【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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食事を終えて、それぞれ 編

会話

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「いま変な顔してるから、こっち見ないで」

「……涼さんの……、変顔?」

 私は「ん?」となって顔を上げる。

「理性と本能の狭間で戦ってる。…………っていうか、恵ちゃん、『壊れちゃう』なんて言ったら駄目でしょ。どこで覚えたの」

「お、覚えるものなんですか?」

 とっさに口から出た言葉であって、どこかで覚えた台詞を使った覚えはない。

 というか、時々入る涼さんの変なスイッチこそ、どこでオンしてるんだろう……。

「恵ちゃんは素でこれだからなぁ……」

 涼さんは溜め息をついたあと、私の腹部に両手を回し、背中に頬を押しつけてきた。

「……恵ちゃんが可愛くて、どうにかなりそうだ。どこかにしまっておけないかな」

「危険思想です」

「そうやって塩対応なのも、ある意味助かるよ。これであざとく甘えてくるタイプだったら、『我慢する』って言ったのに、あっさり約束を破りそうだから」

 彼は私の背中に顔を押しつけて言ったあと、「うん」と気持ちを入れ直して体を起こした。

「ネックレスを外す途中だったね」

「あ、はい」

 当初の目的を思いだした私は、シャキッと背筋を伸ばして両手で髪を押さえる。

 今度はちゃんとネックレスを外してくれた涼さんは、それをボックスに収めた。

「ワンピースのファスナーも下げてあげる」

「え」

 思わず「結構です」と言いかけてグッと口を噤み、私は真っ赤になって目の前の空間を睨みながら、チィ……とファスナーが下ろされる小さな音を聞いた。

 背中が解放され、髪が短い分、背中の中ほどまでを見られていると思うと、急に恥ずかしくなる。

「ここまででいいですよ。涼さんも着替えてきてください」

「じゃあ、恵ちゃんはネクタイを解いて、ボタンを少し外すところまでやって」

「ええ……」

「なんでそんなに嫌そうな声を出すの」

 素で反応すると、涼さんは傷付いたように言って大きな溜め息をつき、ソファの上に仰向けになった。

「もう駄目だ……。恵ちゃんが冷たくて死ぬ……」

「これしきの事で死なないでくださいよ」

 彼の〝甘え〟を悟った私は、小さく笑って涼さんの傍らに座る。

「私、ネクタイ未経験なんですよね。どうなってるのかな、これ」

 仰向けになったままの涼さんの口元に手を回した私は、高級なネクタイを引っ張りすぎないように気をつけながら、なんとか結び目をほどこうとする。

「首絞めちゃったらごめんなさい」

 真顔で冗談を言うと、涼さんは「えー」と笑う。

「……でも、恵ちゃんに跨がられて首絞められたら、ちょっと興奮するかも」

「やっば……」

 ドン引きしつつも、私はネクタイを慎重に解こうとする。

(これを、こうして……)

 真剣に作業に取り組んでいると、涼さんが私の髪をサラサラ弄びながら言った。

「恵ちゃんはまっすぐな眼差しをしてるよね。髪もまっすぐだけど」
「昔から、対象物を凝視する癖があります。……友達には『ちょっと恐い』って言われたかな」


「俺も似たような事を言われたかな」

「……涼さんの場合、顔がいいから、見つめられると困るだけだと思います」

「差別だな~」

「あ、できた」

 やっとネクタイを外すのに成功した私は、涼さんの首に引っ掛かった状態にしておき、次にボタンに指を掛ける。

「脱がせてくれるの?」

 彼は嬉しそうに微笑み、私の頭を撫でる。

「こんなにデカい男が、いじけて駄々をこねてるの、見てらんないだけです」

 私は涼さんのジャケットのボタンを外してから、シャツのボタンを一つずつ外していく。

「……そういえば、男友達が社会人になったあと『スーツのジャケットのボタンは、一番下を留めないって、誰も教えてくれなかった』って言ってましたね。女性のメイク問題もありますけど、男性にも色々面倒な事情がありそう。学生時代までは、スーツなんて無縁ですから」

「ああ、アンボタンマナーとかね」

「アンポンタン?」

 聞き間違えると、涼さんは横を向いて「ぶふっ」と噴き出した。
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