【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
2 / 778
送り狼 編

上司と私

しおりを挟む
 私――上村うえむら朱里あかりは上司が大嫌いだ。

 上司とは、部長の速水はやみみことの事だ。

 理由は単純で、彼が私の逆鱗に触れる事を言ったからだ。

 私には高校生から付き合っていた彼氏の田村たむら昭人あきとがいて、二十五歳の誕生日まで十年弱の付き合いをしていた。

 中学生からの親友の中村なかむらけいからは「いつプロポーズされるんだろうね」と言われ、私自身も期待していた。

 けれどその期待は、あっけなく裏切られる事となる。

『俺、もうお前のこと女として見られないわ』

 何も誕生日に言わなくてもいいじゃない!

 確かにここ数年、レスになっていたと思う。

 昭人は私を大事にしてくれ、ラブラブカップルではなかったけれど、熟年夫婦のような雰囲気を醸し出す恋人だと思っていた。

 彼と初めてセックスをしたのは大学二年の夏だ。

 気持ちいい――と思えなかったし、『まぁこんなものか』と思った。

 それからも、昭人に求められてセックスする事はあったけれど、やっぱり気持ちいいとは思えなかった。

『痛いからあんまりしたくないんだよね』と正直に言うと、彼は『そうか』と言って理解を示してくれた。

 そのあとは無理に求められる事もなくなり、それが彼の愛情、私たちカップルの在り方だと思っていた。

 私はセックスをしなくても平気だった。

 ――けれど男という生き物は、そうじゃなかったようだ。

 私の二十五歳の誕生日に、昭人から『女として見ていない』と言われ、『じゃあ別れよ』」と円満に別れたつもりだった。

 だがほどなくして、恵から『あいつすぐに彼女作ったみたい。ラブホから出てきたの見ちゃった』と報告を受けた。

 結局、私がセックスに応じなかったのが悪かった――ようだ。

 私が昭人にフラれたのは、街がクリスマスムード一色になっている、十二月一日の事だ。

 そのあと、私はずーっとムカムカイライラして過ごしていた。

 仕事に支障はでないようにしていたけれど、思いだしては落ち込んで、休憩時間にデスクに突っ伏して負のオーラをまき散らしていたから、部長が私を気にしたらしい。

『どうした? 上村。最近様子がおかしいと、部署のやつが言っていたけど』

 昼休みに社食で恵とランチを食べ、グダグダと話していたら部長に話しかけられた。

 いつもの私なら、『プライベートを上司に言うなんてありえない』と思っていただろう。

 けれど昭人に別れを告げられてから、半年経っても思いだし泣きしている私は、多分普通の状態ではなかった。

『聞いてくださいよ……』

 私は半分ヤケになり、部長に昭人への文句を言う。

 すると、あっけらかんと言われた。

『そりゃ、お前にも原因があるんじゃないか? 二十代の男っていったら、やりたい盛りだろ』

 知ったような口をきかれて、ムッカァ……としてしまった。

 もともと部長の事はあまり好きじゃなかったけど、これで完全に大嫌いになった。

『部長もシングルらしいですけど、お相手ができたらいいですね』

 私はツンとして言い返し、恵と一緒に社食をあとにした。

(なにさ、部長だって仕事一筋で恋人がいないって言ってたくせに。私が傷心だって聞いて話しかけてきたなら、もっと気遣ってくれてもいいと思うけど。なんのために話しかけてきたの?)

 昭人は私の気持ちを察してくれる、優しい人だった。

 もともと私の男性のタイプは、グイグイくる人より、一緒にいてのんびりできるタイプだ。

 部長は仕事はできるだろうけど、一緒にいて気持ちが安らげる人とは思えない。

 感情を露わにせず、何を考えてるか分からないし、いつも不機嫌そうな雰囲気があって恐い。

(あいつ、絶対モテないわ。イケメンで一見モテそうだけど、本当に想ってくれる人はいなさそう。はい、決定~)

 私はムカムカして心の中でそう決めつけ、ズカズカと廊下を進んだ。



**



 一年後の十一月三十日。

 昭人にフラれた誕生日前日になっても、まだ私には恋人がいない。

 いっぽうで昭人は、私と別れてすぐ付き合った女と結婚するらしい。

 この情報は恵ではない別の友達から聞いて、私は地味に大ダメージを受けた。

 恵は私を気遣って言わなかったんだろうし、昭人にいたってはもう私に連絡する気もなかっただろう。

 けど、学生時代から付き合っていたから、嫌でも噂は流れてくる。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...