【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
799 / 812
ケアンズ観光2日目 編

星空鑑賞

しおりを挟む
「アメノウズメなら許す」

 恵はそう言って、ガバッと私に抱きついてきた。

「任せて! アマテラス恵のために、愉快なダンスを踊ってあげる!」

 私は彼女を抱き留め、ケラケラと笑う。

「……なんかアマテラス恵、アメノウズメ朱里って、リングネームみたいじゃね?」

 恵がボソッと言うと、全員がドッと笑った。

「スサノオノ尊」

「まんまじゃねーか」

 涼さんが言った言葉に、尊さんがげんなりして突っ込む。

「マスラオ涼」

「……なんか嫌ですそれ」

 親指で自分を指して言った涼さんに、恵が冷たい視線を送っている。

「それはともかく、うちの家族に会っていない状態であれこれ悩んでも仕方ないから、夏が落ち着いて秋になった頃にでも、一回食事会セッティングしてみようか」

「……うっす」

「恵、頑張って! 草葉の陰から応援してる!」

「死ぬな」

 そんな会話をして休んだあと、予約の時間が迫ったとの事で、ラグーンの近くにある『スプラッシュ・レストラン』という、シーフードが美味しいお店へ行った。

 基本的にイタリアンらしく、地元の漁師さんが経営している本格的なシーフードレストランだ。

 名物は帆立と海老のリゾットで、レモンの爽やかさと絶妙にとろけたチーズがマッチングして、非常に美味しい。

 殻付きの海老やカニがたっぷり入った、トマトベースのスパゲッティマリナーラ、キッズメニューも充実しているなか、フィッシュ&チップス、またまた牡蠣、ガーリックブレッド、海老春巻きなど、とりあえず何でも注文して、みんなでパクパク食べた。

 帰りは海沿いを歩いて写真撮影し、じんわりと「青春だな~」なんて思ってしまう。

 少し前の私は昭人というちっちゃい男に振り回され、こんな幸せを知らなかった。

 気兼ねなく何でも言い合える男の人が、世の中にはちゃんといると分かっただけで、人生が大きく開けた気がした。

 それに昭人とでも海外旅行に来られただろうけど、こんなに手放しで楽しめなかったと思う。

 何をするにも意見が対立したり、季節が悪かったら「暑い」と言ってホテルから出たがらなかったり、想像できる。

 尊さんも涼さんも、色んな土地に行って楽しむ事を経験した人だから、どんな状況になっても〝いつもの自分〟を保てている。

 言葉も問題ないし、どこへ行っても自分のペースを守って、余裕を持った対応ができるのは凄い事だ。

 お金を持っているからとか、イケメンだからとかじゃなく、尊さんという人を培った経験の多さ、そうならざるを得なかった人生とか、引っくるめて好きなんだなと感じた。

「尊さん」

「ん?」

「あいらぶゆー」

 思いきり日本語発音で言うと、彼はクシャッと笑って私を抱き上げ、高い高いをする。

「俺もあいらぶゆーだよ」

「あははっ」

 恵はそんな私たちを写真に収め、涼さんに「俺たちもリフトやる?」と言われて「貧弱なので涼さんを持ち上げられません」と断っている。

「そうじゃないでしょ、恵ちゃん!」

 涼さんの突っ込みを聞いて、私たちは南半球の空に笑い声を響かせた。

「あ、見て。あそこ、南十字星」

「えっ? マジですか?」

 涼さんに言われ、恵は南の空を見上げる。

「日本にいると地平線の下に隠れちゃってるけど、こっちはかなり高い場所にあるね」

 彼の指さすほうを見ると、確かに星が四つ見える。

 涼さんはスマホのアプリを開き、それと見比べながら教えてくれる。

「南十字星のすぐ隣にあるのが、ケンタウルス座。大きいのが双つ並んでるの見えるでしょ。その上にあるのが蠍座のアンタレス」

 彼はポケットからレーザーポインターを出し、それでガイドしてくれる。

「南東から東に掛けて、天の川が見えるだろ」

 尊さんに言われ、私は星々が密集して白っぽくなっている部分を見てジーンと感動する。

「あっちは北半球でもお馴染み、高い場所にあるのが射手座」

 その続きを涼さんが請け負う。

「はい、真上をご覧ください。蠍座の上にあるのが蛇遣い座」

 イケボの星座ガイドを聞きながら、私と恵は手を繋いでぼんやりと星空を見上げていた。

 潮騒が聞こえるなか、なんとも贅沢な気分に駆られ、胸が一杯になる。

「幸せだなぁ……」

 思わず呟くと、尊さんがポンポンと頭を撫でてくれた。



**
しおりを挟む
感想 2,618

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。 夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。 形のない愛は信じない。 でも、出来立ての肉は信じてしまう。 肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。 これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。

遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」 唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。 四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。 絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。 「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」 明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは? 虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...