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初デート 編
分かってやってますよね?
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「付き合ってる間は本気で大切にする。プライベートではお前を一番にするし、優しくするし、贈り物もするし、デートでもベッドでも満足させる。あとから返せなんてケチ臭い事も言わない」
「~~~~だから。それがデメリットなんです」
私は荒々しく溜め息をつく。
その時前菜が運ばれてきて、私は言葉を止めて意識を食に向けた。
前菜は綺麗な盛り合わせになっていて、せっかくだから綺麗に整えられたそれを写真に収めた。
「デメリットとは? 話し合って解決していこう」
私が感情的になっても、尊さんはまったく動じない。
だから余計に、自分の子供っぽさを痛感させられた。
「……私、自分の事をちょろい女と思いたくないんです。自分の事はチャラついてないって思ってるし、付き合う人は慎重に見極めたいです」
「朱里はまじめな女だと思うけど」
酔っぱらった私を押し流して抱いた張本人が、ケロリとして言う。
「私の弱みを知ってるあなたにズブズブ嵌まって、好きになったらどうしようもないじゃないですか。……酔っぱらっていたとはいえ、流されて職場の上司に抱かれてしまうぐらいには、私はボロボロに傷付いています。あなたと付き合ってフラれたとして、さらに大きな傷を負うのが嫌なんです」
そこまで言い、私はカプレーゼのモッツァレラチーズとトマトをグサッとフォークで刺し、口に入れる。
「俺の事を好きになる可能性が高い?」
尊さんは食事をしながら、私を見て魅力的に笑う。
本当にヤメテクダサイ……。
「あの、尊さん分かってやってますよね?」
「何が?」
彼は生ハムを口に入れて目を瞬かせる。
「~~~~、自分が条件のいいハイスペイケメンで、ちょっとやり方を考えたら女なんて簡単に落ちるの、分かってますよね? って事です」
褒め言葉ともとれる事を言うと、彼はしたり顔で笑った。
「自惚れは危険だ。だが賢い奴は自分の魅力を理解した上で、十分に活用するものだ」
……あぁ、もう……。
目の前で微笑んでいる男は、とても危険だ。
もう自分は彼の手の中にいて、その危険さも分かっているのに逃げられないでいる。
「~~~~性格悪っ」
赤面しつつも彼を睨み付けると、尊さんはニヤリと笑った。
「この歳で管理職についてる奴は、ある程度性格悪くないとやってらんないよ。純真無垢な奴は向いてない」
言われて、三十二歳で部長なんて本当に異例の事だと思った。
(これもまた、何か事情があるのかな……)
考えるけれど、深入りするのが恐い。
溜め息をついた私は、さらに〝尊さんと付き合いたくない理由〟を挙げる。
「……社員の嫉妬が恐いです。学校でも同じですが、目立てば誰かの好意は受けますが、誰かに嫌悪されます。目立たずに平々凡々とやっていくのが一番だと思っています。尊さん、自分が女性社員に狙われてるの分かってますよね? ああいうガツガツした肉食女子の攻撃が、自分に向くと思うと本当に嫌です。そういう子供っぽい虐めのターゲットになるのはごめんです」
ハッキリ言うと、彼は眉を上げてシニカルに笑う。
「それは承知してるよ。会社ではいつも以上に接近しない。匂わせる事もしない」
「…………どの口が言ってるんですか。先日会議室で襲ってきたのは何なんですか? ボケたんですか?」
「見つからなければノーカンだろ?」
この……。
ああ言えばこう言う。
私は思わず顔を歪めて歯ぎしりしてしまったけれど、周りがお洒落空間だと思いだして食事の続きに取りかかる。
こうなったらタダ飯食いだけはきっちり満喫してやる。
私は尊さんに翻弄されないように必死なのに、彼はずっと楽しそうな顔をしているのが悔しくて堪らない。
「他は? 心配事」
前菜を綺麗に食べ終えた尊さんは、紙ナプキンで口元を拭い、微笑みかける。
「……どう考えても沼るじゃないですか。尊さんが私を大切にしてくれればくれるほど、本気になって忘れられなくなって、昭人にフラれた以上のダメージを負います」
私は溜め息をつき、言葉を続ける。
「それに私、今二十六歳ですよ? 尊さんみたいにハイスペなら、幾つになっても結婚したいっていう女性がいるでしょうけど、女の結婚市場価値は期間限定なんです。本当はあまり年齢を気にしたくありません。何歳になっても魅力的な女性でいたいです。……でも健康な子を高確率で出産できる年齢が決まっていて、結婚して子供がほしいという望みを持っている以上、時間を無駄にしたくないんです」
