【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
747 / 829
お墓参り 編

甲府から京都へ

 美奈歩は率先してお墓を磨き、長い時間手を合わせていた。

 多分、亡くなったお母さんに言いたい事が沢山あったんだろう。

 木崎家の祖父母は柏市に住んでいて、お邪魔してお仏壇に手を合わせたあと、近くの商業施設のフードコートでご飯を食べた。

 私は長崎ちゃんぽんと言えば……、のお店で皿うどんをメインに、尊さんとシェアしてたこ焼きを食べ、食後にダブルのアイスクリームをペロリと食べる。

「久しぶりに見た……」

 美奈歩が恐ろしいものを見る目を向けてきたけれど、慣れている。無問題。

「篠宮さん、やばくないです? この食欲」

 美奈歩はドン引きした顔で尊さんに言うけれど、彼はすでに私の胃袋で洗脳したあとだ。

「いやぁ、これが朱里の普通と思ってるから」

「普通の女の子はこんなに食べませんからね!」

 そんな美奈歩は、長崎ちゃんぽんのミニサイズと、アイスクリームを一つ食べていた。

「……痩せちゃうよ……?」

 私はフッと微笑み、美奈歩の肩をポンと叩く。

「化け物」

 その切り返しが塩を通り越して岩塩の塊だったので、お姉ちゃんちょっと泣いちゃった。

 恵と言い、どうして私の周りの女の子は塩が多いんだろう。

 まぁ、クネクネとしっかり者もいるけど……。





 そのあと中央自動車道を通って三時間少しで甲府に着いた。

 さらに京都まで行かないとならないので、サッとお墓参りして、父方の祖父母に挨拶する。

「よく来たねぇ」

 元気な祖母の姿が見られ、私はホッとする。

「お義母さん、お元気なようで良かったです」

 母が言い、継父や亮平たちは少し緊張した面持ちで会釈している。

「このあと、京都まで行く予定なので、サッとしかご挨拶できないんですが……」

 母はそう言って、手土産を渡す。

「澄哉のお墓参りをしてくれて、ありがとうね」

 当たり前だけれど、父の位牌は母が管理している。

 上村家の仏壇には、私の父と亮平たちのお母さんの位牌が収められているけれど、そう珍しい事じゃないそうだ。

 当初、美奈歩は代々の上村家の仏壇に、父の位牌が入る事に拒絶感を示していたけれど、今はそれもなくなったと思っている。

 今の父は「家族だから」と強く主張し、毎日父も含めてお仏壇に手を合わせてくれている。

 その様子を見ると、今の父が〝父〟になってくれて良かったなと感じていた。

 祖父母に尊さんを紹介すると、祖母に「いい人を見つけたねぇ」とニヤニヤされてしまった。

 少し話をして結婚式にはぜひ呼んでほしいと言われたあと、私たちは甲府を辞して京都へ向かった。





 甲府から京都までは車で五時間ぐらいで、その頃になると助手席に座ってるだけの私もクタクタになっていた。

 私たちは京都行きに当たって、別途ホテルをとるつもりでいたけれど、祖母に『この時期はホテル代も高騰してるし、もったいないから』と言われて、みんなで祖父母の家に泊まる事となった。

 六人も泊まれるのか? という疑問があるのだけれど、母方の祖父母の家は結構大きかったりする。

 家は左京区の北白川にあり、京都の中でも富裕層が住むエリアなんだそうだ。

 祖父は地主である他にも、代々お漬物の店を営んでいて、私たちはいつも美味しいお漬物を送ってもらっている。

 私の母は言葉だけなら標準語なんだけれど、イントネーションはちょいちょい京都の音になるし、ときどき京言葉が挟まる事もある。

 けれど父の前の奥さんが関東圏の女性だった事もあり、亮平や美奈歩に〝違和感〟を与えないように、極力標準語に近づけて話すようになった。

 それもひとえに、新しい家族に馴染もうとしての努力だったと思っている。

「相変わらずでっか……」

 過去にも隠岐家に来た事がある美奈歩は、お屋敷を前にボソッと呟く。

 この辺りはヴォーリズ建築という名前の洋館が多い地区で、レトロかつハイカラなお宅が多い。

 京都と言えばしっとりとした和風の日本家屋をイメージするけれど、祖父母の家は手入れされた薔薇が自慢の洋館なのだ。

「こんばんは」

 チャイムを押して少しすると中からドアが開き、母が祖母の顔を見て微笑む。
感想 2,711

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

姉の婚約者に愛人になれと言われたので、母に助けてと相談したら衝撃を受ける。

佐藤 美奈
恋愛
男爵令嬢のイリスは貧乏な家庭。学園に通いながら働いて学費を稼ぐ決意をするほど。 そんな時に姉のミシェルと婚約している伯爵令息のキースが来訪する。 キースは母に頼まれて学費の資金を援助すると申し出てくれました。 でもそれには条件があると言いイリスに愛人になれと迫るのです。 最近母の様子もおかしい?父以外の男性の影を匂わせる。何かと理由をつけて出かける母。 誰かと会う約束があったかもしれない……しかし現実は残酷で母がある男性から溺愛されている事実を知る。 「お母様!そんな最低な男に騙されないで!正気に戻ってください!」娘の悲痛な叫びも母の耳に入らない。 男性に恋をして心を奪われ、穏やかでいつも優しい性格の母が変わってしまった。 今まで大切に積み上げてきた家族の絆が崩れる。母は可愛い二人の娘から嫌われてでも父と離婚して彼と結婚すると言う。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

<完結>金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

とある公爵の奥方になって、ざまぁする件

ぴぴみ
恋愛
転生してざまぁする。 後日談もあり。