43 / 778
篠宮家 編
副社長カップルと食事
しおりを挟む
そのあと、十二月四週目の平日夜に、風磨さんとエミリさんに会う事になった。
尊さんとエミリさんの縁談(?)が正式に取りやめになったのかは、まだ決まっていない。
今まで二人とも、怜香さんが猛プッシュしたから断れずにいた。
けれど先日の席で尊さんが意思表示をした。
加えて当事者であるエミリさんも「しない」に合意したなら、なかった事になるだろう。
その打ち合わせもかねて、私たちは四者で顔を合わせて話す事にしたのだ。
服装に悩んでいたら、尊さんに『先日ほどきちんとした格好でなくてもいい』と言われた。
でもプライベートとはいえ、自社の副社長と会うので綺麗めの服を選んだ。
どこのお店にするかはまだ聞かされていなかったけれど、デリケートな話を人に邪魔されず、落ち着いた雰囲気で話せるお店になるだろう。
という事で、今日はテラコッタカラーのセンタープレスパンツに、上はベージュのニットアンサンブルを着て出勤した。
程よく上品だし、かしこまり過ぎてもいない。
会社では尊さんといつものように、ただの上司と部下として過ごし、それぞれ帰る。
そのあと、中目黒駅に集合だ。
私は交通機関を使い、尊さんは多分ハイヤーを使ったんだと思う。セレブめ。
中目黒駅に着くと、ダークスーツにグレーのコート、えんじ色のマフラーを巻いた尊さんが「おう」と片手を挙げた。
……やっぱり顔がいいな……。
あと、遠目から見たシルエットがいいし、一見めちゃいい男だ。
周囲には待ち合わせの人が大勢いて、若い女性たちは尊さんをチラチラ気にしている。
けど彼が私に声を掛けた時点で「女つきかよ」と一気に冷めた目になった。面白い。
そのあと、私たちは徒歩少しにあるイタリアンレストランに向かった。
通されたのは個室で、そこにはすでに風磨さんと彼女――エミリさんがいた。
「初めまして」
彼女は私たちの姿を見て、サッと立ちあがった。
「初めまして。商品開発部、企画三課の上村朱里です」
私はエミリさんにペコリと頭を下げ、風磨さんにも会釈した。
エミリさんはパッと見、華やかな美女だ。
身長は百六十五センチ以上はありそうで、スラッとしてスタイルがいい。
目が大きく、他のパーツも整っていて女優さんみたいで、抜け感のあるナチュラルメイクを施している。
これでビシッと完璧なメイクをしたら、近寄りがたい雰囲気になりそうだしな……。
彼女は全身から明るくて社交的なオーラを醸しだし、滅多にお目にかかれない美人だけど、親しみやすさを抱かせる。
加えてパッと見て、「やな感じ」がまったくしなかった。
容姿に恵まれて仕事ができて、性格までいいなんて……と思いがちだけれど、世界にはそれらを備えた人がいる。
――完璧だなぁ……。
私は胸の奥で呟く。
王子様的な副社長が惹かれるのも仕方がない。
こんな秘書が側にいたなら、誰だって恋に落ちるだろう。
お見合いするはずだった尊さんは……。
チラッと彼を盗み見すると、バチッと目が合ってしまった。
(あ……っ)
何か言う前に、尊さんはニヤッと笑って私の頭を撫でてきた。
(~~~~っ! 考えてる事、筒抜けだったかもしれない!)
