歌わぬ鯨

高山奥地

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一回戦はコホラの勝ちであった。

しかし、二回戦、三回戦と回数を増す毎にラエの重力操作の魔法の精度が上がっていく。とうとう五回戦でラエはコホラに競り勝った。

「負けた!」

次までにラエの重力操作の魔法に対して対抗策を練っておかねばならない。

コホラがベッドに寝転がる。ラエは側に寄り添ってコホラを見つめる。視線が熱い。

「コホラ」

「あー、わかったわかった。準備してくるから」

コホラはそう言って備え付けの浴室に入った。

コホラには分かる、戦った後ムラムラするのも、手近に発散相手がいるのに発散しない手はないのも。

本当は、ラエが向ける気持ちがそんな薄っぺらいものでないことも分かっている。でも、その気持ちを受け入れる気はない。

準備してから服を着て部屋に戻る。ラエが神妙な面持ちでコホラを見た。

「コホラ、試したいことがあるんだ。その……、縛ってもいいかな?」

「いいけど」

コホラはラエのお願いを断れない。ラエは断られると思っていたのかコホラを見て目を瞬かせる。

「いいのか……?」

「いいから!……どこ縛りたいんだよ」

「手を……」

ラエは多分、マンネリ防止を考えてそういったアブノーマルなプレイの提案をしたのだろう。コホラはラエのやりたいように好きにさせてやる。

二人でベッドの上に座ってコホラの後ろにラエが回る。コホラを裸にするとラエは後ろ手にコホラを縛った。

「きつくないか?」

ラエが不安げに言う。お前が不安でどうする、とコホラは思った。

「別に平気だから」

コホラが言う。ラエはコホラに後ろから抱き付いた。

「痛いことはしないよ」

「してもいいけど」

返したコホラのうなじにやんわり歯を立てられる。コホラは小さく息を吐いた。

「っ……!」

身体が粟立つ。変だ……、とコホラは思う。たかが縛られただけでこんなに、こんなに……!

ラエの手がコホラのお腹をさすっている。それだけでゾクゾクしてしまう。

「……は、ぁ……あ!……ラエ……っ」

「コホラ?」

ラエがコホラの顔を後ろから覗き込む。コホラはとろけた瞳をラエに向けた。

ラエが困惑しながらも愛撫を続けるとコホラは彼の腕の中で身悶える。

「ラエ……っ、ふぁ!……あ!っ……んぅ……!」

「コホラ?……縛られるの好きなのか?」

「わ、からな……んん」

いつもならば触れる肌の感覚だけでこんなになることはない。気持ちいい。ラエの愛撫が躊躇いがちになる。

「ラエ……、もっと触って?」

上気した肌の、潤んだ瞳のコホラがラエに言った。普段ならコホラはこんなことは言わない。

「ね、後ろ、解して?……我慢できない」

ベッドにコホラがうつぶせになる。後ろ手に縛られたまま、顔を背後のラエに向けるために身体をよじる。コホラは膝を立たせた脚を広げて孔を見せつけるようにした。ラエが顔を赤らめる。

