歌わぬ鯨

高山奥地

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コホラとラエが初めて関係を持ったのはコホラが十八の時、ラエは十七だった、と、コホラは記憶している。ラエが魔法戦が終わった後、いやに興奮している様子だったので慰めてやった。始めは口でしてやるだけだった。しかし、どこで知ったのか男同士でのやり方をラエが仕入れてきた。なので付き合ってやったのだ。その時にはすでにコホラは後ろの経験があったので特に支障なく出来た覚えがある。間違いなくラエをこの関係に引きずり込んだのはコホラだが、ラエも悪い気はしていないのだとコホラ自身思った。

確か、その年だった。凍土の丘の塔の人間にコホラの存在がバレたのは。

凍土の丘の塔は飛行術をお家芸にしている。実際、凍土の丘の塔の魔法使いは飛行術を活かして配達人になる者が多い。ある凍土の丘の塔出身の配達人が火山のふもとの塔に配達で来ていた。偶然、彼はコホラを見かけたのだ。

「コーリャ?」

コホラの元の名前で男はコホラを呼んだ。親しげに話しかけてきた。

「コーリャ、生きてたのか。よかった」

コホラは人差し指を唇に当てて静かにするよう示した。この男を殺すべきかとも思ったが、下手に動いてはさらに面倒なことになりそうだったのでコホラは男に一言言った。

「誰にもこのことは言うなよ」

「あ、ああ。そうだな」

コホラは自分が火山のふもとの塔にいることが凍土の丘の塔の者達に知られてしまうのも時間の問題であろうと思った。

塔長にそのことを言ったところ、塔長がこう返した。

「もし、凍土の丘の塔の魔法使い達が君を差し出すよう言うならこちらは君を差し出します。ですが、おそらくそれはないでしょうね。凍土の丘の塔の魔法使い達が例えば君を有効に使うとしたら、例えば火山のふもとの塔にいくさを仕掛けてくる時の理由作りとして、君が隠匿されていたことを使う……とか、でしょうから」

「そうですか」

洒落にならないことを言う、コホラはそう思った。




コホラは共通古代語ではザトウクジラという意味だ。ラエからザトウクジラは歌を歌うと聞いたことがある。いつだっただろうか。

「コホラ、魔法戦しよう」

「ん」

コホラはラエに前回の重力を操る魔法への対処魔法陣を書いた紙切れをぺらりと見せた。ラエがそれを見て言う。

「反重力自動処理しかも魔力消費が重力を操った方に向けられるのか。さすがだな」

「もう重力を操る魔法は使えないだろ」

「そうだな」

ラエは何故か少し優しく笑う。嬉しいのかもしれない。コホラはいつも必死でこの男についていこうとする。追いかける。それがラエの救いになっていればいいとは思う。

「君は魔法陣を改良するのが本当に上手だな」

ラエが嬉しそうに言った。

コホラはもう、魔法戦のために頑張っているのか、ラエのために頑張っているのかわからない。

魔法戦は楽しい。もうずっと二人は魔法戦を続けてきた。

魔法戦を何度も何度も何度も何度もやるうちに、魔力の使いすぎを怒られたこともある。成人していない魔法使いは魔力を大人が管理しているため一人が使いすぎるとよく怒られたものだった。

コホラは魔法戦のためによく学んだ。やがて、彼は魔力の節約に手をつけ始めた。それは魔力資源を魔法戦に使うための計画へと変質していった。
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