21 / 167
第20話 それぞれの平日 その5
しおりを挟む
……
(会社から真っ直ぐ帰ってきたのは良いが、果たして晩ご飯は出来ているのだろうか?)
車を駐車場に止めながら俺は考える。
(まあ、出来て無くても、手伝えば問題は無いが…)
俺は車から降り、集合ポストの郵便物を確認してから玄関に向かう。
(車から降りた時、チラッと居間側の部屋を見たが、部屋の電気は消えていたから恐らく台所だろう…)
(さて……どう入ろうかな?)
普段ならそのまま鍵を開けて入るのだが、今は咲子が居る。そのまま鍵を開けて入っても良いが、インターホーンを鳴らして出迎えて貰う方法も有る。
(でも、料理をしていたら悪いよな……)
玄関前でしばらく考えていると、急に『カチャン』と玄関のドアが開く。
「お父さんどうしたの? 入ってこないの?」
咲子が玄関ドアをゆっくり開きながら言う。
「あっ、入るよ。ただいま……」
「おかえり!」
咲子は笑顔で出迎えてくれる。
玄関から家に入った瞬間、料理の美味しそうな匂いが漂ってくる。
「お父さんの帰ってくる時間判らなかったから、直ぐにご飯は出来ないけど、そんなに掛らないから……」
(あっ……帰って来る時間言って無かったな)
「すまん……。帰って来る時間言って無かったよな…」
「本当だよ……でも、大丈夫! お父さんはお風呂でも入ってきて!」
咲子は少々不満そうな口調で言うが、直ぐに何時もの口調に戻る。
「手伝わなくても大丈夫か?」
「平気、平気! 後はお肉焼く位だから!!」
「ほら、ほら。早くお風呂行った、行った!」
咲子はそう言いながら、俺を浴室の方に押す。
(まあ、ここは任すか)
俺は咲子の言う通り、荷物を置いて着替えを持ってお風呂に入ることにした。
……
お風呂と言っても、今の応援派遣の職場には浴場が備わっている。
今日も仕事が終わってから、一風呂浴びてから帰宅している。
(この時期は、少し歩くだけで直ぐに汗に成るからな)
(シャワーだけでも浴びておくか…)
軽くシャワーを浴びてから部屋着に着替えて、咲子が居る台所に戻る。肉は焼き終わったらしく、咲子はフライパンを洗っていた。そして、俺に気付いた咲子は少しびっくりしたような表情をした。
「あれ!? お父さんもうお風呂出たの!?」
「あぁ。実は、職場でもうお風呂に入ったんだ」
「なんだ~」
「そうなら、そう言ってくれれば良いのに…」
「まぁ、少し汗掻いていたからな」
「後、何か手伝えることは無いか?」
「ん~、なら、お味噌汁注いでくれると嬉しいな!」
「分かった!」
戸棚からお椀の準備をして、味噌汁の入った鍋の蓋を開ける。
鍋の蓋を開けると、味噌汁の良い匂いが台所に広がる。
お玉で軽く味噌汁をかき混ぜお椀に注ぐ。味噌は白味噌だ。冷蔵庫に入っているやつをそのまま使ったんだろう。
「ほぅ。油揚げとわかめの味噌汁か!」
「そう! シンプルだけど美味しいよね!!」
「俺もたまに作るよ」
「良かった。喜んで貰えそうで!」
味噌汁を注いだ椀を居間に持っていくと、座卓の真ん中には、大きなお皿に乗ったお肉がドンと置いて有る。
「匂いで大体気付いていたけど、やはり豚の生姜焼きか!」
「そう! コッテリだけど豚肉は夏バテにも良いし、ショウガの香りと風味で食欲も湧くしね!!」
そう言いながら部屋に来た咲子は、何かの入った小鉢を持っていた。
「んっ、それは?」
「ああ、これ? ナスが旬だしナスの浅漬け作ってみた!」
「浅漬けか……珍しいの作るね?」
「えっ? お父さんは作らないの?」
「この類は殆ど作らないな。特にナスは……」
「ふ~ん、まぁ良いや。折角作ったんだし食べてね!」
笑顔に成りながら咲子は話す。
今日の晩ご飯は、豚肉の生姜焼き、ワカメと油揚げの味噌汁、ナスの浅漬け……。銘々の少し大きめの小皿には千切りキャベツが乗っており、ドレッシングがかかっていた。
(……実は、ナスはあまり好きでは無い)
子どもの頃からナスは好んでは食べなかった。
ナスを煮ると汁は紫色に染まって気持ち悪いし、皮の食感と、中のスポンジみたいな食感がどうも好きに成れない。
(麻婆ナスや天ぷらはまだ良いのだが、浅漬けと来たか……見た感じ、本当の生々しい浅漬けだな…)
小鉢のナスを見ると、一応『シナッ』とした感じでは有るが、皮や光沢も張りも有りそうで『ナス!!』って言う雰囲気を醸し出していた。
「お父さんどうしたの?」
「さっきからナスの小鉢をじっと見つめているけど、もしかしてナス嫌い?」
「いっ、いやそんな事無いぞ。浸かり具合はどうかな~~何て!」
「そう? 私の方は準備出来たしご飯にしよ!」
「あぁ……」
冷蔵庫から缶ビールでは無く、発泡酒を取り出して来て今日の晩ご飯が始まる。
小遣いの節約のため、平日は発泡酒を飲む。ビールは休日用だ!
1人暮らしの気ままな食事から、家庭の食事に戻った気分だった。
(会社から真っ直ぐ帰ってきたのは良いが、果たして晩ご飯は出来ているのだろうか?)
