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帰国して 編
順番にやっていきましょう?
「いただきます」
「いただきます」
胸の前で手を合わせて言ったあと、私はお気に入りの赤いお箸を手にして、豆腐とワカメのお味噌汁を飲んだ。
「っく~! これこれ! この一口のために生きてた!」
「……まるで味噌汁が酒じゃねぇか」
尊さんは横を向いて、クックック……と笑う。
そのあと私たちは適度に会話をしつつ、パクパクと美味しいご飯を食べ進めていく。
食後には町田さん特製の固めプリンをいただき、ご機嫌だ。
「あー! 幸せ~!」
二人で協力し合って食器を食洗機に入れたあと、ソファに座った私は尊さんの腕を組み、ゴロゴロと彼に頬ずりする。
「やっぱ家は落ち着くな」
「ミコキャッスル最高」
「お、城に昇格したな」
尊さんは私の肩を組んで頭をつけ、しばし黙る。
家に帰って安心し、満腹になった私は彼の肩を借りてウトウトし始める。
と、尊さんが尋ねてきた。
「……なぁ、キャットハウスはもう少し大きいほうがいいか?」
「ん?」
目をしぱしぱさせて聞き返すと、尊さんは肩に回した手で私の髪を弄りつつ言う。
「マンションも戸建ても、それぞれメリットデメリットあるが、いつか子供ができる事を思うと、どっちがいいか決めたほうがいいと思って」
「でも……、このマンションもまだローン払い終わっていないんでしょう?」
「どうとでもなる。売却するなら一括返済して抵当権を外せばいい」
「はぁ……」
不動産についてよく分からない私は、生返事をする。
「まぁ、別にこのマンションをキープしたまま、戸建てを買ってもいいけどな」
「勿体ないですよう」
「俺を誰だと思ってるんだ」
尊さんが頬をムニュウ……と潰してくるので、思わず「にゅう」と声を出す。
「随分と強気のミコ様じゃないですか」
「確かに家はでかい買い物だけど、家やら別荘やら買った程度で金に困りはしないんだよ。俺は一番いい環境で家族と暮らしたい。そのために今から色々考えてもいいんじゃないか?」
「……そうですね……」
改めて彼の口から〝家族〟という言葉を聞き、私はもう少し真剣に考える事にした。
私はこのマンションでも十分に豪邸だし、子供ができても全然OKだと思っている。
でも尊さんはこれから増える自分の〝家族〟を神経質なまでに守ろうとし、特に子供に対しては最上の環境を用意しようとしている。
今はその真剣さの差が出ていた。
「……私はこのマンションでも十分とは思うんですよね。一応、洋室はピアノの部屋、書斎、私の部屋で埋まってますが、別に私は自分の部屋がなくてもいいし、なんならシューズクローゼットに住んでもいいし」
「アホか」
半分冗談を言ったつもりだけど、尊さんに鼻を摘ままれてしまった。
「そうやって現状から何かをマイナスしてでないと、未来を描けないのは駄目だ。子供がある程度大きくなったらプライバシーは必要だし、そうなれば子供の人数分の部屋は確保しなければならない。朱里の部屋だって必要だし、俺も一人になれる場所が必要だ」
「……ちゃんと考えてくれてるんですね」
「当たり前だ。……一人でフラフラしてる時間は終わって、これからは俺が家長、父親になって家族を守らないといけないんだから。まず必要なのは、家族全員が安らげる家。それもセキュリティが効いてて、基本は車移動としても、いざという時交通の便のいい所が好ましい。理想の家を得られるなら、金はどれだけでも出す」
顔を上げた私は思い詰めた尊さんの横顔を見て、ムクリと起き上がる。
そして彼の腰を跨ぐと、両手で頬を包んだ。
「尊さん、ゆっくり息を吸って、…………吐いて」
彼は私に言われた通り、深呼吸をする。
「今すぐ話さないといけない事じゃないですよね? 今日は旅行から帰ったばかりだし、まずゆっくり眠るべきです。焦ってもいい家は見つからないし、今後の方針だって慌てて話し合ってもいい結果にはなりません」
尊さんの表情から、少しずつ力が抜けていく。
「『いいお父さんにならないと』って考えてくれているの、凄くありがたいです。結婚も迫っていますし、焦っちゃいますよね。でもその前に結婚式の事を考えないとならないし、子供ができるまで時間があります。……順番にやっていきましょう? 『手離れのいいものから』」
〝速水部長〟がよく言っていた言葉を口にすると、彼は気が抜けたように溜め息をついてから笑った。
「いただきます」
胸の前で手を合わせて言ったあと、私はお気に入りの赤いお箸を手にして、豆腐とワカメのお味噌汁を飲んだ。
「っく~! これこれ! この一口のために生きてた!」
「……まるで味噌汁が酒じゃねぇか」
尊さんは横を向いて、クックック……と笑う。
そのあと私たちは適度に会話をしつつ、パクパクと美味しいご飯を食べ進めていく。
食後には町田さん特製の固めプリンをいただき、ご機嫌だ。
「あー! 幸せ~!」
二人で協力し合って食器を食洗機に入れたあと、ソファに座った私は尊さんの腕を組み、ゴロゴロと彼に頬ずりする。
「やっぱ家は落ち着くな」
「ミコキャッスル最高」
「お、城に昇格したな」
尊さんは私の肩を組んで頭をつけ、しばし黙る。
家に帰って安心し、満腹になった私は彼の肩を借りてウトウトし始める。
と、尊さんが尋ねてきた。
「……なぁ、キャットハウスはもう少し大きいほうがいいか?」
「ん?」
目をしぱしぱさせて聞き返すと、尊さんは肩に回した手で私の髪を弄りつつ言う。
「マンションも戸建ても、それぞれメリットデメリットあるが、いつか子供ができる事を思うと、どっちがいいか決めたほうがいいと思って」
「でも……、このマンションもまだローン払い終わっていないんでしょう?」
「どうとでもなる。売却するなら一括返済して抵当権を外せばいい」
「はぁ……」
不動産についてよく分からない私は、生返事をする。
「まぁ、別にこのマンションをキープしたまま、戸建てを買ってもいいけどな」
「勿体ないですよう」
「俺を誰だと思ってるんだ」
尊さんが頬をムニュウ……と潰してくるので、思わず「にゅう」と声を出す。
「随分と強気のミコ様じゃないですか」
「確かに家はでかい買い物だけど、家やら別荘やら買った程度で金に困りはしないんだよ。俺は一番いい環境で家族と暮らしたい。そのために今から色々考えてもいいんじゃないか?」
「……そうですね……」
改めて彼の口から〝家族〟という言葉を聞き、私はもう少し真剣に考える事にした。
私はこのマンションでも十分に豪邸だし、子供ができても全然OKだと思っている。
でも尊さんはこれから増える自分の〝家族〟を神経質なまでに守ろうとし、特に子供に対しては最上の環境を用意しようとしている。
今はその真剣さの差が出ていた。
「……私はこのマンションでも十分とは思うんですよね。一応、洋室はピアノの部屋、書斎、私の部屋で埋まってますが、別に私は自分の部屋がなくてもいいし、なんならシューズクローゼットに住んでもいいし」
「アホか」
半分冗談を言ったつもりだけど、尊さんに鼻を摘ままれてしまった。
「そうやって現状から何かをマイナスしてでないと、未来を描けないのは駄目だ。子供がある程度大きくなったらプライバシーは必要だし、そうなれば子供の人数分の部屋は確保しなければならない。朱里の部屋だって必要だし、俺も一人になれる場所が必要だ」
「……ちゃんと考えてくれてるんですね」
「当たり前だ。……一人でフラフラしてる時間は終わって、これからは俺が家長、父親になって家族を守らないといけないんだから。まず必要なのは、家族全員が安らげる家。それもセキュリティが効いてて、基本は車移動としても、いざという時交通の便のいい所が好ましい。理想の家を得られるなら、金はどれだけでも出す」
顔を上げた私は思い詰めた尊さんの横顔を見て、ムクリと起き上がる。
そして彼の腰を跨ぐと、両手で頬を包んだ。
「尊さん、ゆっくり息を吸って、…………吐いて」
彼は私に言われた通り、深呼吸をする。
「今すぐ話さないといけない事じゃないですよね? 今日は旅行から帰ったばかりだし、まずゆっくり眠るべきです。焦ってもいい家は見つからないし、今後の方針だって慌てて話し合ってもいい結果にはなりません」
尊さんの表情から、少しずつ力が抜けていく。
「『いいお父さんにならないと』って考えてくれているの、凄くありがたいです。結婚も迫っていますし、焦っちゃいますよね。でもその前に結婚式の事を考えないとならないし、子供ができるまで時間があります。……順番にやっていきましょう? 『手離れのいいものから』」
〝速水部長〟がよく言っていた言葉を口にすると、彼は気が抜けたように溜め息をついてから笑った。
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帰国後のワカメと豆腐のお味噌汁は染みるよねぇ~🤤仕事後の麦酒に匹敵しちゃいますね😁🍺朱里ちゃんが大好きな固めのプリンを作っておいてくれるなんて、さすがスーパー家政婦町田さんですね🤩
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全てにおいて完璧なミコティだけど、完璧じゃないんだよね。
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アカリンもそう。
2人合わせて史上最強のカップルなんだよね꒰ఎ꒰ ღ˘͈ ᵕ ˘͈ *꒱໒꒱𓈒𓏸*゜
だから…しゅきⳣ₹ⳣ₹❤︎❤︎"