6 / 10
まだ分からないの?
しおりを挟む
中には、ネクタイピンが入っている。
悠衣は反対の親指をトントンと打ち、歌う。
「この指はお父さん指。みんなに慕われる心の先生。患者から恨まれて殺されちゃった」
脳裏に、リビングダイニングで見た〝裏ビデオ〟がよぎる。
――そんな。……そんな事はない……。
「はい、次開けて」
もう思考は動いてくれない。
私は悠衣の言いなりになって、〝6〟の引き出しを開けた。
中には、銀色の指輪が入っている。
内側に刻印が刻まれているから、結婚指輪だろう。
「この指はお母さん指。優しくて家庭的な理想のママ。人殺しに襲われて、はらわた出して死んじゃった」
ぐ……っ、と喉の奥から何かがせり上がり、吐きそうになってしまう。
さっき食べたチキンが、精神的なショックを受けて逆流しようとしていた。
「次」
まるで囚人と看守だ。
私は震える指を黒い取っ手に引っかけ、〝7〟の引き出しを引いた。
中には、社会現象にもなったカードゲームアニメの、レアカードが入っていた。
「この指はお兄さん指。明るくてみんなの人気者で、妹たちにも優しい理想のお兄さん。犯罪者にめった刺しにされて目玉がなくなっちゃった」
あと三つ。
私は悠衣に言われる前に〝8〟を開けた。
中には食玩の、キラキラアクセサリーのペンダントが入っている。
「この指はお姉さん指。ピアノが上手で髪の綺麗な可愛い子。お気に入りの白いワンピース、殺人鬼に刺された血で真っ赤になっちゃった」
この場の雰囲気に似つかわしくない、明るいメロディーの歌が終わったあと、私は機械的に〝9〟を開ける。
「う……っ」
中に入っていたのは、歯だ。
戸惑っていると、悠衣が歌い始める。
「この指は子供の私。乳歯が抜けて、『自分の事はどうでもいいから、家族を返してください』とお願いしても、誰も叶えてくれませんでした」
悠衣は、あの殺人事件の生き残りだった?
じゃあ、私は――?
「最後」
短く命じられ、私は覚悟を決めて〝10〟の引き出しを開けた。
細長いそれの中には、手鏡が入っていた。
「自分の顔、見て」
言われて恐る恐る手鏡を覗き込むと、〝私〟が映る。
カチューシャをつけて金髪のウィッグを被った、ロリータ服に身を包んだ私。
スキンケアはきちんとしているし、化粧直しもマメにしているから、夜になった今もメイクはあまり崩れていない。
ウィッグの厚めバングの下からは細めの眉毛が覗き、くっきりとした二重の目に、自然に馴染むダークブルーのカラコン。
サロンに通ってまつエクの施術を受けているので、上睫毛も下睫毛も長く濃い。
唇は少し薄めだけれど、リッププランパーを使ってぷっくり見せている。
悠衣のほうがずっと美人だけれど、私もまぁ悪くはないと思っている。
今は、顔色を悪くしているけれど。
「……まだ気づいてないの?」
彼女は苛立った声で言うと、テーブルの上から下りて私の腕を引いた。
悠衣は私を立たせ、リビングダイニングの隅にあった姿見の前まで私を連れて行くと、鏡に掛かっていた布をとる。
「これを見ても、まだ分からないの?」
鏡に映っているのは、ルームウェア姿の悠衣と、ロリータ服のままの私だ。
身長差はあるけれど、いつもの私たちのはず。
「何が……?」
困惑して尋ねると、悠衣はとうとう怒りを爆発させた。
「〝キョトン〟じゃねぇよ! おっさんがキメェんだよ!」
悠衣は反対の親指をトントンと打ち、歌う。
「この指はお父さん指。みんなに慕われる心の先生。患者から恨まれて殺されちゃった」
脳裏に、リビングダイニングで見た〝裏ビデオ〟がよぎる。
――そんな。……そんな事はない……。
「はい、次開けて」
もう思考は動いてくれない。
私は悠衣の言いなりになって、〝6〟の引き出しを開けた。
中には、銀色の指輪が入っている。
内側に刻印が刻まれているから、結婚指輪だろう。
「この指はお母さん指。優しくて家庭的な理想のママ。人殺しに襲われて、はらわた出して死んじゃった」
ぐ……っ、と喉の奥から何かがせり上がり、吐きそうになってしまう。
さっき食べたチキンが、精神的なショックを受けて逆流しようとしていた。
「次」
まるで囚人と看守だ。
私は震える指を黒い取っ手に引っかけ、〝7〟の引き出しを引いた。
中には、社会現象にもなったカードゲームアニメの、レアカードが入っていた。
「この指はお兄さん指。明るくてみんなの人気者で、妹たちにも優しい理想のお兄さん。犯罪者にめった刺しにされて目玉がなくなっちゃった」
あと三つ。
私は悠衣に言われる前に〝8〟を開けた。
中には食玩の、キラキラアクセサリーのペンダントが入っている。
「この指はお姉さん指。ピアノが上手で髪の綺麗な可愛い子。お気に入りの白いワンピース、殺人鬼に刺された血で真っ赤になっちゃった」
この場の雰囲気に似つかわしくない、明るいメロディーの歌が終わったあと、私は機械的に〝9〟を開ける。
「う……っ」
中に入っていたのは、歯だ。
戸惑っていると、悠衣が歌い始める。
「この指は子供の私。乳歯が抜けて、『自分の事はどうでもいいから、家族を返してください』とお願いしても、誰も叶えてくれませんでした」
悠衣は、あの殺人事件の生き残りだった?
じゃあ、私は――?
「最後」
短く命じられ、私は覚悟を決めて〝10〟の引き出しを開けた。
細長いそれの中には、手鏡が入っていた。
「自分の顔、見て」
言われて恐る恐る手鏡を覗き込むと、〝私〟が映る。
カチューシャをつけて金髪のウィッグを被った、ロリータ服に身を包んだ私。
スキンケアはきちんとしているし、化粧直しもマメにしているから、夜になった今もメイクはあまり崩れていない。
ウィッグの厚めバングの下からは細めの眉毛が覗き、くっきりとした二重の目に、自然に馴染むダークブルーのカラコン。
サロンに通ってまつエクの施術を受けているので、上睫毛も下睫毛も長く濃い。
唇は少し薄めだけれど、リッププランパーを使ってぷっくり見せている。
悠衣のほうがずっと美人だけれど、私もまぁ悪くはないと思っている。
今は、顔色を悪くしているけれど。
「……まだ気づいてないの?」
彼女は苛立った声で言うと、テーブルの上から下りて私の腕を引いた。
悠衣は私を立たせ、リビングダイニングの隅にあった姿見の前まで私を連れて行くと、鏡に掛かっていた布をとる。
「これを見ても、まだ分からないの?」
鏡に映っているのは、ルームウェア姿の悠衣と、ロリータ服のままの私だ。
身長差はあるけれど、いつもの私たちのはず。
「何が……?」
困惑して尋ねると、悠衣はとうとう怒りを爆発させた。
「〝キョトン〟じゃねぇよ! おっさんがキメェんだよ!」
2
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる