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ケアンズへ 編
朱里無双
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「好きな女ぐらい満腹にさせられねぇと、将来子供を育てていけねぇよ」
「ぶっちゃけ、朱里の子供って沢山食べるんでしょうか?」
この場の誰もが思う謎を、恵は話題に出してくる。さすがだ。
「……それは生んでみないとねぇ……」
「ちなみにご両親は?」
尊さんに尋ねられ、私は父と母を思い出す。
「父は普通だったと思いますけど……、母……。大食いっていう印象はないんですよね。いつもニコニコして何でも食べてたので、特に気にしなかったかな」
「多分、そっちだなぁ……」
恵は腕組みをし、目を細めて私を見つめる。
「今は慣れたけど、最初私も朱里がこんなに食べると思わなくて、気がついた時にびっくりしたんだよね。朱里って凄く普通に食べるから、量が多いって気づきにくい。……多分、若菜さんだなぁ……」
「若菜か」
私は自分のわんぱくストマックのルーツを知り、深く頷く。
話をしていると、冷や奴など、比較的調理が簡単な物から出てきた。
「お先にいただきます」
私は手をあわせて食べ物様に挨拶をすると、パクパクと食を進めていく。
「早食いじゃないし、食べ方が綺麗だし、そういうところも気づきにくい要因なのかもね」
涼さんが言い、私は褒められているんだか、面白がられているんだか分からず、微妙な顔をする。
「田村は朱里に自分の〝理想〟でいてほしかったんだよ。美人でクールで、面倒臭い事を言わない。かといって他人と違う変わったところもない、普通の人。でも同性から見たら羨ましがられる恋人」
恵は胸糞悪そうに言い、お水を飲む。
「こんなに愉快な女なのにな? 朱里の醍醐味を分かってねぇな」
尊さんが愛しそうな目で私を見て言うと、涼さんがクスッと笑った。
「いい男は、女の子のいい所を存分に引き出すものだと思ってる。恵ちゃんに本気になれる男が現れなかったのも、そうじゃないかな」
「随分、自信満々っすね」
「自信ならあるよ~。凄くいやみな事を言うけど、俺はハイスペックイケメンだもん。そこらの男には負けないよ」
「……真実だから腹が立つ」
「そこは彼女として誇ってよ」
「すっかり二人は、夫婦漫才みたいになりましたね。ポテトどうぞ」
私はあつあつポテトを一本囓り、お皿をズイッと中央に押す。
「朱里たちには叶いませんとも」
恵はポテトを囓り、手首のスナップを利かせて言う。
「ふふーん? 家族公認でキャンプしたのに? あとから吐いてもらうからね~」
私が勝ち誇った顔をしてニヤリと笑うと、恵はビクッとしてチラリと涼さんを窺う。
「孝志さんと恭祐さんとの馴れそめを、ぜひじっくり聞いて」
涼さんからそう聞いた私は、あの面白いお兄さん二人と何があったのか察し、「ぶふっ」と噴き出す。
「もー……」
恵は両手で顔を覆って落ち込んだあと、「知らん」と言ってタブレットでメニューを見始めた。
美味しいご飯を食べ終えたあと、私たちは空港内をブラブラしてから、遅くならないようにビジネスクラスのラウンジへ向かった。
選ばれし者のみが入れるというそこに、私と恵はすっかりテンションを上げ、あちこち冒険に行く。
一般の人が入るには割とお高い料金を払わなくてはならず、レストラン街のように人でひしめき合っているという感じではない。
中にはノートパソコンを開いて仕事をしている人もいて、海外出張なのかな? と思うと「できる男ふっふぅー!」と言いたくなる。
とはいえ、家族連れでビジネスクラスに乗るらしい人たちを見ると、スンッとなって恵と二人で「凄いね……」と言い合ったけれど。
「え~……、美味しそう」
ダイニングに入ると高そうなお酒からソフトドリンクまでズラリと並び、スイーツやパン、サラダのビュッフェもあり、シェフが何か作っている。
「食べるなら同席するだけ付き合うけど。機内食の分は、お腹空けておきなよ?」
「うん」
理解のある親友に感謝し、私はビュッフェの列に並ぶ。
どうやらパンはメゾンカイザーの物らしく、他にも唐揚げや焼売、カレーにステーキをもりもり食べていく。
