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実家に挨拶 編
その時はよろぴこ
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「お母さんはずっと〝母親〟としてこの家を回そうと必死にやってきた。だから実の娘だからといって私ばかりを贔屓しなかったし、二人だけを気にする事もしなかった。私はお母さんが皆に対して中立な〝母〟になろうとしていたの、分かっていたよ。確かに私は二人の事で少し悩んでいたけど、当時は『何も言ってほしくない、触れてほしくない』と思ってた。だから謝る必要はないの」
そう言うと、母は悲しげに視線を落とす。
「……朱里がそうやって〝いい子〟の答えを出すのを『ありがたい』と思ったら駄目なのよね。私はずっと、朱里の我慢に甘えてしまっていた。思春期で不安定な時、私が側で支えなければならなかったのに」
落ち込んでいる母の背中を、継父がそっとさする。
「僕も家庭の事を若菜さんに任せ、子供たちに向き合わずにいた。亮平はしっかり者だし、美奈歩は寂しがりで甘えん坊なところもあるけれど、亮平がいるなら任せられる。朱里ちゃんは若菜さんがいるからきっと平気。……そう思ってしまっていた」
今度は継父まで反省し始め、私は溜め息をつく。
「気持ちは分かったよ。分かったけど、今はもう、うまくいってるからいいじゃん」
私の言葉を聞き、母は不思議そうに目を瞬かせた。
そんな母に、私は微笑んで言う。
「先日、帰るって言って帰らなかった時、本当は亮平と一悶着あったんだ」
チラッと亮平を見ると、彼は観念したように唇を曲げる。
「私たち三兄妹は〝理由〟ありきのこじれた感情を抱いていた。それぞれ〝理由〟を言えば分かり合えたかもしれない。でも急に〝家族〟になったもんだから、相手に何をどれだけ言っていいか分からず、遠慮しているうちに本音を言えなくなってしまった」
そこまで言い、私は隣に座っている尊さんを見て微笑んだ。
「でも私たちの間に尊さんが立って気持ちを解きほぐしてくれた。だから今、私は二人が自分をどう思っていたかを理解できたんだ。私たちはそれぞれ歩んできた道を語らなかったから、お互いの事情を知らず考えている事も想像できずにいた」
脳裏で、尊さんがさっき美奈歩に言った言葉が蘇る。
『思っているだけでは何にもなりません。家族になりたい、相手にとっての〝何か〟になりたいと思うなら、思いきって自分の考えを話してみる事を勧めます』
うん、そうだね。尊さん。
私は実父を亡くしたつらい記憶があるから、自分の過去を語るのが苦手だ。
でも最低限、家族になる相手には、今までの家族とどう過ごして、どんな別れを経験したか、痛みや弱さを示すべきだったのかもしれない。
家族だからといって何もかも曝け出す必要はないけど、信頼し合うためには誰にでも見せる〝外側〟じゃなく、自分を形成する中身を見せる事も必要だ。
初めて尊さんと個人的に話した時だって、彼が自分の事情を打ち明けてくれなかったら、興味すら持たなかったと思う。
「亮平とは先日和解できたし、美奈歩とはたった今、仲良しになりました」
そう言って私はニカッと笑い、ピースサインをする。
美奈歩は決まり悪い顔をして、そっぽを向いて赤面してる。こいつはツンデレ確定だ。
「大丈夫だよ。確かに親としては『自分が守って導くべきだった』って思うかもしれない。でも私はつきっきりで面倒を見てもらわなくても成長できたし、友達や彼氏の力を借りて色々誤魔化しつつも、勉強して大学に入って、篠宮フーズに入って尊さんと出会えた。これからも迷う事はあるだろうし、側に尊さんがいてもお母さんに相談する事はあるかもしれない。……その時はよろぴこ」
最後に冗談めかして言うと、全員がクスッと笑った。
「思っていた事を打ち明けるのはいいけど、昔の事をうだうだ言っても、当時の自分たちがどうにかなる訳じゃないよ。これから仲良くしていけばいいの。……っていうのは、尊さんの受け売り!」
彼の手を握って言うと、母が嬉しそうに笑って言った。
「速水さんは、本当に朱里を明るく前向きに変えてくれたんですね。母として心から感謝します。そして、娘の命の恩人であるあなたに、重ねて感謝します」
母が頭を下げると、尊さんは「いいえ」と微笑む。
「あの時彼女に出会ったのは、本当に偶然でした。それに私も朱里さんの存在に救われたんです。もし良ければ、運命的に再会した私たちのこれからを祝福してください」
「こちらこそ!」
上村家の全員は、すっかり尊さんに心を許し、私を託してくれたみたいだ。
(良かったなぁ)
家族と彼が笑顔で話しているのを見て、私はこの上なく幸せな気持ちになる。
