単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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第39話 焼肉屋 その1

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 焼肉屋までは、徒歩で約30分位の距離で有る。
 咲子とは最近、近所のスーパーまで歩く事が多かったが、母さんと真央で歩くのは本当に久しぶりかも知れない……

 俺が里帰りして、家族で焼肉屋に行く時は、宮子が車を運転してくれる。
 宮子はお酒が飲める年齢に成って居るが、あまり好きでは無いみたいだ。よって、運転手に成ってくれる。
 のんびりと雑談をしながら歩いているが、まだ気温が高くて体が汗ばんでくる……

「いや~~、これはお酒が美味しいかもね♪」
「楽しみ、楽しみ♪」

 母さんはそんな事を言いながら歩いている。
 たしかに、30分歩いてから飲む、お酒(ビール)は美味しいに決まっている!

「お母さん。焼肉は何時もの食べ放題?」

 咲子は母さんにそう聞く。

「ええ、そうよ♪」
「何時もの食べ放題よ♪」

 家族で焼肉屋に行く時は、食べ放題が基本だ。
 個別で注文すると、お会計時に高く付いてしまうからだ……。しかし食べ放題は、メニューが限定されるため、特上ロース、国産高級和牛とかは、食べ放題メニューには加わっていない。高いの方の食べ放題メニューには有るらしいが……

 同じ焼肉でも肉の部位に依って、旨さが全然違うから不思議な物だ。
 単身赴任以前は会社の同僚達とたまにだが、少し高めの焼肉屋に行って、美味しい牛肉やホルモンを味わった物だ……。あの頃が懐かしい……

 ……

 夕方の道を車に気を付けながらテクテク歩いて、焼肉屋に到着する。ほぼ、予約時間にぴったりだ!
 店内に入ると、結構な人達が空席待ちをしている。
 俺たちは店内に入り、店内を眺めて居るとスタッフが駆け寄って来て、声を掛けてくる。

「いらっしゃいませ~~」
「ご予約の方ですか?」

「はい♪」
「18時に予約した、真田さなだです」

「真田様ですね…はい! 伺っております!」
「では、お席にご案内します…」

 スタッフに連れられて、俺たちは席に案内される。案内された席は普通のテーブル席で有る。個人的には座敷が良かったが、贅沢は言ってられない。
 週末の更に、お盆の時期にも重なって、この時間帯で席はもう満席だった。

 テーブルにはおしぼり、箸や小皿がすでに準備されて有る。俺たちが席に座ると、予約をした母さんにスタッフが話し掛ける。

「ご予約時のご注文は、食べ放題〇〇コースを大人3名様、子ども1名様」
「飲み放題を2名様、ドリンクバーを2名様と伺っておりますが、以上で宜しいでしょうか?」

「はい! 大丈夫です♪」
「すいません、ライスを…中2つで!」

(咲子と真央用のライスだと思うが、咲子は別にして、真央も中か…)
(まあ、お昼ご飯も何時もより少なかったらしいし……こんなもんかな?)

 咲子と真央のライスの量に少々疑問を感じるが、俺は発言を控えた

「ライス中2つですね」
「かしこまりました!」
「ドリンクバーは、セルフサービスと成っており、フロアの真ん中に御座います」

「大変申し訳ないですが、グラスの回し飲みはご遠慮願います」
「飲み放題は、こちらのメニューからお選び頂けます」

 ラミネートされた、飲み放題プランのメニューをスタッフが手で指し示す。

「お父さん。最初はビールで良い?」

「良いよ」

「では、生ビール2つお願いします♪」

「生ビール2つですね」
「かしこまりました」
「お冷や、追加のおしぼりも、セルフサービスと成っておりますのご了承下さい」

「では、食べ放題〇〇コースの準備をさせて頂きます」
「それでは、火を付けさせて貰います……」

 そう言ってスタッフは、焼肉のグリルに火を付けて、お辞儀をしてから席を離れていく
 咲子と真央はドリンクバーを取りに行き、俺と母さんの2人きりに成る。

「やっぱり、世間はお盆なんだね……」

「何言ってるの、お父さん!!」
「お父さんも、お盆を満喫しているじゃ無い!!」

「まぁ、そうだな!」
「例年そんなの無いからな……。去年は土曜日も仕事だったし…」

 俺が母さんと出会った時から、今の仕事をしている。
 出会った当時の母さんも、世間の休みが関係ない職種に就いており、大型連休には縁が殆ど無かったらしい。

 真央が生まれてからは、母さんはその仕事を辞めて、真央の育児に専念したが、手に余裕が出てきた今は、週に3日ほど近場の職場でパートをしている。

 俺の方は相変わらず、休暇のサイクルは変わらずお盆休みは無いし、大型連休でも交代勤務が有るから、何処か遠くに家族を旅行にも連れては行けない。

「却って、単身赴任した方が良かったね!」
「もし、単身赴任が終わっていたら、こんなにのんびり出来ていないよ♪」

「まあ……あり得るな」

 応援派遣先の事業所も人手不足だが、俺はかなりの我が儘わがままを聴いて貰っている。
 基本的に事業所運営は本社も、もちろん絡んでくるが、大体の部分は事業所長に任されている所も多いだろう。
 応援派遣先の事業所長は、正直言って食えない人だと思っていたが、意外に良い人なのかも知れない……

