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268話 進展(2)
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「クレハ様、どなたかいらっしゃったみたいですよ」
リズの言葉を受けて部屋の入り口側に注目すると、扉をノックする音が聞こえた。雑談をするのに夢中で全然気づかなかった。
「……大変!! ミシェルさん、対応をお願いできますか?」
「はい、すぐにっ……」
ミシェルさんは急いで扉の方へ向かっていった。ノック音はいつ頃から鳴っていたのだろうか。訪問者を待たせてしまったことに焦りと罪悪感を覚えた。ひと言謝罪をしなければならないと考えていると、今度はミシェルさんの声が部屋中に響いたのだった。
「もうー!! 誰かと思ったら……呼びかけでもしてくれたら良かったのに。慌てちゃったよ」
訪問者は彼女の知り合いのようだ。口調から気安い間柄なのが窺える。私の部屋を訪ねてくるミシェルさんの知り合いというと……おそらく軍の関係者だろう。
「ミシェルさん? えーっと……お客様は?」
「クレハ様、お寛ぎのところ申し訳ありません……」
「ごめんねー、姫さん」
「あっ、レナードさん。それに、ルイスさんも……」
ミシェルさんの後ろから顔を覗かせたのは、レナードさんとルイスさんだ。訪問者の正体が判明した。身構えて固くなっていた体から力が抜けてホッとした。でも、彼らは私の部屋の周辺を警備してくれていたはずなのに。まさかルーイ様たちに何かあったのだろうか。
「ほらっ、会いたいって言ったのアンタだろ。早く挨拶なりなんなりしなよ」
「あっ……待って下さい! まだ心の準備がっ……」
レナードさんとルイスさんの影に隠れて分かりにくかったけど、訪問者がもう1人いる。声の感じからして若い女性のようだけど……
「クレハ様をお待たせしちゃダメだよ」
「あっ!!」
レナードさんにより半ば強引に前方へ引っ張り出されたのは、紺色の軍服に身を包んだ女性だった。紺色ということは王宮警備隊の隊員だ。ここからでは距離があって襟章までは確認できないけど、何番隊の方だろうか。
「え、えと……クレハ様にご挨拶申し上げます。わたくし、王宮警備隊二番隊に所属しておりますシャロン・フェリスといいます」
女性は相当緊張していたようだけど、しっかりとよく通る声で挨拶をしてくれた。名前はシャロン・フェリスさんというらしい。
二番隊といえば女性が隊長を務めている隊である。自分は『とまり木』の隊員以外とはあまり交流がないけど、警備隊の各隊長については以前レオンに紹介して貰ったので覚えていた。
どうして二番隊の隊員さんが私の所にいらっしゃったのだろう。『とまり木』と合同で捜査をしているのは一番隊だ。わざわざ王宮からこちらまで出向いてこられたのかな。
諸々の疑問が湧いてきたけど、せっかく挨拶をして頂いたので、まずはそれにお応えするのが礼儀だろう。
「フェリスさんですね。クレハ・ジェムラートです。どうぞ、よろしく」
「先触れもなく突然押しかけてしまい、申し訳ありません。レオン殿下の婚約者である貴女様に、どうしても一目会ってご挨拶がしたかったのです」
「姫さんの顔が見たかったんだってさ。俺らと違って他の隊の連中って、なかなか姫さんの側に行ける機会がないからね」
「フェリスさんは、ニコラ・イーストン捜索に協力するために公爵邸に来たんですよ。それでせっかくならクレハ様にお目通りしたいと頼まれまして……」
「そうだったんですか……」
ニコラさんの件か……
彼女は私たちが戻ってくる数日前に屋敷から忽然と姿を消してしまい、その後消息不明となっている。失踪する以前から様子がおかしいとは聞いていたけど、それがこんな大事になってしまうなんて思ってもいなかった。
