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初デート 編
恋は、戦いだ
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私は前菜を大人しく食べながら、隣に座っている、良く言えばミステリアス、悪く言えば正体不明で信頼できない男の事を考える。
普通の家庭の生まれじゃないのは確かだ。
三十二歳で部長になって、顔が良くてあらゆる条件が揃っているのに独身なんて、おかしすぎる。
女性の扱いは慣れているし、セックスだってうまい。
〝普通〟なら、すでに結婚して子供がいたっておかしくない。
そんな人に目を付けられた私も私だけど。
こういう言い方をすると語弊があるかもだけど、類友なのかな。
尊さんは訳アリの人で、その気になれば人気者にもなれるのに、他者からの好意をはぐらかして、一線引いた場所にいる。
私もまた、あまり人に深く立ち入らないようにしている。
肉食獣は群れの中に突っ込んでエサを狩る時もある。
でも群れから離れたところにいる、隙のある個体を狙ったほうが、狩りが成功する確率は高くなる。
尊さんはもとから仕事の面でも私を評価してくれていて、ある程度私を観察していたのかもしれない。
その過程で興味を持って、機会があれば……と思っていた可能性もある。
……いや、こんな事を口にしてしまえば、かなり自意識過剰だから言わないけど。
前菜を食べ終えてシャンパンを飲んでいると、食器が下げられて百合根のポタージュが出された。
色々考えていたけれど、私一人で思い悩んでも何も解決しない。
「……尊さんって、何なんですか? ただの〝部長〟じゃないでしょう?」
隣の席に座っている彼を見ると、尊さんは私を見てうっすら笑った。
その皮肉げな表情もまた、色気があって憎たらしいぐらい格好いい。
「俺と付き合える?」
覚悟がなければ、教えないという意思表示だ。
同時に、逃げるつもりなら、ここで逃がしてくれるとも言っている。
尊さんの手をとれば、きっと尋常ではない世界が待っているんだろう。
想像力の乏しい私でも、危険を察知するレーダーはある程度備えている……つもりだ。
――進むか、戻るか。
危険がありながらも魅力たっぷりの尊さんの手をとるか、凡庸な生活に戻り二度と彼と関わらないか。
――そう。この誘いを断ったら、尊さんは二度と私を誘わないと直感で分かった。
同じ会社で働いて顔を会わせても、先日のように会議室で襲ってくる事はないし、個人的に話しかけてくる事もない。
教えてくれた連絡先にメッセージを送っても、きっと彼の事だから無視するか、ブロックするだろう。
――嫌だ。
ポコッ……、とあぶくのように心の底からこみ上げた想いを、ようやく自覚する。
彼が魅力的なのは分かっていた。
エッチだってうまいし、また抱かれて気持ちよくなりたい。
それだけじゃない。意地悪な言い方をするところも、私を何度も試し、自分を選択するか確認するような態度も、大人びて達観してようでいながら、昭人の時みたいに大人げなくやり返すところも――、……好きだ。
気がついたら、すべてに惹かれて堪らなくなっている。
――この人の手を放したくない。
――もっと尊さんを知りたい。
――どんな関係になってもいい。この人となら、炎の中に身を投じるような恋をしてもいい。
――やってやろうじゃない。
私は目に強い力を宿し、尊さんを睨み付ける。
恋は、戦いだ。
「……ホント、悪い男ですね」
付き合えるかという問いに対し、私はイエスと言っていないし、彼を褒めてもいない。
けれどさすが尊さんというべきか、彼はその一言だけで私の気持ちを理解したようだった。
「多少の毒がなきゃ、薬にもならねぇよ」
「……減らず口ばっかり」
私は途中になっていたポタージュをまた口にし、チラッと尊さんを見て言う。
「面倒は嫌ですから、会社の人には内緒ですよ」
「了解」
彼は軽やかに返事をしたあと、シャンパンの残りをクーッと飲んでから爆弾発言をした。
「俺、会社の社長の息子なんだ」
「ぶふんっ」
私はポタージュを噴き出しかけ、「お上品なレストランだから!」と自分に思いっきりストップを掛け、口から出さないものの鼻に逆流させて涙目になった。
……鼻、痛った!
