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初デート 編
部長とデート
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「その辺りを話すためにも、食事をしないか?」
改めて誘われて、私はまた溜め息をついた。
「仕方がないですね。お肉食べさせてくださいよ?」
食い気を見せると、部長はクシャッと笑って「任せろ」とサムズアップした。
会議室内の空気の入れ換えは終わったようで、部長は「そろそろいいな」と言って窓を閉める。
私は先ほどの突然すぎるセックスを思い出し、彼がこちらに背中を向けているのをいい事に、一人赤面した。
「……じゃあ、仕事がありますから」
私はそういって、そそくさと会議室をあとにした。
**
金曜日の会議が終わり、同僚たちとゾロゾロと歩いている時、会議に出席していた部長が後ろに立った。
「上村さん、さっき発表した企画書について、一箇所確認したいところがあるんだけど」
「はい」
部長に話しかけられ、私は立ち止まる。
「コンセプトのキャッチコピーだけど……」
言いながら、部長は私のジャケットのポケットにクシャリとメモを押し込んだ。
彼が確認しているのは、取るに足らない事だ。
キャッチコピーの〝てをには〟のニュアンスがどうこう……など。
「あ、なるほど。分かった」
軽く確認したあと、部長はスタスタと歩いていく。
廊下に一人残された私は、周囲を確認してからポケットを探った。
白いメモ帳には、部長の電話番号とメッセージアプリのIDが書いてある。
登録しておけ、という事なんだろう。
(結局、私も何だかんだで食事に行くつもりになってるしな)
いいお店なら、お洒落をしていかないとならないんだろうか。
ぬかりのない部長の事だから、ドレスコードのある店なら一言注意書きがあると思う。
だからスカートかワンピースで臨めば、多分大丈夫かな。
「はぁ……」
私は溜め息をつき、メモをまたポケットに入れた。
**
メッセージアプリで部長と連絡をとり、結局土曜日は昼間からデートする事になった。
午前十時ぐらいに待ち合わせをし、映画館でアクション映画を見る。
私は映画好きで、気になった映画は一人ででもハシゴして見るタイプだ。
それを知ってか知らずか、部長は前日の金曜日が公開初日の映画を選んでくれた。
「すっごかったですね! ジム・ディーンって老い知らずかな?」
還暦を超えたハリウッドの超有名俳優が主演の映画だったけれど、歳を感じさせないアクションが本当に素晴らしかった。
ストーリーも二転三転して、どんでん返しが素晴らしい。
大興奮して歩いていると、部長がクスクス笑っているのに気づいた。
「何か?」
目を瞬かせると、彼は「いや」と笑う。
「お前、好きなものについて語る時、そんなに生き生きするんだな。いや、仕事で没になっても、食らいついて頑張ってるタフさを評価してるけど、他は割と淡々としてるイメージがあったんだよ」
「あぁ……」
私は立ち止まり、シネコン内のポスターをチェックし、スマホのスケジュールアプリに公開日を登録しながら頷く。
「私、あんまり感情を露わにするのが得意じゃないんですよ」
「どうして?」
「んー……」
それを話すには、まだ部長との付き合いが浅いように感じた。
個人的に付き合い始めたのはつい最近なのに、自分の人生の根幹に関わる事を話すのは早計だ。
もしかしたらすぐに関わらなくなるかもしれない。
その時に「信頼してあんな事まで話したのに……」ってなるのは御免だ。
「今はまだ話さないでおきます。信頼してないとかじゃないですけど」
再び歩き始めた私を、部長はしげしげと見てくる。
「心のシャッターが閉まったのが分かってしまった」
「そういう訳じゃないですけど」
心を閉ざしたと言われると、なんだか申し訳なくなる。
けど、部長に対して、過度に期待しないようにしてるのは確かだ。
この話が続かないように、私は話題を変える事にした。
改めて誘われて、私はまた溜め息をついた。
「仕方がないですね。お肉食べさせてくださいよ?」
食い気を見せると、部長はクシャッと笑って「任せろ」とサムズアップした。
会議室内の空気の入れ換えは終わったようで、部長は「そろそろいいな」と言って窓を閉める。
私は先ほどの突然すぎるセックスを思い出し、彼がこちらに背中を向けているのをいい事に、一人赤面した。
「……じゃあ、仕事がありますから」
私はそういって、そそくさと会議室をあとにした。
**
金曜日の会議が終わり、同僚たちとゾロゾロと歩いている時、会議に出席していた部長が後ろに立った。
「上村さん、さっき発表した企画書について、一箇所確認したいところがあるんだけど」
「はい」
部長に話しかけられ、私は立ち止まる。
「コンセプトのキャッチコピーだけど……」
言いながら、部長は私のジャケットのポケットにクシャリとメモを押し込んだ。
彼が確認しているのは、取るに足らない事だ。
キャッチコピーの〝てをには〟のニュアンスがどうこう……など。
「あ、なるほど。分かった」
軽く確認したあと、部長はスタスタと歩いていく。
廊下に一人残された私は、周囲を確認してからポケットを探った。
白いメモ帳には、部長の電話番号とメッセージアプリのIDが書いてある。
登録しておけ、という事なんだろう。
(結局、私も何だかんだで食事に行くつもりになってるしな)
いいお店なら、お洒落をしていかないとならないんだろうか。
ぬかりのない部長の事だから、ドレスコードのある店なら一言注意書きがあると思う。
だからスカートかワンピースで臨めば、多分大丈夫かな。
「はぁ……」
私は溜め息をつき、メモをまたポケットに入れた。
**
メッセージアプリで部長と連絡をとり、結局土曜日は昼間からデートする事になった。
午前十時ぐらいに待ち合わせをし、映画館でアクション映画を見る。
私は映画好きで、気になった映画は一人ででもハシゴして見るタイプだ。
それを知ってか知らずか、部長は前日の金曜日が公開初日の映画を選んでくれた。
「すっごかったですね! ジム・ディーンって老い知らずかな?」
還暦を超えたハリウッドの超有名俳優が主演の映画だったけれど、歳を感じさせないアクションが本当に素晴らしかった。
ストーリーも二転三転して、どんでん返しが素晴らしい。
大興奮して歩いていると、部長がクスクス笑っているのに気づいた。
「何か?」
目を瞬かせると、彼は「いや」と笑う。
「お前、好きなものについて語る時、そんなに生き生きするんだな。いや、仕事で没になっても、食らいついて頑張ってるタフさを評価してるけど、他は割と淡々としてるイメージがあったんだよ」
「あぁ……」
私は立ち止まり、シネコン内のポスターをチェックし、スマホのスケジュールアプリに公開日を登録しながら頷く。
「私、あんまり感情を露わにするのが得意じゃないんですよ」
「どうして?」
「んー……」
それを話すには、まだ部長との付き合いが浅いように感じた。
個人的に付き合い始めたのはつい最近なのに、自分の人生の根幹に関わる事を話すのは早計だ。
もしかしたらすぐに関わらなくなるかもしれない。
その時に「信頼してあんな事まで話したのに……」ってなるのは御免だ。
「今はまだ話さないでおきます。信頼してないとかじゃないですけど」
再び歩き始めた私を、部長はしげしげと見てくる。
「心のシャッターが閉まったのが分かってしまった」
「そういう訳じゃないですけど」
心を閉ざしたと言われると、なんだか申し訳なくなる。
けど、部長に対して、過度に期待しないようにしてるのは確かだ。
この話が続かないように、私は話題を変える事にした。
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