「いやー、いい食いっぷりだねぇ」
さぞ名のありそうなワインを飲んでいる涼さんが言い、尊さんが「可愛いだろ」とドヤ顔する。
「ぶっちゃけ、朱里の子供って沢山食べるんでしょうか?」
この場の誰もが思う謎を、恵は話題に出してくる。さすがだ。
「……それは生んでみないとねぇ……」
「ちなみにご両親は?」
尊さんに尋ねられ、私は父と母を思い出す。
「父は普通だったと思いますけど……、母……。大食いっていう印象はないんですよね。いつもニコニコして何でも食べてたので、特に気にしなかったかな」
「多分、そっちだなぁ……」
恵は腕組みをし、目を細めて私を見つめる。
「今は慣れたけど、最初私も朱里がこんなに食べると思わなくて、気がついた時にびっくりしたんだよね。朱里って凄く普通に食べるから、量が多いって気づきにくい。……多分、若菜さんだなぁ……」
「若菜か」
私は自分のわんぱくストマックのルーツを知り、深く頷く。
話をしていると、冷や奴など、比較的調理が簡単な物から出てきた。
「お先にいただきます」
私は手をあわせて食べ物様に挨拶をすると、パクパクと食を進めていく。
「早食いじゃないし、食べ方が綺麗だし、そういうところも気づきにくい要因なのかもね」
涼さんが言い、私は褒められているんだか、面白がられているんだか分からず、微妙な顔をする。
「田村は朱里に自分の〝理想〟でいてほしかったんだよ。美人でクールで、面倒臭い事を言わない。かといって他人と違う変わったところもない、普通の人。でも同性から見たら羨ましがられる恋人」
恵は胸糞悪そうに言い、お水を飲む。
「こんなに愉快な女なのにな? 朱里の醍醐味を分かってねぇな」
尊さんが愛しそうな目で私を見て言うと、涼さんがクスッと笑った。
「いい男は、女の子のいい所を存分に引き出すものだと思ってる。恵ちゃんに本気になれる男が現れなかったのも、そうじゃないかな」
「随分、自信満々っすね」
「自信ならあるよ~。凄くいやみな事を言うけど、俺はハイスペックイケメンだもん。そこらの男には負けないよ」
「……真実だから腹が立つ」
「そこは彼女として誇ってよ」
「すっかり二人は、夫婦漫才みたいになりましたね。ポテトどうぞ」
私はあつあつポテトを一本囓り、お皿をズイッと中央に押す。
「朱里たちには叶いませんとも」
恵はポテトを囓り、手首のスナップを利かせて言う。
「ふふーん? 家族公認でキャンプしたのに? あとから吐いてもらうからね~」
私が勝ち誇った顔をしてニヤリと笑うと、恵はビクッとしてチラリと涼さんを窺う。
「孝志さんと恭祐さんとの馴れそめを、ぜひじっくり聞いて」
涼さんからそう聞いた私は、あの面白いお兄さん二人と何があったのか察し、「ぶふっ」と噴き出す。
「もー……」
恵は両手で顔を覆って落ち込んだあと、「知らん」と言ってタブレットでメニューを見始めた。
美味しいご飯を食べ終えたあと、私たちは空港内をブラブラしてから、遅くならないようにビジネスクラスのラウンジへ向かった。
選ばれし者のみが入れるというそこに、私と恵はすっかりテンションを上げ、あちこち冒険に行く。
一般の人が入るには割とお高い料金を払わなくてはならず、レストラン街のように人でひしめき合っているという感じではない。
中にはノートパソコンを開いて仕事をしている人もいて、海外出張なのかな? と思うと「できる男ふっふぅー!」と言いたくなる。
とはいえ、家族連れでビジネスクラスに乗るらしい人たちを見ると、スンッとなって恵と二人で「凄いね……」と言い合ったけれど。
「え~……、美味しそう」
ダイニングに入ると高そうなお酒からソフトドリンクまでズラリと並び、スイーツやパン、サラダのビュッフェもあり、シェフが何か作っている。
「食べるなら同席するだけ付き合うけど。機内食の分は、お腹空けておきなよ?」
「うん」
理解のある親友に感謝し、私はビュッフェの列に並ぶ。
どうやらパンはメゾンカイザーの物らしく、他にも唐揚げや焼売、カレーにステーキをもりもり食べていく。
「いやー、いい食いっぷりだねぇ」
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