普通の家庭の生まれじゃないのは確かだ。
三十二歳で部長になって、顔が良くてあらゆる条件が揃っているのに独身なんて、おかしすぎる。
女性の扱いは慣れているし、セックスだってうまい。
〝普通〟なら、すでに結婚して子供がいたっておかしくない。
そんな人に目を付けられた私も私だけど。
こういう言い方をすると語弊があるかもだけど、類友なのかな。
尊さんは訳アリの人で、その気になれば人気者にもなれるのに、他者からの好意をはぐらかして、一線引いた場所にいる。
私もまた、あまり人に深く立ち入らないようにしている。
肉食獣は群れの中に突っ込んでエサを狩る時もある。
でも群れから離れたところにいる、隙のある個体を狙ったほうが、狩りが成功する確率は高くなる。
尊さんはもとから仕事の面でも私を評価してくれていて、ある程度私を観察していたのかもしれない。
その過程で興味を持って、機会があれば……と思っていた可能性もある。
……いや、こんな事を口にしてしまえば、かなり自意識過剰だから言わないけど。
前菜を食べ終えてシャンパンを飲んでいると、食器が下げられて百合根のポタージュが出された。
色々考えていたけれど、私一人で思い悩んでも何も解決しない。
「……尊さんって、何なんですか? ただの〝部長〟じゃないでしょう?」
隣の席に座っている彼を見ると、尊さんは私を見てうっすら笑った。
その皮肉げな表情もまた、色気があって憎たらしいぐらい格好いい。
「俺と付き合える?」
覚悟がなければ、教えないという意思表示だ。
同時に、逃げるつもりなら、ここで逃がしてくれるとも言っている。
尊さんの手をとれば、きっと尋常ではない世界が待っているんだろう。
想像力の乏しい私でも、危険を察知するレーダーはある程度備えている……つもりだ。
――進むか、戻るか。
危険がありながらも魅力たっぷりの尊さんの手をとるか、凡庸な生活に戻り二度と彼と関わらないか。
――そう。この誘いを断ったら、尊さんは二度と私を誘わないと直感で分かった。
同じ会社で働いて顔を会わせても、先日のように会議室で襲ってくる事はないし、個人的に話しかけてくる事もない。
教えてくれた連絡先にメッセージを送っても、きっと彼の事だから無視するか、ブロックするだろう。
――嫌だ。
ポコッ……、とあぶくのように心の底からこみ上げた想いを、ようやく自覚する。
彼が魅力的なのは分かっていた。
エッチだってうまいし、また抱かれて気持ちよくなりたい。
それだけじゃない。意地悪な言い方をするところも、私を何度も試し、自分を選択するか確認するような態度も、大人びて達観してようでいながら、昭人の時みたいに大人げなくやり返すところも――、……好きだ。
気がついたら、すべてに惹かれて堪らなくなっている。
――この人の手を放したくない。
――もっと尊さんを知りたい。
――どんな関係になってもいい。この人となら、炎の中に身を投じるような恋をしてもいい。
――やってやろうじゃない。
私は目に強い力を宿し、尊さんを睨み付ける。
恋は、戦いだ。
「……ホント、悪い男ですね」
付き合えるかという問いに対し、私はイエスと言っていないし、彼を褒めてもいない。
けれどさすが尊さんというべきか、彼はその一言だけで私の気持ちを理解したようだった。
「多少の毒がなきゃ、薬にもならねぇよ」
「……減らず口ばっかり」
私は途中になっていたポタージュをまた口にし、チラッと尊さんを見て言う。
「面倒は嫌ですから、会社の人には内緒ですよ」
「了解」
彼は軽やかに返事をしたあと、シャンパンの残りをクーッと飲んでから爆弾発言をした。
「俺、会社の社長の息子なんだ」
「ぶふんっ」
私はポタージュを噴き出しかけ、「お上品なレストランだから!」と自分に思いっきりストップを掛け、口から出さないものの鼻に逆流させて涙目になった。
……鼻、痛った!
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