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篠宮家 編
副社長カップルと食事
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そのあと、十二月四週目の平日夜に、風磨さんとエミリさんに会う事になった。
尊さんとエミリさんの縁談(?)が正式に取りやめになったのかは、まだ決まっていない。
今まで二人とも、怜香さんが猛プッシュしたから断れずにいた。
けれど先日の席で尊さんが意思表示をした。
加えて当事者であるエミリさんも「しない」に合意したなら、なかった事になるだろう。
その打ち合わせもかねて、私たちは四者で顔を合わせて話す事にしたのだ。
服装に悩んでいたら、尊さんに『先日ほどきちんとした格好でなくてもいい』と言われた。
でもプライベートとはいえ、自社の副社長と会うので綺麗めの服を選んだ。
どこのお店にするかはまだ聞かされていなかったけれど、デリケートな話を人に邪魔されず、落ち着いた雰囲気で話せるお店になるだろう。
という事で、今日はテラコッタカラーのセンタープレスパンツに、上はベージュのニットアンサンブルを着て出勤した。
程よく上品だし、かしこまり過ぎてもいない。
会社では尊さんといつものように、ただの上司と部下として過ごし、それぞれ帰る。
そのあと、中目黒駅に集合だ。
私は交通機関を使い、尊さんは多分ハイヤーを使ったんだと思う。セレブめ。
中目黒駅に着くと、ダークスーツにグレーのコート、えんじ色のマフラーを巻いた尊さんが「おう」と片手を挙げた。
……やっぱり顔がいいな……。
あと、遠目から見たシルエットがいいし、一見めちゃいい男だ。
周囲には待ち合わせの人が大勢いて、若い女性たちは尊さんをチラチラ気にしている。
けど彼が私に声を掛けた時点で「女つきかよ」と一気に冷めた目になった。面白い。
そのあと、私たちは徒歩少しにあるイタリアンレストランに向かった。
通されたのは個室で、そこにはすでに風磨さんと彼女――エミリさんがいた。
「初めまして」
彼女は私たちの姿を見て、サッと立ちあがった。
「初めまして。商品開発部、企画三課の上村朱里です」
私はエミリさんにペコリと頭を下げ、風磨さんにも会釈した。
エミリさんはパッと見、華やかな美女だ。
身長は百六十五センチ以上はありそうで、スラッとしてスタイルがいい。
目が大きく、他のパーツも整っていて女優さんみたいで、抜け感のあるナチュラルメイクを施している。
これでビシッと完璧なメイクをしたら、近寄りがたい雰囲気になりそうだしな……。
彼女は全身から明るくて社交的なオーラを醸しだし、滅多にお目にかかれない美人だけど、親しみやすさを抱かせる。
加えてパッと見て、「やな感じ」がまったくしなかった。
容姿に恵まれて仕事ができて、性格までいいなんて……と思いがちだけれど、世界にはそれらを備えた人がいる。
――完璧だなぁ……。
私は胸の奥で呟く。
王子様的な副社長が惹かれるのも仕方がない。
こんな秘書が側にいたなら、誰だって恋に落ちるだろう。
お見合いするはずだった尊さんは……。
チラッと彼を盗み見すると、バチッと目が合ってしまった。
(あ……っ)
何か言う前に、尊さんはニヤッと笑って私の頭を撫でてきた。
(~~~~っ! 考えてる事、筒抜けだったかもしれない!)