車を駐車場に止めながら俺は考える。
(まあ、出来て無くても、手伝えば問題は無いが…)
俺は車から降り、集合ポストの郵便物を確認してから玄関に向かう。
(車から降りた時、チラッと居間側の部屋を見たが、部屋の電気は消えていたから恐らく台所だろう…)
(さて……どう入ろうかな?)
普段ならそのまま鍵を開けて入るのだが、今は咲子が居る。そのまま鍵を開けて入っても良いが、インターホーンを鳴らして出迎えて貰う方法も有る。
(でも、料理をしていたら悪いよな……)
玄関前でしばらく考えていると、急に『カチャン』と玄関のドアが開く。
「お父さんどうしたの? 入ってこないの?」
咲子が玄関ドアをゆっくり開きながら言う。
「あっ、入るよ。ただいま……」
「おかえり!」
咲子は笑顔で出迎えてくれる。
玄関から家に入った瞬間、料理の美味しそうな匂いが漂ってくる。
「お父さんの帰ってくる時間判らなかったから、直ぐにご飯は出来ないけど、そんなに掛らないから……」
(あっ……帰って来る時間言って無かったな)
「すまん……。帰って来る時間言って無かったよな…」
「本当だよ……でも、大丈夫! お父さんはお風呂でも入ってきて!」
咲子は少々不満そうな口調で言うが、直ぐに何時もの口調に戻る。
「手伝わなくても大丈夫か?」
「平気、平気! 後はお肉焼く位だから!!」
「ほら、ほら。早くお風呂行った、行った!」
咲子はそう言いながら、俺を浴室の方に押す。
(まあ、ここは任すか)
俺は咲子の言う通り、荷物を置いて着替えを持ってお風呂に入ることにした。
……
お風呂と言っても、今の応援派遣の職場には浴場が備わっている。
今日も仕事が終わってから、一風呂浴びてから帰宅している。
(この時期は、少し歩くだけで直ぐに汗に成るからな)
(シャワーだけでも浴びておくか…)
軽くシャワーを浴びてから部屋着に着替えて、咲子が居る台所に戻る。肉は焼き終わったらしく、咲子はフライパンを洗っていた。そして、俺に気付いた咲子は少しびっくりしたような表情をした。
「あれ!? お父さんもうお風呂出たの!?」
「あぁ。実は、職場でもうお風呂に入ったんだ」
「なんだ~」
「そうなら、そう言ってくれれば良いのに…」
「まぁ、少し汗掻いていたからな」
「後、何か手伝えることは無いか?」
「ん~、なら、お味噌汁注いでくれると嬉しいな!」
「分かった!」
戸棚からお椀の準備をして、味噌汁の入った鍋の蓋を開ける。
鍋の蓋を開けると、味噌汁の良い匂いが台所に広がる。
お玉で軽く味噌汁をかき混ぜお椀に注ぐ。味噌は白味噌だ。冷蔵庫に入っているやつをそのまま使ったんだろう。
「ほぅ。油揚げとわかめの味噌汁か!」
「そう! シンプルだけど美味しいよね!!」
「俺もたまに作るよ」
「良かった。喜んで貰えそうで!」
味噌汁を注いだ椀を居間に持っていくと、座卓の真ん中には、大きなお皿に乗ったお肉がドンと置いて有る。
「匂いで大体気付いていたけど、やはり豚の生姜焼きか!」
「そう! コッテリだけど豚肉は夏バテにも良いし、ショウガの香りと風味で食欲も湧くしね!!」
そう言いながら部屋に来た咲子は、何かの入った小鉢を持っていた。
「んっ、それは?」
「ああ、これ? ナスが旬だしナスの浅漬け作ってみた!」
「浅漬けか……珍しいの作るね?」
「えっ? お父さんは作らないの?」
「この類は殆ど作らないな。特にナスは……」
「ふ~ん、まぁ良いや。折角作ったんだし食べてね!」
笑顔に成りながら咲子は話す。
今日の晩ご飯は、豚肉の生姜焼き、ワカメと油揚げの味噌汁、ナスの浅漬け……。銘々の少し大きめの小皿には千切りキャベツが乗っており、ドレッシングがかかっていた。
(……実は、ナスはあまり好きでは無い)
子どもの頃からナスは好んでは食べなかった。
ナスを煮ると汁は紫色に染まって気持ち悪いし、皮の食感と、中のスポンジみたいな食感がどうも好きに成れない。
(麻婆ナスや天ぷらはまだ良いのだが、浅漬けと来たか……見た感じ、本当の生々しい浅漬けだな…)
小鉢のナスを見ると、一応『シナッ』とした感じでは有るが、皮や光沢も張りも有りそうで『ナス!!』って言う雰囲気を醸し出していた。
「お父さんどうしたの?」
「さっきからナスの小鉢をじっと見つめているけど、もしかしてナス嫌い?」
「いっ、いやそんな事無いぞ。浸かり具合はどうかな~~何て!」
「そう? 私の方は準備出来たしご飯にしよ!」
「あぁ……」
冷蔵庫から缶ビールでは無く、発泡酒を取り出して来て今日の晩ご飯が始まる。
小遣いの節約のため、平日は発泡酒を飲む。ビールは休日用だ!
1人暮らしの気ままな食事から、家庭の食事に戻った気分だった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。
でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。
今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。
なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。
今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。
絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。
それが、いまのレナの“最強スタイル”。
誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。
そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。
裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです
ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる