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グリーン島 編
空の上のガールズトーク
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「『私のもの』は思いませんけど、……綺麗ですね」
朱里が「大丈夫」と言っていたように、最初は地面から離れて、「落ちたらどうしよう」と思うと恐かった。
でも思いの外パラセーリングは安定していて、変に揺れる事もない。
感覚としては遊園地にある、浮き上がった椅子が、ポールを中心にグルグル回る系のアトラクションに似ている。
けれどあれぐらいのスピード感もないので、実に優雅なものだ。
涼さんは私の手を握り、もう片方の手でGoProを持って撮影しつつ言う。
「恵ちゃんにもっと、色んな景色を見せてあげたいな。この世界は美しいって思ってほしい」
「思ってますよ。そうそう旅行には行けないけど、テレビで見るだけでも、世界中に凄い所は一杯あるし、綺麗だって知ってます」
「実際にこの目で見て、体験しないと。知った気持ちになってるだけじゃ、世界は知れない。俺と一緒に世界を見よう」
彼の言葉を、以前なら〝強者の理論〟と思っていたかもしれない。
でも今は、涼さんが自分にできるすべての力で、私を喜ばせようとしてくれているのが分かる。
一般人の感覚で、彼の愛情を測ったらいけない。
理解しているけれど、決意したはずなのに、その手をとるのを躊躇う自分がいる。
あまりに眩しくて、綺麗すぎて、手の届かない太陽のような人で。
私は彼の整いすぎた顔を見ながら、ボーッとそんな事を考えていた。
「……現実じゃないみたい」
私はグレートバリアリーフを見下ろしながら、ポツンと呟く。
「そりゃあね。俺もこれが日常とは思わないよ。日常は東京での日々。会社に行って家に帰っての繰り返し。扱ってる案件は大きくて、一日でとんでもない額の金が動いていく。……だからこそ、息抜きする時は全力でやるんだ。日常を忘れて夢みたいな世界に浸って、東京にはいない人たちと話し、いつもなら食べられない物を食べる」
「……そうですね。涼さんは凄く軽やかに生きているように思えて、抱えてるストレスは私とは桁違いに思えます。だから、お金をかけて桁違いの息抜きをしてるんでしょうね」
だからゲテモノなのか、と、いま改めて納得してしまった。
「……私、いま多分凄く幸せです」
涼さんに会わなかったら、多分見られなかった絶景を眼下に、私は微笑む。
「そう? それなら良かった。もっともっと幸せにしてあげる」
「……なんか涼さん、テレビに出てた、北海道の回転寿司の『よいしょー』ってイクラをぶっかける人に見えてきました……」
「あはは! 恵ちゃんのためなら、いくらでもイクラあげる! あれっ、狙ってないからね!」
「大丈夫です。面白いと思ってませんから」
「安定の塩!」
いつも通りに過ごしていたら、十分ぐらいの空の旅はあっという間だった。
ワイヤーが引かれて無事にボートに戻り、今度は朱里と乗る事になった。
「ねぇねぇ、さっき涼さんと何話してたの?」
私は尊さんから貸してもらったGoProを手に、ニヤニヤして恵に尋ねる。
「大した話じゃないよ」
「ふりかけの何味が好きとか? いや、それは大した話か」
「そうじゃないけど。……っていうか、涼さんの好きなおにぎりの具って知らないな」
「そもそも、おにぎり食べるんだろうかね? フォアグラにぎりとか食べてたりして」
「あり得る。タラコの代わりにキャビア入ってるやつ」
「パジャマとかもシルクでしょ?」
ノリで言うと、恵が否定した。
「いや、リカバリーウェア」
「あ、そこは結構現実的な……。っていうか、そういう答えがヌルッて出るって、本当に同棲してるんだな~って思うよね」
「ヌルッて言うな。うなぎか」
「狭い所があったら入っちゃう、恵うなぎ」
「うなぎには賛成できないけど、あの広すぎる家にいると、狭い所のほうが落ち着くわ、マジ」
「分かる。尊さんの家もリビングダイニング広くて、運動会開けるよね。個人の部屋も十分広いんだけど、部屋に入ると安心する」
「そう思うと、今まで一人暮らしで住んでた家って、分相応だったよね」
「だね~。当時は『もっと広くてお洒落な家に住みたい』って思ってたけど、叶っちゃうなんて思わないもんね」