失踪の理由については様々な憶測が飛び交っているらしい。そんな中でレオンたちは、ニコラさんが島の襲撃事件に関わっているのではと疑いの目を向けている。
ニコラさんはフィオナ姉様の侍女……取り分け姉様を敬愛していた人だ。こればかりはレオンたちの予想が外れて欲しいと願ってやまない。身内ともいえる使用人の中から犯罪に手を染める者が出てしまっただなんて信じたくない。
「それで、どうだったの? 念願の姫さんに会えた感想は?」
「話には聞いておりましたが、本当にお綺麗な方で……よもやこれほどとはと驚いています。殿下が一目惚れなさったというのも頷けます」
フェリスさんはキラキラとした瞳で私を見つめている。なんか既視感……ミシェルさんがよくこんな感じで私を見てるんだよね。
そんなミシェルさんは今、フェリスさんの隣に立っている。私への印象を語るフェリスさんを彼女はどこか誇らしげに眺めていた。レナードさんとルイスさんも満足そうに頷いている。警備隊の方たちは基本的に私への評価が大袈裟というか甘すぎる。レオンの影響だろうか。
「……あの、フェリスさん。ニコラさんの捜索は一番隊が担当していると聞いていたのですが、二番隊の方も一緒になったのですか?」
「あっ、いえ。実は……私は失踪前のニコラ・イーストンの姿を何度か目撃しているのです」
「ニコラさんを……本当ですか!? フェリスさん」
「はい。すでに一番隊のバルト隊長には報告していますが、今後もお役に立てることがあるかもしれないので、私は継続してこちらの捜査に加わることになったのです」
ニコラさんと面識が無い人の客観的な証言はとても重要だ。知り合いだとどうしても私情や思い込みが先行してしまうから……
フェリスさんはニコラさんの何を見たのだろうか。凄く気になる。
「フェリスさん。お願いがあるのですけど……」
『お願い』という言葉を聞いて、フェリスさんは目を丸くしている。後に続く内容の予想もついていないみたいだ。そんな彼女とは違って、リズやミシェルさんたちは察しがついているみたい。
「ニコラさんの話……私にも聞かせてもらえませんか?」
リズの言葉を受けて部屋の入り口側に注目すると、扉をノックする音が聞こえた。雑談をするのに夢中で全然気づかなかった。
「……大変!! ミシェルさん、対応をお願いできますか?」
「はい、すぐにっ……」
ミシェルさんは急いで扉の方へ向かっていった。ノック音はいつ頃から鳴っていたのだろうか。訪問者を待たせてしまったことに焦りと罪悪感を覚えた。ひと言謝罪をしなければならないと考えていると、今度はミシェルさんの声が部屋中に響いたのだった。
「もうー!! 誰かと思ったら……呼びかけでもしてくれたら良かったのに。慌てちゃったよ」
訪問者は彼女の知り合いのようだ。口調から気安い間柄なのが窺える。私の部屋を訪ねてくるミシェルさんの知り合いというと……おそらく軍の関係者だろう。
「ミシェルさん? えーっと……お客様は?」
「クレハ様、お寛ぎのところ申し訳ありません……」
「ごめんねー、姫さん」
「あっ、レナードさん。それに、ルイスさんも……」
ミシェルさんの後ろから顔を覗かせたのは、レナードさんとルイスさんだ。訪問者の正体が判明した。身構えて固くなっていた体から力が抜けてホッとした。でも、彼らは私の部屋の周辺を警備してくれていたはずなのに。まさかルーイ様たちに何かあったのだろうか。
「ほらっ、会いたいって言ったのアンタだろ。早く挨拶なりなんなりしなよ」
「あっ……待って下さい! まだ心の準備がっ……」
レナードさんとルイスさんの影に隠れて分かりにくかったけど、訪問者がもう1人いる。声の感じからして若い女性のようだけど……
「クレハ様をお待たせしちゃダメだよ」
「あっ!!」
レナードさんにより半ば強引に前方へ引っ張り出されたのは、紺色の軍服に身を包んだ女性だった。紺色ということは王宮警備隊の隊員だ。ここからでは距離があって襟章までは確認できないけど、何番隊の方だろうか。
