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実家に挨拶 編
家族への挨拶
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「緊張してきちゃった」
吉祥寺の自宅前で車から降りたあと、私はタカタカとその場で足踏みする。
「自分の家族をじゃがいもと思えなんて、言えねぇしな」
「あはは! じゃあ、掌に『家族』って三回書いて呑みます」
彼と話すと少し気持ちが落ち着き、私は「たのもう」と言いながらインターフォンのボタンを押した。
少ししてスピーカーから母の声が聞こえる。
《いらっしゃい! ……って朱里、自分の家なんだから入ってきなさい》
私は尊さんと顔を見合わせて笑ったあと、玄関のドアを開けた。
「どうぞ」
尊さんに入るよう言った時、奥から「あらあらあら……」といつもよりワントーン高い母の声が聞こえる。
そちらを見ると、きれいめの服を着た母と父、亮平、後ろに美奈歩がこちらに歩み寄ってくるところだ。
「初めまして。速水尊と申します」
尊さんは家族に向かって微笑みかけ、丁寧に一礼する。
「娘から少しだけ話を聞いていました。も~、朱里ったらイケメン捕まえて!」
「お母さん、顔だけ見て選んだような事いうのやめてよ」
思わず笑うと、継父も笑う。
「どうぞ上がってください」
母に言われ、尊さんは「お口に合えばいいのですが」と手土産を渡してから靴を脱いだ。
亮平はもう尊さんを見ても敵対心みたいなものは抱いていないみたいで、むしろ好意的な雰囲気を醸し出している。
(美奈歩は……)
一番奥にいる継妹を見ると、彼女は少し驚いた顔をして、尊さんの顔をガン見してた。
(……あらら……。これは……)
何となく嫌な予感を抱きながら、私もブーツを脱いでコートを脱ぎ、リビングに向かった。
母はすぐにコーヒーを淹れ始め、近所にあるケーキ屋さんの焼き菓子がお茶請けに出された。
「速水さんは、部長さんなんですって?」
継父に話しかけられ、ソファに座った尊さんは感じよく微笑む。
「はい。朱里さんとは職場で出会い、お付き合いさせていただいています」
「ご家族はどのような方なんですか?」
きた!
私はジワリと冷や汗を掻き、ソワソワする。
この日になるまで覚悟を決めていたらいし尊さんは、穏やかな表情で話し始めた。
「私は速水尊と名乗りましたが、本当の名前は篠宮尊と申します」
「篠宮……?」
その名字を聞き、家族は私が務めている会社の名前、そして今ニュースになっている怜香さんの事を想像したみたいだ。
一瞬にして家族の表情が少し不安なものになり、私は祈りを込めて両手を組む。
「私は篠宮フーズ先代社長、篠宮亘の婚外子です。母親の姓は速水と言い、母方の家では音響機器メーカーを営んでいます」
その説明を聞いて、スピーカーなどで有名なメーカーだと理解したのか、家族の顔が驚愕に彩られる。
「また、いま世間をお騒がせしている篠宮怜香は、私の継母となります」
怜香さんのニュースは今ワイドショーなどでも流れていて、家族も知っているはずだ。
尊さんを迎えた時は緊張しながらもワクワクした雰囲気だったのに、すっかりシリアスな空気が漂っている。
彼が悪者みたいになるのを怖れ、私はフォローする。
「ニュースで報じられている事は大体本当だけど、尊さんは怜香さんとの関係を清算したし、篠宮家はこれから健全な方向へ向かっていくと信じてる。私が尊さんと結婚して篠宮家に入っても、変な立場になる事はないから大丈夫」
私の言葉を聞き、両親は少し安堵したようだけれど、その不安が完全に消えた訳じゃない。
「……朱里はそんな大きな会社に関わっても大丈夫なの? 速水さんを愛してるのは十分に理解するけど、ご両親はどちらとも大きな会社に関係しているじゃない。私は朱里をどこに出しても恥ずかしくない娘だと思ってる。でも……、速水さんには申し訳ないけど、意地悪な事を言われたりしない? 結婚って相手の家とも関わっていく事なのよ?」
母に言われ、私は小さく溜め息をつく。
その時、尊さんが母をまっすぐ見て言った。
吉祥寺の自宅前で車から降りたあと、私はタカタカとその場で足踏みする。
「自分の家族をじゃがいもと思えなんて、言えねぇしな」
「あはは! じゃあ、掌に『家族』って三回書いて呑みます」
彼と話すと少し気持ちが落ち着き、私は「たのもう」と言いながらインターフォンのボタンを押した。
少ししてスピーカーから母の声が聞こえる。
《いらっしゃい! ……って朱里、自分の家なんだから入ってきなさい》
私は尊さんと顔を見合わせて笑ったあと、玄関のドアを開けた。
「どうぞ」
尊さんに入るよう言った時、奥から「あらあらあら……」といつもよりワントーン高い母の声が聞こえる。
そちらを見ると、きれいめの服を着た母と父、亮平、後ろに美奈歩がこちらに歩み寄ってくるところだ。
「初めまして。速水尊と申します」
尊さんは家族に向かって微笑みかけ、丁寧に一礼する。
「娘から少しだけ話を聞いていました。も~、朱里ったらイケメン捕まえて!」
「お母さん、顔だけ見て選んだような事いうのやめてよ」
思わず笑うと、継父も笑う。
「どうぞ上がってください」
母に言われ、尊さんは「お口に合えばいいのですが」と手土産を渡してから靴を脱いだ。
亮平はもう尊さんを見ても敵対心みたいなものは抱いていないみたいで、むしろ好意的な雰囲気を醸し出している。
(美奈歩は……)
一番奥にいる継妹を見ると、彼女は少し驚いた顔をして、尊さんの顔をガン見してた。
(……あらら……。これは……)
何となく嫌な予感を抱きながら、私もブーツを脱いでコートを脱ぎ、リビングに向かった。
母はすぐにコーヒーを淹れ始め、近所にあるケーキ屋さんの焼き菓子がお茶請けに出された。
「速水さんは、部長さんなんですって?」
継父に話しかけられ、ソファに座った尊さんは感じよく微笑む。
「はい。朱里さんとは職場で出会い、お付き合いさせていただいています」
「ご家族はどのような方なんですか?」
きた!
私はジワリと冷や汗を掻き、ソワソワする。
この日になるまで覚悟を決めていたらいし尊さんは、穏やかな表情で話し始めた。
「私は速水尊と名乗りましたが、本当の名前は篠宮尊と申します」
「篠宮……?」
その名字を聞き、家族は私が務めている会社の名前、そして今ニュースになっている怜香さんの事を想像したみたいだ。
一瞬にして家族の表情が少し不安なものになり、私は祈りを込めて両手を組む。
「私は篠宮フーズ先代社長、篠宮亘の婚外子です。母親の姓は速水と言い、母方の家では音響機器メーカーを営んでいます」
その説明を聞いて、スピーカーなどで有名なメーカーだと理解したのか、家族の顔が驚愕に彩られる。
「また、いま世間をお騒がせしている篠宮怜香は、私の継母となります」
怜香さんのニュースは今ワイドショーなどでも流れていて、家族も知っているはずだ。
尊さんを迎えた時は緊張しながらもワクワクした雰囲気だったのに、すっかりシリアスな空気が漂っている。
彼が悪者みたいになるのを怖れ、私はフォローする。
「ニュースで報じられている事は大体本当だけど、尊さんは怜香さんとの関係を清算したし、篠宮家はこれから健全な方向へ向かっていくと信じてる。私が尊さんと結婚して篠宮家に入っても、変な立場になる事はないから大丈夫」
私の言葉を聞き、両親は少し安堵したようだけれど、その不安が完全に消えた訳じゃない。
「……朱里はそんな大きな会社に関わっても大丈夫なの? 速水さんを愛してるのは十分に理解するけど、ご両親はどちらとも大きな会社に関係しているじゃない。私は朱里をどこに出しても恥ずかしくない娘だと思ってる。でも……、速水さんには申し訳ないけど、意地悪な事を言われたりしない? 結婚って相手の家とも関わっていく事なのよ?」
母に言われ、私は小さく溜め息をつく。
その時、尊さんが母をまっすぐ見て言った。
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