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宝物庫
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確かに、覚えている限り普通の岩肌だと思っていた場所に、今はポッカリと穴が空いている。
「行ってみましょう」
高揚感を覚えながら、クローディアは歩き出す。
巨大な空間は端から端まで移動するのに少し歩いたが、せいぜい数分程度だ。
「これは……」
隠し扉の中を覗き、ディストが呟く。
岩壁には人為的に灯りを継続的に置くための突起が切り出され、そこにランプが引っかかっていた。
勿論ランプには灯りはついていないが、隠し扉のすぐ内側には、ランプに火を付けるための道具箱などが岩に作られた棚に置かれてあった。
「どうやら、これは鉱山に続く道のようだな」
ランティスが呟き、クローディアは小さく震える。
多くの者がずっと探していた、戦争の元にもなったものを、とうとう探し当てたのだ。
少し肩の荷が下りた気もして、クローディアは溜め息をつく。
――と、ソルが口を開いた。
「話では、地下から宝物庫にも……という噂を聞いていましたが……」
「本当? でも……」
これ以上の手はない気がする。
「もう一度見てみるか」
兄に言われ、クローディアはまたオルガンの前まで戻った。
今度はディストとルシオもオルガンの前に立ち、一緒になってあれこれ調べてくれた。
「……思うんですが、この窪みは?」
ルシオがそう言って鍵盤の上にある、通常なら譜面台のある位置に小さく窪んだ穴を指差した。
「あら、ほんと」
すべて石でできているので、ゴツゴツした岩肌も相まって分かりづらかったが、確かにそこには二つ並んだ窪みがあった。
「ペンダントと同じ大きさだな」
ディストが頷き、まずランティスが右にペンダントを押し込んだ。
「これも左右どちらかという問題があるわね」
呟きながら、クローディアは左側に自分のペンダントを嵌める。
――が、何も起きない。
「んん?」
クローディアが首を捻った時、「あ!」と声を上げたのはディストだ。
「玉座の並びは?」
「あ!」
言われて、クローディアはポンと手を打った。
確かに、謁見の間などで国王は向かって左側だ。となれば、今嵌めた順序は逆になる。
すぐに嵌める順序を逆にすると、今度はどこからかカチリという音が聞こえた。
だが音はしたものの、何も起こらない。
「それで、弾く?」
ランティスに言われ、クローディアは「あっ」と声を出し先ほどと同じメロディーを奏でた。
責任重大で緊張するが、楽器は慣れ親しんだ物なのである程度完璧に弾ける自信はある。
だが今度鍵盤を押すと、ペンダントを穴にはめ込んだ事で何か作用が起こったのか、鍵盤を押しても先ほどのように大きな音は鳴らなかった。
音はするのだが、空いているべき所に穴が空いておらず、くぐもった音になってしまうという感じだ。
弾き終わったあと、またどこかの岩戸がずれる音がした。
「あぁ……」
今度は分かりやすくクローディアたちがいるすぐ左手――地上からの階段を下りてすぐ左の壁面がずれた。
「わぁ……っ」
誰かが声を上げたのは、隠し扉の向こう側に煌めくものが見えたからだ。
騎士たちが思わず進み出ようとするが、ディストがそれを腕で遮る。
「まず中に入って確認するのは、エチルデの王族からだ」
「も、申し訳ございません」
筋を通そうとするディストに、クローディアは「ありがとうございます」と告げ、宝物庫に向けてゆっくり歩き出す。
ランティスもその隣にいて、いつの間にか勇気づけるようにクローディアの手を握ってきた。
「すごい……」
まず目に入ったのは金製品の数々だ。
視界一杯にある金色は、恐らくすべて純金なのだろう。
コインや金塊が床の上にまで無造作に置かれ、それが山になっている。
コインの山の中に純金のチェストなどがあり、その上には見事な細工を施された杯なども置かれてある。
「行ってみましょう」
高揚感を覚えながら、クローディアは歩き出す。
巨大な空間は端から端まで移動するのに少し歩いたが、せいぜい数分程度だ。
「これは……」
隠し扉の中を覗き、ディストが呟く。
岩壁には人為的に灯りを継続的に置くための突起が切り出され、そこにランプが引っかかっていた。
勿論ランプには灯りはついていないが、隠し扉のすぐ内側には、ランプに火を付けるための道具箱などが岩に作られた棚に置かれてあった。
「どうやら、これは鉱山に続く道のようだな」
ランティスが呟き、クローディアは小さく震える。
多くの者がずっと探していた、戦争の元にもなったものを、とうとう探し当てたのだ。
少し肩の荷が下りた気もして、クローディアは溜め息をつく。
――と、ソルが口を開いた。
「話では、地下から宝物庫にも……という噂を聞いていましたが……」
「本当? でも……」
これ以上の手はない気がする。
「もう一度見てみるか」
兄に言われ、クローディアはまたオルガンの前まで戻った。
今度はディストとルシオもオルガンの前に立ち、一緒になってあれこれ調べてくれた。
「……思うんですが、この窪みは?」
ルシオがそう言って鍵盤の上にある、通常なら譜面台のある位置に小さく窪んだ穴を指差した。
「あら、ほんと」
すべて石でできているので、ゴツゴツした岩肌も相まって分かりづらかったが、確かにそこには二つ並んだ窪みがあった。
「ペンダントと同じ大きさだな」
ディストが頷き、まずランティスが右にペンダントを押し込んだ。
「これも左右どちらかという問題があるわね」
呟きながら、クローディアは左側に自分のペンダントを嵌める。
――が、何も起きない。
「んん?」
クローディアが首を捻った時、「あ!」と声を上げたのはディストだ。
「玉座の並びは?」
「あ!」
言われて、クローディアはポンと手を打った。
確かに、謁見の間などで国王は向かって左側だ。となれば、今嵌めた順序は逆になる。
すぐに嵌める順序を逆にすると、今度はどこからかカチリという音が聞こえた。
だが音はしたものの、何も起こらない。
「それで、弾く?」
ランティスに言われ、クローディアは「あっ」と声を出し先ほどと同じメロディーを奏でた。
責任重大で緊張するが、楽器は慣れ親しんだ物なのである程度完璧に弾ける自信はある。
だが今度鍵盤を押すと、ペンダントを穴にはめ込んだ事で何か作用が起こったのか、鍵盤を押しても先ほどのように大きな音は鳴らなかった。
音はするのだが、空いているべき所に穴が空いておらず、くぐもった音になってしまうという感じだ。
弾き終わったあと、またどこかの岩戸がずれる音がした。
「あぁ……」
今度は分かりやすくクローディアたちがいるすぐ左手――地上からの階段を下りてすぐ左の壁面がずれた。
「わぁ……っ」
誰かが声を上げたのは、隠し扉の向こう側に煌めくものが見えたからだ。
騎士たちが思わず進み出ようとするが、ディストがそれを腕で遮る。
「まず中に入って確認するのは、エチルデの王族からだ」
「も、申し訳ございません」
筋を通そうとするディストに、クローディアは「ありがとうございます」と告げ、宝物庫に向けてゆっくり歩き出す。
ランティスもその隣にいて、いつの間にか勇気づけるようにクローディアの手を握ってきた。
「すごい……」
まず目に入ったのは金製品の数々だ。
視界一杯にある金色は、恐らくすべて純金なのだろう。
コインや金塊が床の上にまで無造作に置かれ、それが山になっている。
コインの山の中に純金のチェストなどがあり、その上には見事な細工を施された杯なども置かれてある。
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