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番外編

第69話 我が家を離れる直前 その1

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 ……

 昼食も終わり、俺以外は昼食後の後片付けをしている。
 今日は珍しく、宮子も手伝っている。
 宮子のアルバイトは夕方からだと聞いているから、時間はまだ十分に有るのだろう。
 俺はリビングのソファーで昼食後の食休みをしているが、この後は単身赴任先に戻る準備をしなければ成らない。

 今の時刻が13時直前で有り、夕方頃に戻りたいと思ったら、14時にはこの家から出なければ成らない……
 俺がこの家で過ごせる時間も、後約1時間で有った。

(と言っても、特にやる事は無いのだよな)
(新聞も読んだし、テレビも見たいものが無い)

(でも、もう少し、この家での時間を過ごしたい……)

 俺はそんな事を考えながら、再度ソファーで横に成ろうかと思っていると。

「お父さん!」
「缶コーヒー上げる!!」

 真央が缶コーヒーを持って、俺の所にやって来た。
 昼食後の後片付けは終わった様で、宮子と咲子は俺の横を通り過ぎていく。
 普段の咲子なら俺の側に来るのだが、母さんに何か言われたか?

 しかし、お手製のアイスコーヒーとかでは無く、普通の缶コーヒーか。
 これが、出来た妻や娘なら……言わないで置こう。

「あぁ、ありがとう」

 俺は真央から缶コーヒーを受け取る。
 砂糖とミルク入りの標準的な缶コーヒーで有る。
 真央はそのまま、まだ台所に居る母さんの所に戻るかと思ったが、不思議と俺の横に座る?

「真央…。まだ、用事が有るのか?」

「お母さんがね。親子のスキンシップを取りなさいと言ったから、取りに来た!」

(今、この家で一番、俺に懐いて居ないのは真央だからな)
(母さんも気にしているのだろう…)

 咲子は懐き過ぎだし、宮子もこの数日間の間で、俺に完全に心を開いた。
 真央は以前と変わらないが、俺と真央の距離は少し離れている感じはする。
 良い機会だから、真央と親子のスキンシップを始める。

「お父さんは、もうしばらくしたら、お仕事が有るから出掛け無ければ成らないが、真央は寂しくは無いか?」

 俺が真央にそう聞くと……

「全然!」
「お母さんも居るし、宮子お姉ちゃんや咲子お姉ちゃんが居るから!!」

 真央は寂しそうな素振りを見せずに、和やかな表情で言う。
 普通はもっと、寂しがらないか!?

「それより、お父さん!」
「私が持って来た、缶コーヒーを早く飲んでよ!!」
「ぬるくなるよ!」

「あぁ……そうだな」

 俺は缶コーヒーのプルタブを開けて、缶コーヒーを飲む。

「うん! 良く冷えていて、美味しいよ。真央!!」

「そう! 良かったね!!」
「お父さん!!」

「あぁ…」

「……」

 俺が缶コーヒーを飲んでいる間、真央は話し掛けては来ない。
 俺に気を遣っているのか?
 大きいサイズの缶コーヒーでは無いから、直ぐに飲みきってしまう。

「ごちそうさま。 真央!」

 俺はそう言いながら、テーブルに空缶と成ったコーヒー缶を置く。

「お父さんは今度、何時帰ってくるの?」

「今度は……来月の下旬位かな。予定だけど」

「そうなんだ!」
「怪我や病気に気を付けてね!!」

 真央はそう言うと、空き缶を持って、母さんの所に戻ってしまう。
 短い、真央とのスキンシップで有った。缶コーヒーを飲んだばかりだが、ソファーに横に成ろうとすると……

『あれ? 真央。もう戻って来たの??』

『うん。お話は終わったよ!』

『真央……』
『しばらく、お父さんとは会えないのだから、もっとお話しして来なさい!』

『え~~、話す事無いもん!』

 台所で母さんと真央が会話をしているが、お互い声が大きいため筒抜けで有る。

(話す事が無いか…)
(この連休中で一番会話が無かったのは、宮子では無く真央で有った)

(宮子は直ぐに突っかかって来るが、真央はそんな事をしない。するのは咲子だけで有る)
(本当の娘との会話が、一番少ないのも有る意味問題だな……)

 今までは、宮子の事で頭を悩ませていたが、それも無事に解消出来た。
 咲子は俺との距離を縮めさせないようにしつつ、今度は真央との距離を縮めようと思った。

 真央も来年は中学生で有る。
 この状態で反抗期に入ったら、一番ぐれるのは意外にも真央かも知れない!?

『お父さんも……真央には気を掛けずに、宮子や咲子ばかり気に掛けるんだから!』

 台所から、母さんの愚痴が聞こえてくる!

『お母さん。それだけ、お姉ちゃん達が好きなんだよ!』

『2人を気に掛けるのは良い事だけど……』
『なら、真央。後は自由にして良いわ!!』

『は~い』

 母さんとの話が終わった真央は、台所から俺を素通りして自室に戻って行った。
 真央の中ではお父さんより、宮子や咲子に信頼を置いているのだろう。
 宮子の問題は解決できたが、新たな問題にも気付いてしまった!
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