 咲子と真央がドリンクを持って席に戻って来た時に、タイミング良く生ビールも運ばれて来たので、乾杯の時間だ!
 余計な事は言わずに、俺は素直に『乾杯』と言って、みんなのグラスを『カチン!』と鳴らし合って、俺は生ビールを飲む。

「ふぅ~~~」
「運動の後のビールは本当に最高だね!!」

 俺がそう言うと、咲子は言ってくる。

「あんなの、運動じゃ無いよ……。普通の散歩だよ!」

「俺にとっては運動なの…」

 そう言いながら、生ビールの入ったジョッキを傾ける。
 何かの口コミで聞いたが、居酒屋やレストラン、宿泊施設の生ビールジョッキ(中)と、瓶ビール中瓶と比較すると、同容量は入っていないらしい……。信憑性は無いが、普通の缶ビール1缶分の量と聞いた事も有る。まあ、そんな話どうでも良いか!

 次の生ビールを頼もうとした時に、丁度食べ放題〇〇コースの料理とライス中が2つ運ばれて来る。ライスは咲子と真央の席に置かれる。
 ロースやカルビ、ホルモン、野菜等の基本コースの料理を食べてから、追加オーダーするシステムで有る。
 その時に、生ビールを母さんの分を含めて2つ注文する。

「では、お時間は90分と成ります」
「飲み放題の方も、同じ時間と成ります」
「ごゆっくりどうぞ……」

「さて、焼きますか~~♪」

 母さんは、牛タンから網に乗せて焼き始める。
 カルビから焼きたい衝動に俺はとらわれるが、牛タンは塩味で、レモン果汁を付けて食べるため、カルビから焼いてしまうとタレの味が混じるからだ。
 焼肉、すき焼き、お鍋に関しては、母さんはお奉行様に成る。

 普通、焼き係や鍋奉行に成ると、食べるのがおろそかに成りそうな者だが、母さんは合間、合間を使って本当に上手に食べて飲む!
 倹約と食べ物に関しては、本当に母さんには頭が上がらない……

 追加の生ビールをスタッフが運んでくる。そろそろ焼けるみたいだし、丁度良いタイミングだ!

「はい♪」
「そろそろ、食べ頃だよ♪」
「じゃあ、いただきますだね!」

 みんなで『いただきます』をして、それが終わると、みんなのお箸が焼きあがった牛タンに突撃する。
 枚数は十分に有るし、追加も出来るから、そんなに焦らなくても良いはずだが、何故か俺は急いで牛タンを箸で掴んで、レモン果汁に付けて食べる。

 牛タンのコリコリ感と、さっぱりレモン果汁と香辛料で、焼肉屋に来たことを実感させる。
 そして、序盤だから、あっという間に網から牛タンが無くなってしまう……

 咲子と真央も、牛タンでライスを食べている。牛タンが無くなると、2人ともライスも食べるのを止めて、ソフトドリンクを飲みながら次に備えていた!?

「タンの次は、カルビとハラミを焼くね♪」

 母さんはそう言いながら、次の肉を網に乗せ始める。
 基本コース料理が無く成るまでは、母さんが全面的に指揮を執って、追加オーダーからはソロプレーに成る時が殆どだ。

 同じ家族でも食べ物の好みは変わってくるし、鍋奉行様も本音は『私の肉を育てたい』そうだ。(私好みの焼き加減で食べること)
 1人焼肉も楽しいらしいが、みんなでガヤガヤ食べる焼肉も楽しいと思う。

「はい♪」
「カルビ、ハラミもそろそろだね♪」

 その言葉でまた、肉にめがけて箸が突撃してゆく……
 おしゃべり好きの咲子もこの時は、食べるのに夢中になり、咲子のお腹が満足してくるまでは黙々と食べる。喋る時は追加の注文をする時位だ。

 真央は食事中に喋る子では無いが、食べ物に夢中に成る子だ。
 今日も、何処かのグルメドラマ見たいに、焼肉を楽しみながらご飯を食べている。

 逆言うと、昨日の晩ご飯時の真央が珍しい位なのだ。
 ああ言った主張は、ご飯時には言わない子だからで有る。よっぱど、マンチカンと言う品種のネコが飼いたかったのだろう……
 そして、また直ぐに網から肉が消えてしまう……

「じゃあ、次はホルモン君と野菜を焼こうかな♪」

 俺と母さん達は、焼肉屋での楽しい時間を過ごしている……
 追加オーダーからが本当の焼肉で有る!
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