私たちは絶景を見下ろしながら、いつも通りのガールズトークを繰り広げる。
朱里が「大丈夫」と言っていたように、最初は地面から離れて、「落ちたらどうしよう」と思うと恐かった。
でも思いの外パラセーリングは安定していて、変に揺れる事もない。
感覚としては遊園地にある、浮き上がった椅子が、ポールを中心にグルグル回る系のアトラクションに似ている。
けれどあれぐらいのスピード感もないので、実に優雅なものだ。
涼さんは私の手を握り、もう片方の手でGoProを持って撮影しつつ言う。
「恵ちゃんにもっと、色んな景色を見せてあげたいな。この世界は美しいって思ってほしい」
「思ってますよ。そうそう旅行には行けないけど、テレビで見るだけでも、世界中に凄い所は一杯あるし、綺麗だって知ってます」
「実際にこの目で見て、体験しないと。知った気持ちになってるだけじゃ、世界は知れない。俺と一緒に世界を見よう」
彼の言葉を、以前なら〝強者の理論〟と思っていたかもしれない。
でも今は、涼さんが自分にできるすべての力で、私を喜ばせようとしてくれているのが分かる。
一般人の感覚で、彼の愛情を測ったらいけない。
理解しているけれど、決意したはずなのに、その手をとるのを躊躇う自分がいる。
あまりに眩しくて、綺麗すぎて、手の届かない太陽のような人で。
私は彼の整いすぎた顔を見ながら、ボーッとそんな事を考えていた。
「……現実じゃないみたい」
私はグレートバリアリーフを見下ろしながら、ポツンと呟く。
「そりゃあね。俺もこれが日常とは思わないよ。日常は東京での日々。会社に行って家に帰っての繰り返し。扱ってる案件は大きくて、一日でとんでもない額の金が動いていく。……だからこそ、息抜きする時は全力でやるんだ。日常を忘れて夢みたいな世界に浸って、東京にはいない人たちと話し、いつもなら食べられない物を食べる」
「……そうですね。涼さんは凄く軽やかに生きているように思えて、抱えてるストレスは私とは桁違いに思えます。だから、お金をかけて桁違いの息抜きをしてるんでしょうね」
だからゲテモノなのか、と、いま改めて納得してしまった。
「……私、いま多分凄く幸せです」
涼さんに会わなかったら、多分見られなかった絶景を眼下に、私は微笑む。
「そう? それなら良かった。もっともっと幸せにしてあげる」
「……なんか涼さん、テレビに出てた、北海道の回転寿司の『よいしょー』ってイクラをぶっかける人に見えてきました……」
「あはは! 恵ちゃんのためなら、いくらでもイクラあげる! あれっ、狙ってないからね!」
「大丈夫です。面白いと思ってませんから」
「安定の塩!」
いつも通りに過ごしていたら、十分ぐらいの空の旅はあっという間だった。
ワイヤーが引かれて無事にボートに戻り、今度は朱里と乗る事になった。
「ねぇねぇ、さっき涼さんと何話してたの?」
私は尊さんから貸してもらったGoProを手に、ニヤニヤして恵に尋ねる。
「大した話じゃないよ」
「ふりかけの何味が好きとか? いや、それは大した話か」
「そうじゃないけど。……っていうか、涼さんの好きなおにぎりの具って知らないな」
「そもそも、おにぎり食べるんだろうかね? フォアグラにぎりとか食べてたりして」
「あり得る。タラコの代わりにキャビア入ってるやつ」
「パジャマとかもシルクでしょ?」
ノリで言うと、恵が否定した。
「いや、リカバリーウェア」
「あ、そこは結構現実的な……。っていうか、そういう答えがヌルッて出るって、本当に同棲してるんだな~って思うよね」
「ヌルッて言うな。うなぎか」
「狭い所があったら入っちゃう、恵うなぎ」
「うなぎには賛成できないけど、あの広すぎる家にいると、狭い所のほうが落ち着くわ、マジ」
「分かる。尊さんの家もリビングダイニング広くて、運動会開けるよね。個人の部屋も十分広いんだけど、部屋に入ると安心する」
「そう思うと、今まで一人暮らしで住んでた家って、分相応だったよね」
「だね~。当時は『もっと広くてお洒落な家に住みたい』って思ってたけど、叶っちゃうなんて思わないもんね」
私たちは絶景を見下ろしながら、いつも通りのガールズトークを繰り広げる。
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