【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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ケアンズ最後の夜 編

ケアンズを食い尽くした

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 魚料理は例のバラマンディのポワレで、皮はカリッと、身はフワッと焼かれていて美味しい。

 そしていよいよ、お肉ちゃんの登場だ。

 恵はそろそろお腹いっぱいになってきたのか、話半分に遠くを見ている。

 それに気づいたのか、涼さんがフォローを入れた。

「恵ちゃん、お腹いっぱいならデザートいく?」

「……あ、せっかくの最後の晩餐なので、お肉食べます」

「頑張る恵ちゃん格好いい!」

 どんどん涼さんは限界オタクみたいになっている。

 通常、このお店ではコース料理と言うと料理二品のコースになるらしい。

 だから私たちが食べているのは単品メニューになる。

 ステーキも色んな種類があり、物凄く分厚いのから、いわゆるTボーンステーキ、それに骨がビヨーンとお皿からはみ出たトマホークステーキ、ローストビーフサラダもあり、恵はそれを食べるみたいだった。

 私は散々迷ったけれど、看板メニューらしいトマホークステーキに決めた。

 尊さんはじっくり煮込んで柔らかくした、分厚いビーフブリスケットを頼んでいた。

 ブリスケットとは部位の名前で、前脚の内側の肩バラ肉らしい。

 涼さんはTボーンステーキだ。みんな違ってみんないい。

 このレストランはシーフードも絶品だけれど、熟成肉を売りにしていて、自社で抱えている牧場のお肉を使っているそうだ。

「んん~! おいふぃ!」

 私は運ばれてきたトマホークステーキの記念撮影をし、いざナイフを入れて一口食べ、歓喜の声を上げる。

 正直、「奥さん、そんな事言っても牛肉は日本が一番でしょう?」なんて侮っていた。

 けれどオージービーフを侮るなかれ。

 ジューシーでお肉の味わいがしっかりあり、焼き加減も抜群で、しつこくないのでスイスイいけてしまう。

 お腹いっぱいになってる恵は、引いた目で私を見ていたけれど……。

 デザートは、恵は「さっぱりした物がいいです」と言ってアイスクリームを頼み、私は大好物のレモンタルトがあったのでそちらにした。

 丸いタルト生地の上に絞り出されたレモンクリームが山のように積み重なり、てっぺんにはピンクの綿飴がフワッとかかっている。

 その周囲にはラズベリーや紫、黄色のエディブルフラワーがあり、見た目も抜群に可愛い。

 料理を食べながらシャンパン、白ワイン、赤ワイン、ついでに美味しそうなカクテルも二杯飲んでしまい、私はご機嫌になってニヤニヤ笑っている。

 メンズ二人もアイスクリームで口をサッパリさせ、少し話してから四人でレストランを出た。

「あーあ、お腹いっぱい! ケアンズを食い尽くした感じがする!」

 私はプラプラとゆっくり歩き、ポンポンになったお腹をさする。

「満足か?」

「はい、満足です!」

 酔っぱらったにやけ顔で答えると、尊さんは頭を撫でてくれた。

 いっぽうで恵は無言だ。

 彼女はお腹いっぱいになると、何も話さなくなる。

「恵ちゃん、やり残した事はない?」

「……………………っす」

 もう限界を通り越して、ランニングあとの野球部みたいになってる。

 よく二人でお泊まり女子会をしていた時も、私のメガシリーズの洗礼を受けて無言になり、大丈夫になってから急に電池が入ったように話し始める。

 ……という事を、まだ涼さんは知らないだろうけど、これから知っていくんだろうなぁ。

 と思うと、少しだけ〝私の恵〟が減ってしまう気がするけれど、そんなみみっちい事を言っていたら駄目だ。

 だから涼さんが心配そうに恵を見ているのを目にしても、アドバイスしないでおこうと思った。

 これから少しずつお互いの事を、実体験を重ねながら知っていくべきで、一から十まで人からトリセツを教えてもらうもんじゃない。

(頑張ってね、涼さん)

 私は心の中で彼にエールを送り、胃の中のものを落とすために、トントンとジャンプした。

 それを見て尊さんは、「やっぱりフードファイターじゃねぇか」と言っていた。





 ホテルに戻ったあと、いつものように片方の部屋で少しお喋りを楽しんだあと、お別れして部屋でまったりモードになる。

「荷物、纏めないと駄目ですね」

「だな。明日になってバタバタしないように」

「尊さん、連れてきてくれてありがとうございました。めっちゃ楽しかったです。ビッグラブ……」

 私はそう言って、両手でハートを作る。
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