「え、えと……クレハ様にご挨拶申し上げます。わたくし、王宮警備隊二番隊に所属しておりますシャロン・フェリスといいます」
女性は相当緊張していたようだけど、しっかりとよく通る声で挨拶をしてくれた。名前はシャロン・フェリスさんというらしい。
二番隊といえば女性が隊長を務めている隊である。自分は『とまり木』の隊員以外とはあまり交流がないけど、警備隊の各隊長については以前レオンに紹介して貰ったので覚えていた。
どうして二番隊の隊員さんが私の所にいらっしゃったのだろう。『とまり木』と合同で捜査をしているのは一番隊だ。わざわざ王宮からこちらまで出向いてこられたのかな。
諸々の疑問が湧いてきたけど、せっかく挨拶をして頂いたので、まずはそれにお応えするのが礼儀だろう。
「フェリスさんですね。クレハ・ジェムラートです。どうぞ、よろしく」
「先触れもなく突然押しかけてしまい、申し訳ありません。レオン殿下の婚約者である貴女様に、どうしても一目会ってご挨拶がしたかったのです」
「姫さんの顔が見たかったんだってさ。俺らと違って他の隊の連中って、なかなか姫さんの側に行ける機会がないからね」
「フェリスさんは、ニコラ・イーストン捜索に協力するために公爵邸に来たんですよ。それでせっかくならクレハ様にお目通りしたいと頼まれまして……」
「そうだったんですか……」
ニコラさんの件か……
彼女は私たちが戻ってくる数日前に屋敷から忽然と姿を消してしまい、その後消息不明となっている。失踪する以前から様子がおかしいとは聞いていたけど、それがこんな大事になってしまうなんて思ってもいなかった。
失踪の理由については様々な憶測が飛び交っているらしい。そんな中でレオンたちは、ニコラさんが島の襲撃事件に関わっているのではと疑いの目を向けている。
ニコラさんはフィオナ姉様の侍女……取り分け姉様を敬愛していた人だ。こればかりはレオンたちの予想が外れて欲しいと願ってやまない。身内ともいえる使用人の中から犯罪に手を染める者が出てしまっただなんて信じたくない。
「それで、どうだったの? 念願の姫さんに会えた感想は?」
「話には聞いておりましたが、本当にお綺麗な方で……よもやこれほどとはと驚いています。殿下が一目惚れなさったというのも頷けます」
フェリスさんはキラキラとした瞳で私を見つめている。なんか既視感……ミシェルさんがよくこんな感じで私を見てるんだよね。
そんなミシェルさんは今、フェリスさんの隣に立っている。私への印象を語るフェリスさんを彼女はどこか誇らしげに眺めていた。レナードさんとルイスさんも満足そうに頷いている。警備隊の方たちは基本的に私への評価が大袈裟というか甘すぎる。レオンの影響だろうか。
「……あの、フェリスさん。ニコラさんの捜索は一番隊が担当していると聞いていたのですが、二番隊の方も一緒になったのですか?」
「あっ、いえ。実は……私は失踪前のニコラ・イーストンの姿を何度か目撃しているのです」
「ニコラさんを……本当ですか!? フェリスさん」
「はい。すでに一番隊のバルト隊長には報告していますが、今後もお役に立てることがあるかもしれないので、私は継続してこちらの捜査に加わることになったのです」
ニコラさんと面識が無い人の客観的な証言はとても重要だ。知り合いだとどうしても私情や思い込みが先行してしまうから……
フェリスさんはニコラさんの何を見たのだろうか。凄く気になる。
「フェリスさん。お願いがあるのですけど……」
『お願い』という言葉を聞いて、フェリスさんは目を丸くしている。後に続く内容の予想もついていないみたいだ。そんな彼女とは違って、リズやミシェルさんたちは察しがついているみたい。
「ニコラさんの話……私にも聞かせてもらえませんか?」
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