尊さんには心配するなって言われたし、エミリさんは風磨さんとラブラブなのに、私一人だけが嫉妬しかけて……って、普通に恥ずかしい。
「とりあえず、座って。今日は来てくれてありがとう」
風磨さんに言われ、私は赤面しながらテーブルにつく事にした。
飲み物をオーダーしたあと、風磨さんが切りだした。
「二人とも、先日はすまなかった」
「いいえ、終わった事ですし」
「そうそう。終わった事を蒸し返しても仕方ない」
風磨さんは私たちの返事を聞き、安堵した表情になる。
「エミリ、俺たちの縁談? は破談でいいな? 当人同士の合意だ」
尊さんは「縁談」を半笑いで言う。
尊さんとエミリさんの縁談(?)が正式に取りやめになったのかは、まだ決まっていない。
今まで二人とも、怜香さんが猛プッシュしたから断れずにいた。
けれど先日の席で尊さんが意思表示をした。
加えて当事者であるエミリさんも「しない」に合意したなら、なかった事になるだろう。
その打ち合わせもかねて、私たちは四者で顔を合わせて話す事にしたのだ。
服装に悩んでいたら、尊さんに『先日ほどきちんとした格好でなくてもいい』と言われた。
でもプライベートとはいえ、自社の副社長と会うので綺麗めの服を選んだ。
どこのお店にするかはまだ聞かされていなかったけれど、デリケートな話を人に邪魔されず、落ち着いた雰囲気で話せるお店になるだろう。
という事で、今日はテラコッタカラーのセンタープレスパンツに、上はベージュのニットアンサンブルを着て出勤した。
程よく上品だし、かしこまり過ぎてもいない。
会社では尊さんといつものように、ただの上司と部下として過ごし、それぞれ帰る。
そのあと、中目黒駅に集合だ。
私は交通機関を使い、尊さんは多分ハイヤーを使ったんだと思う。セレブめ。
中目黒駅に着くと、ダークスーツにグレーのコート、えんじ色のマフラーを巻いた尊さんが「おう」と片手を挙げた。
……やっぱり顔がいいな……。
あと、遠目から見たシルエットがいいし、一見めちゃいい男だ。
周囲には待ち合わせの人が大勢いて、若い女性たちは尊さんをチラチラ気にしている。
けど彼が私に声を掛けた時点で「女つきかよ」と一気に冷めた目になった。面白い。
そのあと、私たちは徒歩少しにあるイタリアンレストランに向かった。
通されたのは個室で、そこにはすでに風磨さんと彼女――エミリさんがいた。
「初めまして」
彼女は私たちの姿を見て、サッと立ちあがった。
「初めまして。商品開発部、企画三課の上村朱里です」
私はエミリさんにペコリと頭を下げ、風磨さんにも会釈した。
エミリさんはパッと見、華やかな美女だ。
身長は百六十五センチ以上はありそうで、スラッとしてスタイルがいい。
目が大きく、他のパーツも整っていて女優さんみたいで、抜け感のあるナチュラルメイクを施している。
これでビシッと完璧なメイクをしたら、近寄りがたい雰囲気になりそうだしな……。
彼女は全身から明るくて社交的なオーラを醸しだし、滅多にお目にかかれない美人だけど、親しみやすさを抱かせる。
加えてパッと見て、「やな感じ」がまったくしなかった。
容姿に恵まれて仕事ができて、性格までいいなんて……と思いがちだけれど、世界にはそれらを備えた人がいる。
――完璧だなぁ……。
私は胸の奥で呟く。
王子様的な副社長が惹かれるのも仕方がない。
こんな秘書が側にいたなら、誰だって恋に落ちるだろう。
お見合いするはずだった尊さんは……。
チラッと彼を盗み見すると、バチッと目が合ってしまった。
(あ……っ)
何か言う前に、尊さんはニヤッと笑って私の頭を撫でてきた。
(~~~~っ! 考えてる事、筒抜けだったかもしれない!)
尊さんには心配するなって言われたし、エミリさんは風磨さんとラブラブなのに、私一人だけが嫉妬しかけて……って、普通に恥ずかしい。
「とりあえず、座って。今日は来てくれてありがとう」
風磨さんに言われ、私は赤面しながらテーブルにつく事にした。
飲み物をオーダーしたあと、風磨さんが切りだした。
「二人とも、先日はすまなかった」
「いいえ、終わった事ですし」
「そうそう。終わった事を蒸し返しても仕方ない」
風磨さんは私たちの返事を聞き、安堵した表情になる。
「エミリ、俺たちの縁談? は破談でいいな? 当人同士の合意だ」
尊さんは「縁談」を半笑いで言う。
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