子のはっきりとした声が店内に響く。声帯の調子は絶好調見たいだ。
 しかし、周りにいた人達は何事かと思い、こちらの方を窺っている様子だ。

「さっ、咲子、周りに響いている」

「あっ、ごめん……ちょっと、ムキになっちゃった」

 咲子はその後、無言で食器コーナーを見つめているが……

「でも、流石に食器が足りないのは仕方ないから、最低限のは買うしかないね…」
「今からお母さんに頼んで送って貰っても間に合わないし……」

 咲子はそう言って、食器コーナーの一番安い食器の何個かを買い物カゴに入れていく。
 殆どの食器が、誰でも使える無難の柄ばかりだ。もう少し、好みを主張しても良いのに……。母さんの教育が良いのか咲子は倹約家のようだ。

「お父さん。これだけあれば足りる?」

「丸皿、茶碗、小鉢、お椀、コップに湯飲み。うん、大丈夫」

「じゃあ、食器は良しと! 後は大丈夫?」

「日用品は……まあ、今度にするよ」

「じゃあ、お会計だね!」

 咲子は、レジの方に足を向けて歩いて行く。

(あんなにてきぱきしていたっけ?)
(昔から変な行動力は有るからな……)

 ホームセンターでの買物も済ませ、車で俺の家に向かう。此所から車で、数分で家に着く。車は町中を抜けて家に向かっていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。 でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。 今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。 なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。 今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。 絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。 それが、いまのレナの“最強スタイル”。 誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。 そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。

裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです

ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

処理中です...