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魔法空間に降り立ってコホラはラエを見やる。ラエは言う。
「君のいつもの得意戦法できてくれないか?」
「飛行術使った物理攻撃?いいけど」
なにかしらの策を練ってきているんだろう、とコホラは思った。
コホラの背中に翼が生える。その翼をはためかせてコホラは浮かび上がった。コホラはシールドを前面に展開しながらラエへと一直線に飛びかかる。
いつもなら翼を出した時点でラエの攻撃が来ているはずなのに、今のラエはコホラが向かってくるのを静かに待っているだけのようだ。
しかし、コホラはラエに近づくほど、翼が重くなるのを感じた。コホラの動きが鈍る。ラエが動きの鈍ったコホラの攻撃を紙一重で避けた。
コホラの翼が空を切る。一瞬重くなった体がラエから離れるとまた軽くなった。
これは……。
「重力操作の魔法……?」
魔法での重力操作は一般的に浮遊魔法に使われる。自分に作用する重力を失くすことで浮き上がることが出来るのが浮遊魔法だ。しかし応用すれば、誰かの重力を何倍にも出来るのだ。
とはいえ、魔法は対象物が遠いほど効果が低くなり魔力の消費は大きくなる。
おそらくラエはコホラに対して勝算のある程度しか魔力を消費しないよう重力操作の範囲に気を使っている。
「ならば……」
コホラは重力を利用して真上から攻撃する。慣れない魔法のため重力の大きさの切り替えも遅れるはずと見てのことである。
真上からコホラが翼を畳んで急降下する。目の前のシールドを固く鋭利な形にして、ラエ目掛けて落ちていく。
瞬間、強く右に引く力を感じてコホラは翼を広げ、急上昇した。引く力が薄く遠退く。ラエが左に避ける態勢に入りながらコホラを見上げる。
コホラはラエが右に重力の向きを変えたのが分かった。
おそらく、今の瞬間右にそれて落下していたらラエは左から回り込んでコホラを打つつもりだっただろう。
読まれていた、ラエが魔法で重力を操るとわかったコホラが、当然上から仕掛けてくると。
「ラエ、お前重力操作慣れてる?」
コホラは聞く。無駄なく素早い重力の向きの転換。こんな芸当、相当の熟練でなければ出来ない。
「イメージトレーニングはしていたが、実際使うのは初めてだな」
確かに、イメージトレーニングは大切だ。魔法は想像を形にする能力だからイメージトレーニングは重要である。しかし、熟練度によっても、使う魔法陣の完成度や効率によっても、そして魔力の量によっても、魔法の精度は左右される。だから回数を重ねたり、工夫したりすることが必要になるはずなのに。
ラエの圧倒的な魔法戦のセンスには毎度苦戦する。
「お前の初めて使う魔法にこうも振り回されるの、毎度のことながら癪だ」
コホラは言う。
ラエは自分のとっておきの作戦を惜しみなく使ってくる。ラエはその才能の注ぎ口を常に求めている。コホラはラエに注がれ尽くして何度も割れるような感覚を経験してきた。その度に自分の容器を整え直すのが、コホラは嫌いではない。
さて、
「どうしようか」
コホラは一人言を言う。ラエがコホラに飛行術を使うことを希望している以上、それを使って勝つ方法を探すことになるがあまりにも分が悪すぎる。
とりあえずお互いの魔力の残量確認しておこう。
そう思って確認する。
「ラエ、お前ェ……」
ラエの魔力は残量がほとんどなくなっていた。おそらくあと二秒も重力操作の魔法を使ったら魔力が空になるだろう。コホラが吠える。
「魔力はちゃんと計算して使えよ!」
「君はあまり残量確認しないから、ハッタリも通じるかと思ったんだが」
悪びれる様子もない。というか至極真面目な顔でラエが言う。真面目にハッタリに頼るな!!とコホラは思った。
「君のいつもの得意戦法できてくれないか?」
「飛行術使った物理攻撃?いいけど」
なにかしらの策を練ってきているんだろう、とコホラは思った。
コホラの背中に翼が生える。その翼をはためかせてコホラは浮かび上がった。コホラはシールドを前面に展開しながらラエへと一直線に飛びかかる。
いつもなら翼を出した時点でラエの攻撃が来ているはずなのに、今のラエはコホラが向かってくるのを静かに待っているだけのようだ。
しかし、コホラはラエに近づくほど、翼が重くなるのを感じた。コホラの動きが鈍る。ラエが動きの鈍ったコホラの攻撃を紙一重で避けた。
コホラの翼が空を切る。一瞬重くなった体がラエから離れるとまた軽くなった。
これは……。
「重力操作の魔法……?」
魔法での重力操作は一般的に浮遊魔法に使われる。自分に作用する重力を失くすことで浮き上がることが出来るのが浮遊魔法だ。しかし応用すれば、誰かの重力を何倍にも出来るのだ。
とはいえ、魔法は対象物が遠いほど効果が低くなり魔力の消費は大きくなる。
おそらくラエはコホラに対して勝算のある程度しか魔力を消費しないよう重力操作の範囲に気を使っている。
「ならば……」
コホラは重力を利用して真上から攻撃する。慣れない魔法のため重力の大きさの切り替えも遅れるはずと見てのことである。
真上からコホラが翼を畳んで急降下する。目の前のシールドを固く鋭利な形にして、ラエ目掛けて落ちていく。
瞬間、強く右に引く力を感じてコホラは翼を広げ、急上昇した。引く力が薄く遠退く。ラエが左に避ける態勢に入りながらコホラを見上げる。
コホラはラエが右に重力の向きを変えたのが分かった。
おそらく、今の瞬間右にそれて落下していたらラエは左から回り込んでコホラを打つつもりだっただろう。
読まれていた、ラエが魔法で重力を操るとわかったコホラが、当然上から仕掛けてくると。
「ラエ、お前重力操作慣れてる?」
コホラは聞く。無駄なく素早い重力の向きの転換。こんな芸当、相当の熟練でなければ出来ない。
「イメージトレーニングはしていたが、実際使うのは初めてだな」
確かに、イメージトレーニングは大切だ。魔法は想像を形にする能力だからイメージトレーニングは重要である。しかし、熟練度によっても、使う魔法陣の完成度や効率によっても、そして魔力の量によっても、魔法の精度は左右される。だから回数を重ねたり、工夫したりすることが必要になるはずなのに。
ラエの圧倒的な魔法戦のセンスには毎度苦戦する。
「お前の初めて使う魔法にこうも振り回されるの、毎度のことながら癪だ」
コホラは言う。
ラエは自分のとっておきの作戦を惜しみなく使ってくる。ラエはその才能の注ぎ口を常に求めている。コホラはラエに注がれ尽くして何度も割れるような感覚を経験してきた。その度に自分の容器を整え直すのが、コホラは嫌いではない。
さて、
「どうしようか」
コホラは一人言を言う。ラエがコホラに飛行術を使うことを希望している以上、それを使って勝つ方法を探すことになるがあまりにも分が悪すぎる。
とりあえずお互いの魔力の残量確認しておこう。
そう思って確認する。
「ラエ、お前ェ……」
ラエの魔力は残量がほとんどなくなっていた。おそらくあと二秒も重力操作の魔法を使ったら魔力が空になるだろう。コホラが吠える。
「魔力はちゃんと計算して使えよ!」
「君はあまり残量確認しないから、ハッタリも通じるかと思ったんだが」
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