【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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篠宮家 編

ブチ切れ継母

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「初めまして。上村朱里と申します」

 私は丁寧にお辞儀をする。

「初めまして。私は篠宮フーズの代表取締役社長、篠宮亘だ」

 社長が言い、私に名刺を渡してくる。

「僕は副社長の篠宮風磨と言います」

 優しげな顔立ちをしたイケメン副社長が言い、微笑みかけてくれた。

「私は篠宮怜香。経理部で部長をしています。……宜しくね。商品開発部、企画三課の上村さん」

 う……っ。

 なにげに「お前の事は知ってるぞ」と言われてる。

 初っぱなからバチバチの空気を出されたのを察して、風磨さんが私に笑いかけた。

「すっかり寒くなりましたね。僕たちもお茶をもらいましょうか」

「そうね」

 全員着席したあとに三人分のお茶が出され、飲み物をオーダーして、予め頼んでいたコース料理を運んできてもらう事にした。

「前もってお伝えしましたが、僕は朱里さんと結婚したいと思っています」

 尊さんが切り出し、私は緊張して背筋を伸ばす。

「上村さんはどちらの大学ご出身なの?」

 怜香さんがにこやかに先制攻撃してきた。

「……都内の××大学ですけれども……」

 私が通っていた大学は、難関大学ではない。

 でもそこそこ頑張って勉強したので、中の上ぐらいだと思っている。

 けどこの流れは……。

「そうなんですか。○○女学院ぐらいかと思っていたのですが……」

 ですよねー!

 選ばれしお嬢様しか行けない学校名を出さないでほしい。

「申し訳ございません。一般家庭の出でして、学費が掛かる学校には通えていません」

 ムカッときたけど、穏便に済ませておく。

「お金がないなんて言うつもりはなかったのよ? 勘違いさせたらごめんなさいね?」

 おわぁ……。今ハッキリ口にしましたねぇ……。

 ここまでテンプレートな嫌みだと、逆に面白くなってきた。

「怜香」

 社長が彼女を窘め、尊さんが続きを口にする。

「彼女のご両親には挨拶をしたのか?」

 社長の言葉に、尊さんが首を横に振る。

「いいえ。普通なら彼女のご両親に挨拶するものでしょう。ですが僕は先に、母さんに『結婚したい女性がいるので、丸木さんとの縁談はお受けできない』と伝えたかったのです」

 あ、やっぱりお相手は丸木エミリさんなんだ。

 そして向かいでは、風磨さんが表情を強張らせていた。

 自分の恋人を継弟に宛がわれるなんて、屈辱以外の何でもないよね……。

 いっぽうで怜香さんは、能面みたいな無表情で尊さんを睨んでいた。こっわ。

「前から何回も言っていますが、丸木さんは兄貴の恋人です。兄貴から彼女を取り上げて、弟と結婚させて面白いですか? これで兄弟仲が悪くなっても、息子たちから憎まれても構わないと? それに、気持ちがないのに兄貴とお見合いをさせられる、三ノ宮さんのみや重工の春日かすがさんにも失礼です」

 わぁ……。三ノ宮重工っていったら、名門も名門じゃない。

 三ノ宮グループは不動産や銀行とか手広く事業を広げていて、遡ると明治華族にたどり着くお貴族様だ。

 そんなところのお嬢様とのご縁って言ったら、飛びつきたくなるのは分かるけどさぁ……。いやぁ……ないわぁ。

 私は微笑みながらも、スッと目の温度を下げる。

 尊さんが反抗したからか、怜香さんは柳眉を逆立てて激怒した。

「私の決めた事に逆らうと言うの!? 風磨にいい結婚相手を探すのは当たり前でしょう!?」

「……僕は望んでいません」

 とうとう我慢できなくなったのか、風磨さんが押し殺した声で口を挟んだ。

「あんな秘書なんかと結婚して、幸せになれる訳がないでしょう!」

「言葉が過ぎやしませんか? 秘書たちは立派な仕事をしてくれています。社長だって僕だって、秘書なしに仕事はできません。個人的な感情で彼らを貶めるのはやめていただきましょうか」

 風磨さんに反抗されたのが堪えたのか、怜香さんは息子二人をきつく睨み、立ちあがった。

 そしてクローゼットからコートを出し、袖に腕を通すと言い捨てる。

「とにかく、そんな低学歴な女性との結婚は認めません! 私の言う事を聞きなさい!」

 そう言って、怜香さんは個室を出ていった。

「はぁ……」

 私は止めていたように思える息を、大きく吐いた。
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