3 / 778
送り狼 編
……試してみるか? ☆
しおりを挟む
私は溜め息混じりに言う。
「……公私混同って言いたいんですよね。……分かってますよ。来週からちゃんと働きます」
私はブスッと頬を膨らませ、冷たい窓に額を押しつける。
窓の外を見ていると、イルミネーションやらクリスマスカラーの飾りが胸に痛い。
まだ昭人と付き合っていたなら、今年のクリスマスも一緒に過ごしていたのに。
プレゼント交換をして食事をして、可愛い下着をつけて、スペシャルな日だからその日はエッチを求められたら応えようと思ってた。
――でも。
「今年はあいつ、私じゃない女とクリスマスを過ごすんですよ。九年も私と過ごしていたのに。誕生日も祝ってくれて、そのあとはすぐクリスマスで、思い出が一杯なのに……っ」
思いだしてまた泣き始めると、部長が冷めた口調で言った。
「セックスするの断ってフラれたのに、元彼が今の女とセックスするのが気にくわないのか。自分勝手すぎやしないか?」
(そんなにセックスセックス言わないでよ!)
私はチラッとバックミラーを見る。
けれど運転手さんはこういう会話を聞くのは慣れっこなのか、まっすぐ前を見ていた。
私は半分安堵し、半分「やっぱり聞かれてるよな」と思いながら、ブスッとして返事をする。
「……だって、一応私の彼氏でしたし」
言い訳するように応えながら、自分が彼に不満を抱かせてしまった事を自覚する。
私は大した事じゃないと思っていた。
昭人とは一緒にいるだけで楽しかったし、エッチしなくても十分だと思ってた。
だって痛かったし、そんなにいいものだって思えなかった。
『ムラムラするなら手とかでするよ』って言ったけど、昭人は『いいよ』と辞退して一人で処理していたようだった。
問題ないと思っていたけど……、……フラれたっていう事はやっぱり問題あったんだろうな。
車内に沈黙が落ちたあと、私は部長に尋ねる。
「男性ってやっぱり……シたいんですか?」
「男の性欲のピークは二十歳前後。女の性欲のピークは三十代から四十代。それが噛み合う、噛み合わない恋人がいたって不思議はないだろう」
「…………うう……」
私は頭を抱える。
(あいつが一番したくて堪らない時に、おあずけしまくってた?)
だったら……、させてくれる彼女としたいって思っても仕方がないけど……。
でもエッチってそんなに大事?
あんなもの、気持ちいいなんて思えない。
だから私は、また言い訳混じりに言った。
「……だって、気持ちいいって思えなかったんです。痛かったんです。何回か我慢して付き合ったけど、『もう一回したい』と思えませんでした。くっついているのは気持ちいいけど、デリケートな所を触られると痛くて……」
部長相手に何言ってるんだろ。
きっとまだ酔ってるせいだ。
心の中で自分に言い訳をした時、部長がボソッと言った。
「……下手くそだったんだろうな」
下手?
私は思わず部長のほうを見る。
「……ど、どうして元彼が下手だって言えるんです?」
「女に『痛い』なんて言わせる奴は、下手以外の何者でもないだろう。俺だったら痛がらせず、ちゃんと濡らして気持ちよくさせてから抱く」
その時、ずっと窓の外を見ていた部長がスッと私を見た。
流し目を受け、私は思わずドキッと胸を高鳴らせる。
ゲイかもとすら言われていた、女っ気のない部長が「濡らす」とか「抱く」とか言ったからか、普通の男性が口にするよりずっと卑猥に思えた。
私が真っ赤になって固まり、部長を見つめていたからだろうか――。
「……試してみるか?」
部長は普段は見せない妖艶な笑みを浮かべ、私の手を握ってきた。
アホな事に、私は無言で頷き、彼の誘いを受けてしまった。
**
自宅の賃貸マンションに帰り、シャワーを浴びていると、いきなり全裸の部長がバスルームに入ってきた。
悲鳴を上げる間もなく、引き締まった体が目前に迫り、私をがっしりと抱き締めてくる。
濡れた髪の毛を撫でられ――、唇を奪われた。
「ん……っ、む――――ふ、ぁ……っ、あ」
――とろけるような感覚って、こういう事を言うのかもしれない。
「……公私混同って言いたいんですよね。……分かってますよ。来週からちゃんと働きます」
私はブスッと頬を膨らませ、冷たい窓に額を押しつける。
窓の外を見ていると、イルミネーションやらクリスマスカラーの飾りが胸に痛い。
まだ昭人と付き合っていたなら、今年のクリスマスも一緒に過ごしていたのに。
プレゼント交換をして食事をして、可愛い下着をつけて、スペシャルな日だからその日はエッチを求められたら応えようと思ってた。
――でも。
「今年はあいつ、私じゃない女とクリスマスを過ごすんですよ。九年も私と過ごしていたのに。誕生日も祝ってくれて、そのあとはすぐクリスマスで、思い出が一杯なのに……っ」
思いだしてまた泣き始めると、部長が冷めた口調で言った。
「セックスするの断ってフラれたのに、元彼が今の女とセックスするのが気にくわないのか。自分勝手すぎやしないか?」
(そんなにセックスセックス言わないでよ!)