このまま尊さんと一緒に実家に泊まりたいぐらいだけど、明日はまた別のイベントが待ってる。
(一つ一つ、乗り越えていくんだ)
そっと溜め息をついたあと、私は皆の会話に笑顔で参加した。
**
そう言うと、母は悲しげに視線を落とす。
「……朱里がそうやって〝いい子〟の答えを出すのを『ありがたい』と思ったら駄目なのよね。私はずっと、朱里の我慢に甘えてしまっていた。思春期で不安定な時、私が側で支えなければならなかったのに」
落ち込んでいる母の背中を、継父がそっとさする。
「僕も家庭の事を若菜さんに任せ、子供たちに向き合わずにいた。亮平はしっかり者だし、美奈歩は寂しがりで甘えん坊なところもあるけれど、亮平がいるなら任せられる。朱里ちゃんは若菜さんがいるからきっと平気。……そう思ってしまっていた」
今度は継父まで反省し始め、私は溜め息をつく。
「気持ちは分かったよ。分かったけど、今はもう、うまくいってるからいいじゃん」
私の言葉を聞き、母は不思議そうに目を瞬かせた。
そんな母に、私は微笑んで言う。
「先日、帰るって言って帰らなかった時、本当は亮平と一悶着あったんだ」
チラッと亮平を見ると、彼は観念したように唇を曲げる。
「私たち三兄妹は〝理由〟ありきのこじれた感情を抱いていた。それぞれ〝理由〟を言えば分かり合えたかもしれない。でも急に〝家族〟になったもんだから、相手に何をどれだけ言っていいか分からず、遠慮しているうちに本音を言えなくなってしまった」
そこまで言い、私は隣に座っている尊さんを見て微笑んだ。
「でも私たちの間に尊さんが立って気持ちを解きほぐしてくれた。だから今、私は二人が自分をどう思っていたかを理解できたんだ。私たちはそれぞれ歩んできた道を語らなかったから、お互いの事情を知らず考えている事も想像できずにいた」
脳裏で、尊さんがさっき美奈歩に言った言葉が蘇る。
『思っているだけでは何にもなりません。家族になりたい、相手にとっての〝何か〟になりたいと思うなら、思いきって自分の考えを話してみる事を勧めます』
うん、そうだね。尊さん。
私は実父を亡くしたつらい記憶があるから、自分の過去を語るのが苦手だ。
でも最低限、家族になる相手には、今までの家族とどう過ごして、どんな別れを経験したか、痛みや弱さを示すべきだったのかもしれない。
家族だからといって何もかも曝け出す必要はないけど、信頼し合うためには誰にでも見せる〝外側〟じゃなく、自分を形成する中身を見せる事も必要だ。
初めて尊さんと個人的に話した時だって、彼が自分の事情を打ち明けてくれなかったら、興味すら持たなかったと思う。
「亮平とは先日和解できたし、美奈歩とはたった今、仲良しになりました」
そう言って私はニカッと笑い、ピースサインをする。
美奈歩は決まり悪い顔をして、そっぽを向いて赤面してる。こいつはツンデレ確定だ。
「大丈夫だよ。確かに親としては『自分が守って導くべきだった』って思うかもしれない。でも私はつきっきりで面倒を見てもらわなくても成長できたし、友達や彼氏の力を借りて色々誤魔化しつつも、勉強して大学に入って、篠宮フーズに入って尊さんと出会えた。これからも迷う事はあるだろうし、側に尊さんがいてもお母さんに相談する事はあるかもしれない。……その時はよろぴこ」
最後に冗談めかして言うと、全員がクスッと笑った。
「思っていた事を打ち明けるのはいいけど、昔の事をうだうだ言っても、当時の自分たちがどうにかなる訳じゃないよ。これから仲良くしていけばいいの。……っていうのは、尊さんの受け売り!」
彼の手を握って言うと、母が嬉しそうに笑って言った。
「速水さんは、本当に朱里を明るく前向きに変えてくれたんですね。母として心から感謝します。そして、娘の命の恩人であるあなたに、重ねて感謝します」
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「あの時彼女に出会ったのは、本当に偶然でした。それに私も朱里さんの存在に救われたんです。もし良ければ、運命的に再会した私たちのこれからを祝福してください」
「こちらこそ!」
上村家の全員は、すっかり尊さんに心を許し、私を託してくれたみたいだ。
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家族と彼が笑顔で話しているのを見て、私はこの上なく幸せな気持ちになる。
このまま尊さんと一緒に実家に泊まりたいぐらいだけど、明日はまた別のイベントが待ってる。
(一つ一つ、乗り越えていくんだ)
そっと溜め息をついたあと、私は皆の会話に笑顔で参加した。
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