私の主張を理解したのか、尊さんは何度か頷く。
「~~~~だから。それがデメリットなんです」
私は荒々しく溜め息をつく。
その時前菜が運ばれてきて、私は言葉を止めて意識を食に向けた。
前菜は綺麗な盛り合わせになっていて、せっかくだから綺麗に整えられたそれを写真に収めた。
「デメリットとは? 話し合って解決していこう」
私が感情的になっても、尊さんはまったく動じない。
だから余計に、自分の子供っぽさを痛感させられた。
「……私、自分の事をちょろい女と思いたくないんです。自分の事はチャラついてないって思ってるし、付き合う人は慎重に見極めたいです」
「朱里はまじめな女だと思うけど」
酔っぱらった私を押し流して抱いた張本人が、ケロリとして言う。
「私の弱みを知ってるあなたにズブズブ嵌まって、好きになったらどうしようもないじゃないですか。……酔っぱらっていたとはいえ、流されて職場の上司に抱かれてしまうぐらいには、私はボロボロに傷付いています。あなたと付き合ってフラれたとして、さらに大きな傷を負うのが嫌なんです」
そこまで言い、私はカプレーゼのモッツァレラチーズとトマトをグサッとフォークで刺し、口に入れる。
「俺の事を好きになる可能性が高い?」
尊さんは食事をしながら、私を見て魅力的に笑う。
本当にヤメテクダサイ……。
「あの、尊さん分かってやってますよね?」
「何が?」
彼は生ハムを口に入れて目を瞬かせる。
「~~~~、自分が条件のいいハイスペイケメンで、ちょっとやり方を考えたら女なんて簡単に落ちるの、分かってますよね? って事です」
褒め言葉ともとれる事を言うと、彼はしたり顔で笑った。
「自惚れは危険だ。だが賢い奴は自分の魅力を理解した上で、十分に活用するものだ」
……あぁ、もう……。
目の前で微笑んでいる男は、とても危険だ。
もう自分は彼の手の中にいて、その危険さも分かっているのに逃げられないでいる。
「~~~~性格悪っ」
赤面しつつも彼を睨み付けると、尊さんはニヤリと笑った。
「この歳で管理職についてる奴は、ある程度性格悪くないとやってらんないよ。純真無垢な奴は向いてない」
言われて、三十二歳で部長なんて本当に異例の事だと思った。
(これもまた、何か事情があるのかな……)
考えるけれど、深入りするのが恐い。
溜め息をついた私は、さらに〝尊さんと付き合いたくない理由〟を挙げる。
「……社員の嫉妬が恐いです。学校でも同じですが、目立てば誰かの好意は受けますが、誰かに嫌悪されます。目立たずに平々凡々とやっていくのが一番だと思っています。尊さん、自分が女性社員に狙われてるの分かってますよね? ああいうガツガツした肉食女子の攻撃が、自分に向くと思うと本当に嫌です。そういう子供っぽい虐めのターゲットになるのはごめんです」
ハッキリ言うと、彼は眉を上げてシニカルに笑う。
「それは承知してるよ。会社ではいつも以上に接近しない。匂わせる事もしない」
「…………どの口が言ってるんですか。先日会議室で襲ってきたのは何なんですか? ボケたんですか?」
「見つからなければノーカンだろ?」
この……。
ああ言えばこう言う。
私は思わず顔を歪めて歯ぎしりしてしまったけれど、周りがお洒落空間だと思いだして食事の続きに取りかかる。
こうなったらタダ飯食いだけはきっちり満喫してやる。
私は尊さんに翻弄されないように必死なのに、彼はずっと楽しそうな顔をしているのが悔しくて堪らない。
「他は? 心配事」
前菜を綺麗に食べ終えた尊さんは、紙ナプキンで口元を拭い、微笑みかける。
「……どう考えても沼るじゃないですか。尊さんが私を大切にしてくれればくれるほど、本気になって忘れられなくなって、昭人にフラれた以上のダメージを負います」
私は溜め息をつき、言葉を続ける。
「それに私、今二十六歳ですよ? 尊さんみたいにハイスペなら、幾つになっても結婚したいっていう女性がいるでしょうけど、女の結婚市場価値は期間限定なんです。本当はあまり年齢を気にしたくありません。何歳になっても魅力的な女性でいたいです。……でも健康な子を高確率で出産できる年齢が決まっていて、結婚して子供がほしいという望みを持っている以上、時間を無駄にしたくないんです」
私の主張を理解したのか、尊さんは何度か頷く。
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