私はチラッとバックミラーを見る。
けれど運転手さんはこういう会話を聞くのは慣れっこなのか、まっすぐ前を見ていた。
私は半分安堵し、半分「やっぱり聞かれてるよな」と思いながら、ブスッとして返事をする。
「……だって、一応私の彼氏でしたし」
言い訳するように応えながら、自分が彼に不満を抱かせてしまった事を自覚する。
私は大した事じゃないと思っていた。
昭人とは一緒にいるだけで楽しかったし、エッチしなくても十分だと思ってた。
だって痛かったし、そんなにいいものだって思えなかった。
『ムラムラするなら手とかでするよ』って言ったけど、昭人は『いいよ』と辞退して一人で処理していたようだった。
問題ないと思っていたけど……、……フラれたっていう事はやっぱり問題あったんだろうな。
車内に沈黙が落ちたあと、私は部長に尋ねる。
「男性ってやっぱり……シたいんですか?」
「男の性欲のピークは二十歳前後。女の性欲のピークは三十代から四十代。それが噛み合う、噛み合わない恋人がいたって不思議はないだろう」
「…………うう……」
私は頭を抱える。
(あいつが一番したくて堪らない時に、おあずけしまくってた?)
だったら……、させてくれる彼女としたいって思っても仕方がないけど……。
でもエッチってそんなに大事?
あんなもの、気持ちいいなんて思えない。
だから私は、また言い訳混じりに言った。
「……だって、気持ちいいって思えなかったんです。痛かったんです。何回か我慢して付き合ったけど、『もう一回したい』と思えませんでした。くっついているのは気持ちいいけど、デリケートな所を触られると痛くて……」
部長相手に何言ってるんだろ。
きっとまだ酔ってるせいだ。
心の中で自分に言い訳をした時、部長がボソッと言った。
「……下手くそだったんだろうな」
下手?
私は思わず部長のほうを見る。
「……ど、どうして元彼が下手だって言えるんです?」
「女に『痛い』なんて言わせる奴は、下手以外の何者でもないだろう。俺だったら痛がらせず、ちゃんと濡らして気持ちよくさせてから抱く」
その時、ずっと窓の外を見ていた部長がスッと私を見た。
流し目を受け、私は思わずドキッと胸を高鳴らせる。
ゲイかもとすら言われていた、女っ気のない部長が「濡らす」とか「抱く」とか言ったからか、普通の男性が口にするよりずっと卑猥に思えた。
私が真っ赤になって固まり、部長を見つめていたからだろうか――。
「……試してみるか?」
部長は普段は見せない妖艶な笑みを浮かべ、私の手を握ってきた。
アホな事に、私は無言で頷き、彼の誘いを受けてしまった。
**
自宅の賃貸マンションに帰り、シャワーを浴びていると、いきなり全裸の部長がバスルームに入ってきた。
悲鳴を上げる間もなく、引き締まった体が目前に迫り、私をがっしりと抱き締めてくる。
濡れた髪の毛を撫でられ――、唇を奪われた。
「ん……っ、む――――ふ、ぁ……っ、あ」
――とろけるような感覚って、こういう事を言うのかもしれない。
292
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる