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その後の動き 編
人としての厚み
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《……引っ越し、手伝ってくれなかったのか?》
「一応、手伝ってはくれました。……ただ、気が向いた時に来る感じだったかな。やってほしかった訳じゃないですけど、力仕事を率先してやる雰囲気じゃなかったです。……むしろ、面倒臭そうだったというか……」
《なるほど》
「あ、や! 恵が友達を呼んでくれたので、『俺なんていなくてもいいじゃん』って思った可能性も高いです。恵の友達、体育会系なので、インドアな昭人と反りが合わないと思うんですよね。喧嘩した訳じゃないし、何かがあった訳でもないんですが……」
《あー、自分が頼られたかったのに、自分より力仕事に向いてる男がいたから、気分が悪くなった……ってトコかな?》
当時の事を思いだしながら、私は自信なさげに言う。
「……なのかな。初めて引っ越しする時は、最初から最後まで付き合ってくれて、引っ越し蕎麦を恵と三人で食べました。……でもそのうち、『まぁ、俺なんていなくてもいいじゃん?』みたいな感じで、適当に付き合って気がついたら帰ってた感じでした。……引っ越しの手伝いは彼氏の特権……とは思っていませんが、やりがいを奪っちゃったのかな……」
思いだすほど、昭人ではなく恵やその友達を頼ってしまった事に、罪悪感を覚えてくる。
それを察したように、尊さんが言った。
《朱里が落ち込む事はないんじゃないか? 第三者である俺から見ても、『なんでそこで不機嫌になる?』って思うし。ガキっぽい嫉妬心だと思うよ。田村クンはインドア派で、体育会系の男に苦手意識とほんのりとした憧れを持っていた。彼女の朱里が自分とは正反対の男を呼んだから、気に食わなかった。ただそれだけの話だろ》
「……昭人、体育会系に憧れてたんです? そんな素振りはなかったですけど。むしろ、『あいつらうるせーな』みたいな感じで嫌っていたというか……」
私の言葉を聞き、画面の向こうで尊さんはクスッと笑った。
《人間って、自分と正反対の人に無意識に憧れるもんなんだよ。口では『ああいう奴は嫌いだ』って言っておきながらも、心の底では憧れてる。本当は田村クンだって、体を鍛えて分かりやすい男らしさをアピールして〝強そう〟に見られたかったんじゃないか? でも性格や育ってきた環境的に、体育会系、パリピ、陽キャにはなれなかった。……だから悔し紛れに嫌って、馬鹿にするしかできなかった……。とも考えられる》
「なるほど……」
言われて、自分の嫌いなタイプの人を思い浮かべる。
私は社会のルールから逸脱している人、皆に迷惑を掛けても平然としている人が嫌いだ。
でも、もしかしたらその感情の中にも、ルールに縛られず自由に行動できる人への憧れがあるのかもしれない。
(そっかー……)
尊さんの知恵袋にうんうんと頷きつつ、私は膝の上に顎をのせ、ボソッと呟いた。
「でもなんか、悪い事をした気がします」
《気持ちは分かるけど、いま後悔してもどうにもなんねぇだろ? それとも田村クンに会って謝る?》
そう言われ、もう昭人とは終わったのだと実感する。
今さら私がどう感じようが、彼との関係は改善しないし、この申し訳なさを理解してもらったとしても、「それで?」だ。
(こうやってこだわるっていう事は、私……)
私はこの感情の理由を察し、溜め息と共に苦く笑った。
「〝悪者〟でいたくなかったのかも」
《……かもな。でも、深く考えなくていい。もう終わってるんだから》
「はい」
返事をしたあと、私は思った事を言う。
「尊さんと話していると、自分に厚みが生まれている気がします」
《サンキュ。そう言ってもらえて光栄だ》
「尊さんにも、そう感じる人っています?」
尋ねると、彼は少し考える素振りを見せてから言った。
《ジム・ローンって人がさ、『自分の周りの五人を平均すると自分になる』って言ったんだよ。それを胸に留め置いてはいるかな。憧れている人ができたら、その人の真似をして自分を高めていく。一気に雲の上の人とは付き合えねぇけど、一緒にいて心地いい人を選ぶ事はできる。そうやって自分を高めるうちに、付き合う人も変わっていく。嫌だなと感じるところがある友人がいるなら、自分もその程度って事だ》
「確かに」
《世の真理として、他人の足を引っ張って喜んでる奴は、雲の上の人と友達になれない。雲上人には彼らのコミニュティがあり、まがい物は混じれない。本気で勝ち組と友達になりたいなら、自分の人間性を上げて〝本物〟になるしかない。だから俺はできるだけ〝良く〟あろうとしてる》
彼の言葉を聞き、スッと胸の奥に何かが落ちた。
「そっか……」
こうやって彼は色んな事を学び、知る中で、憎しみに囚われず良い人間として幸せになる事を考え続けてきたんだ。
「一応、手伝ってはくれました。……ただ、気が向いた時に来る感じだったかな。やってほしかった訳じゃないですけど、力仕事を率先してやる雰囲気じゃなかったです。……むしろ、面倒臭そうだったというか……」
《なるほど》
「あ、や! 恵が友達を呼んでくれたので、『俺なんていなくてもいいじゃん』って思った可能性も高いです。恵の友達、体育会系なので、インドアな昭人と反りが合わないと思うんですよね。喧嘩した訳じゃないし、何かがあった訳でもないんですが……」
《あー、自分が頼られたかったのに、自分より力仕事に向いてる男がいたから、気分が悪くなった……ってトコかな?》
当時の事を思いだしながら、私は自信なさげに言う。
「……なのかな。初めて引っ越しする時は、最初から最後まで付き合ってくれて、引っ越し蕎麦を恵と三人で食べました。……でもそのうち、『まぁ、俺なんていなくてもいいじゃん?』みたいな感じで、適当に付き合って気がついたら帰ってた感じでした。……引っ越しの手伝いは彼氏の特権……とは思っていませんが、やりがいを奪っちゃったのかな……」
思いだすほど、昭人ではなく恵やその友達を頼ってしまった事に、罪悪感を覚えてくる。
それを察したように、尊さんが言った。
《朱里が落ち込む事はないんじゃないか? 第三者である俺から見ても、『なんでそこで不機嫌になる?』って思うし。ガキっぽい嫉妬心だと思うよ。田村クンはインドア派で、体育会系の男に苦手意識とほんのりとした憧れを持っていた。彼女の朱里が自分とは正反対の男を呼んだから、気に食わなかった。ただそれだけの話だろ》
「……昭人、体育会系に憧れてたんです? そんな素振りはなかったですけど。むしろ、『あいつらうるせーな』みたいな感じで嫌っていたというか……」
私の言葉を聞き、画面の向こうで尊さんはクスッと笑った。
《人間って、自分と正反対の人に無意識に憧れるもんなんだよ。口では『ああいう奴は嫌いだ』って言っておきながらも、心の底では憧れてる。本当は田村クンだって、体を鍛えて分かりやすい男らしさをアピールして〝強そう〟に見られたかったんじゃないか? でも性格や育ってきた環境的に、体育会系、パリピ、陽キャにはなれなかった。……だから悔し紛れに嫌って、馬鹿にするしかできなかった……。とも考えられる》
「なるほど……」
言われて、自分の嫌いなタイプの人を思い浮かべる。
私は社会のルールから逸脱している人、皆に迷惑を掛けても平然としている人が嫌いだ。
でも、もしかしたらその感情の中にも、ルールに縛られず自由に行動できる人への憧れがあるのかもしれない。
(そっかー……)
尊さんの知恵袋にうんうんと頷きつつ、私は膝の上に顎をのせ、ボソッと呟いた。
「でもなんか、悪い事をした気がします」
《気持ちは分かるけど、いま後悔してもどうにもなんねぇだろ? それとも田村クンに会って謝る?》
そう言われ、もう昭人とは終わったのだと実感する。
今さら私がどう感じようが、彼との関係は改善しないし、この申し訳なさを理解してもらったとしても、「それで?」だ。
(こうやってこだわるっていう事は、私……)
私はこの感情の理由を察し、溜め息と共に苦く笑った。
「〝悪者〟でいたくなかったのかも」
《……かもな。でも、深く考えなくていい。もう終わってるんだから》
「はい」
返事をしたあと、私は思った事を言う。
「尊さんと話していると、自分に厚みが生まれている気がします」
《サンキュ。そう言ってもらえて光栄だ》
「尊さんにも、そう感じる人っています?」
尋ねると、彼は少し考える素振りを見せてから言った。
《ジム・ローンって人がさ、『自分の周りの五人を平均すると自分になる』って言ったんだよ。それを胸に留め置いてはいるかな。憧れている人ができたら、その人の真似をして自分を高めていく。一気に雲の上の人とは付き合えねぇけど、一緒にいて心地いい人を選ぶ事はできる。そうやって自分を高めるうちに、付き合う人も変わっていく。嫌だなと感じるところがある友人がいるなら、自分もその程度って事だ》
「確かに」
《世の真理として、他人の足を引っ張って喜んでる奴は、雲の上の人と友達になれない。雲上人には彼らのコミニュティがあり、まがい物は混じれない。本気で勝ち組と友達になりたいなら、自分の人間性を上げて〝本物〟になるしかない。だから俺はできるだけ〝良く〟あろうとしてる》
彼の言葉を聞き、スッと胸の奥に何かが落ちた。
「そっか……」
こうやって彼は色んな事を学び、知る中で、憎しみに囚われず良い人間として幸せになる事を考え続けてきたんだ。
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