ラエは潤滑液を手に取ると、コホラの孔に指を入れた。

「んぅ、……う!うぅ」

コホラがその感覚だけで快感を覚えたらしく背中をしならせて声を上げる。

ラエがコホラの気持ちいいところを優しく触る。その度にコホラは腰を震わせた。

「あ、ラエ……、もっと……んん、ん!きもちい……」

シーツに頬を押し当ててコホラが喘ぐ。ラエが中をやわやわと解していく。

「ラエ……、っ……らえ……」

「どうした……?」

「もっと……」

「うん?」

「もっとひどくして……?」

その言葉にラエが耳まで赤くしてコホラを見つめる。コホラが喘ぐ合間に言葉を紡ぐ。痛くして欲しい、ひどいことして欲しい、もっともっと。

「コホラ……」

「ラエ……も、ちょうだい……ナカ……さみし……っ!」

「しっかり解さないと駄目だよ」

「やだっ……!も、ムリ……おねが……っ」

コホラが濡れた瞳でラエを見る。ラエが困った顔をした。

「そういう顔をされると、悪いことをしている気分になるな」

ラエがコホラの中に入れていた指を抜く。コホラの腰を持ってラエが言う。

「嫌だったら言うんだよ」

そう言ってラエはコホラの中にゆっくり入っていく。コホラは嬌声を上げる。

「あぁ!……あ、ぁああ!」

全部収まって、ラエがコホラを労るようにその腹を後ろから撫でる。コホラが中をヒクつかせながらせがむ。

「あ、ラエ……動いて……」

ラエが一度引き抜いて中に叩きつけるように入れるとコホラはよがって声をあげた。ラエがその動きを繰り返す。

「きもちい……ぅう、う……ん!あぁ」

コホラの前は張りつめて、弾けそうなほどになっている。それを触ってラエがゴクリと喉を鳴らす。

「本当に、気持ちいいんだな……」

コホラは自分がひどく乱されているのを感じた。こんなになってしまうことはそうそうない。自分が乱れていると思うとさらに快感がせりあがってくる。

「んん、ふぁ、あ!あぁああ!」

絶頂が近付いている。気持ちいい。コホラは快楽に溺れて悲鳴のような声をあげた。

「ラエ……あぁ、逝く……!逝っちゃ……ぁああ!」

コホラが精を吐き出す。

ラエがコホラの中から自分のそれを抜くと、コホラが逝った直後の刺激に苦しそうに呻いた。

「うぅ、……」

ラエはまだ達していない。ラエがコホラの手を結んだ縄をほどこうとするとコホラは言う。

「ラエ、まだ逝ってないだろ。俺の中に……ちょうだい」

「え、苦しいんじゃないか?」

コホラは逝った直後だから、辛いことはしたくない、とラエが言う。コホラはシーツに顔を押し付けたまま声を出す。

「欲しい。お前の熱いの、たっぷり注いで?」

「あとでお腹痛くなると可哀想だから生ではしないよ」

「やだ」

「コホラ、わがまま言わない」

ラエが動物の腸管を自分の男の部分に装着して、またコホラの中に入ってくる。コホラの中が吸い付くように迎えた。ラエが言う。

「苦しくないか?」

「もう平気……」

コホラが答えた。ラエがコホラのお腹を後ろから撫でて言う。

「動くよ」

ラエが再び挿送を始めた。コホラはラエの優しい緩やかな動きに焦らされているような気すらする。一度逝って余裕があるはずなのに追い詰められているような気分だ。ラエがわざとコホラの気持ちいいところを避けているのがわかる。気を使っているつもりなのだろう。コホラは腰が自然と動いてしまう。

「ラエ……、もっと強くして……?」

身をよじってラエを見る。ラエは目元を赤く染めてコホラを見た。コホラの快楽に溺れる顔に確かにラエも煽られていると分かる。コホラは縄に戒められたその身を不自由にくねらせて快楽を求めた。

「ラエ……」

ラエの挿送が激しくなる。気持ちいいところを狙って突き立てられてコホラがあえかな悲鳴をあげた。

「ぁあ……っ」

いいところ、全部、犯されている気がする。縄に縛られた体は自由がきかず快楽を逃がすこともできない。それが責められているようでコホラがたまらなくなる。

「ラエ、ラエ、……っ、あ、!ぅああ!ああぁあ!」

コホラが二度目の絶頂を迎える。ラエも精を吐き出したらしい。それを引き抜いてコホラの戒めを解いてやる。

コホラが仰向けに体勢を変えてラエを見る。ラエが布を持ってきてコホラの体を拭く。コホラはぼんやりと微笑んで言う。

「すごくよかった。……また、こういうのやろう?」

体を動かすのもきつそうな様子だが、コホラはたまらないようにラエにすり寄る。ラエは困ったような顔をして

「ああ」

とだけ答えた。
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