尊さんには心配するなって言われたし、エミリさんは風磨さんとラブラブなのに、私一人だけが嫉妬しかけて……って、普通に恥ずかしい。
「とりあえず、座って。今日は来てくれてありがとう」
風磨さんに言われ、私は赤面しながらテーブルにつく事にした。
飲み物をオーダーしたあと、風磨さんが切りだした。
「二人とも、先日はすまなかった」
「いいえ、終わった事ですし」
「そうそう。終わった事を蒸し返しても仕方ない」
風磨さんは私たちの返事を聞き、安堵した表情になる。
「エミリ、俺たちの縁談? は破談でいいな? 当人同士の合意だ」
尊さんは「縁談」を半笑いで言う。
尊さんとエミリさんの縁談(?)が正式に取りやめになったのかは、まだ決まっていない。
今まで二人とも、怜香さんが猛プッシュしたから断れずにいた。
けれど先日の席で尊さんが意思表示をした。
加えて当事者であるエミリさんも「しない」に合意したなら、なかった事になるだろう。
その打ち合わせもかねて、私たちは四者で顔を合わせて話す事にしたのだ。
服装に悩んでいたら、尊さんに『先日ほどきちんとした格好でなくてもいい』と言われた。
でもプライベートとはいえ、自社の副社長と会うので綺麗めの服を選んだ。
どこのお店にするかはまだ聞かされていなかったけれど、デリケートな話を人に邪魔されず、落ち着いた雰囲気で話せるお店になるだろう。
という事で、今日はテラコッタカラーのセンタープレスパンツに、上はベージュのニットアンサンブルを着て出勤した。
程よく上品だし、かしこまり過ぎてもいない。
会社では尊さんといつものように、ただの上司と部下として過ごし、それぞれ帰る。
そのあと、中目黒駅に集合だ。
私は交通機関を使い、尊さんは多分ハイヤーを使ったんだと思う。セレブめ。
中目黒駅に着くと、ダークスーツにグレーのコート、えんじ色のマフラーを巻いた尊さんが「おう」と片手を挙げた。
……やっぱり顔がいいな……。
あと、遠目から見たシルエットがいいし、一見めちゃいい男だ。
周囲には待ち合わせの人が大勢いて、若い女性たちは尊さんをチラチラ気にしている。
けど彼が私に声を掛けた時点で「女つきかよ」と一気に冷めた目になった。面白い。
そのあと、私たちは徒歩少しにあるイタリアンレストランに向かった。
通されたのは個室で、そこにはすでに風磨さんと彼女――エミリさんがいた。
「初めまして」
彼女は私たちの姿を見て、サッと立ちあがった。
「初めまして。商品開発部、企画三課の上村朱里です」
私はエミリさんにペコリと頭を下げ、風磨さんにも会釈した。
エミリさんはパッと見、華やかな美女だ。
身長は百六十五センチ以上はありそうで、スラッとしてスタイルがいい。
目が大きく、他のパーツも整っていて女優さんみたいで、抜け感のあるナチュラルメイクを施している。
これでビシッと完璧なメイクをしたら、近寄りがたい雰囲気になりそうだしな……。
彼女は全身から明るくて社交的なオーラを醸しだし、滅多にお目にかかれない美人だけど、親しみやすさを抱かせる。
加えてパッと見て、「やな感じ」がまったくしなかった。
容姿に恵まれて仕事ができて、性格までいいなんて……と思いがちだけれど、世界にはそれらを備えた人がいる。
――完璧だなぁ……。
私は胸の奥で呟く。
王子様的な副社長が惹かれるのも仕方がない。
こんな秘書が側にいたなら、誰だって恋に落ちるだろう。
お見合いするはずだった尊さんは……。
チラッと彼を盗み見すると、バチッと目が合ってしまった。
(あ……っ)
何か言う前に、尊さんはニヤッと笑って私の頭を撫でてきた。
(~~~~っ! 考えてる事、筒抜けだったかもしれない!)
尊さんには心配するなって言われたし、エミリさんは風磨さんとラブラブなのに、私一人だけが嫉妬しかけて……って、普通に恥ずかしい。
「とりあえず、座って。今日は来てくれてありがとう」
風磨さんに言われ、私は赤面しながらテーブルにつく事にした。
飲み物をオーダーしたあと、風磨さんが切りだした。
「二人とも、先日はすまなかった」
「いいえ、終わった事ですし」
「そうそう。終わった事を蒸し返しても仕方ない」
風磨さんは私たちの返事を聞き、安堵した表情になる。
「エミリ、俺たちの縁談? は破談でいいな? 当人同士の合意だ」
尊さんは「縁談」を半笑いで言う。
137
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる