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体調不良 編
俺がインフルになれば良かったのに
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「私……」
かすれた声で何か言おうと思ったけれど、尊さんは左手でそっと私の腕に触れてきた。
「悪い。無理して話さなくていいと言っておきながら、話しかけちまったな。あとで楽になったらじっくり話そう。今は声を出すのもつらいと思うから、休んでいてくれ」
「ん……」
彼の厚意に甘え、私は目を閉じてシートに身を預ける。
そのあと病院について診察を受けたあと、インフルと診断された。
インフルの薬や解熱剤、ついでに鎮痛剤ももらったあと、私はまた尊さんの車に乗って三田に向かう。
二十二時過ぎにマンションに着く頃には、熱は四十度近くまで上がっていて、息も絶え絶えな感じになっていた。
「空腹で薬飲むの良くないから、とりあえずうどん食え」
そう言って、尊さんはコンビニで買ったらしい、アルミの容器に入った鍋焼きうどんを作ってくれる。
「……食べたくない……」
「あとで何でも言う事聞くから、頼むから食え」
「うー……」
私はおでこに冷感ジェルをつけたまま、ノロノロとお箸を手に取ってうどんを食べ始める。
熱々のままだと猫舌な私が食べづらいと思ってか、うどんはスープ皿に移されてあった。
尊さんは自分のご飯をどうするんだろう? と思っていたら、家政婦さんが作り置きした物を温めている。
「食べるか?」
京風の煮物やほうれん草のごま和え、豆腐ハンバーグを見せられたけれど、私は「んーん」と首を横に振った。
いつもなら喜んで食べていたけれど、今は喉を通りそうにない。
なんとかうどんを完食して薬を飲んだあと、歯を磨いてからお手洗いに行き、ベッドに潜り込んだ。
保冷剤をタオルで巻いた物を頭に乗せると、ちょっと楽になったように感じる。
「おやすみ。仕事は一週間は休めよ。熱が下がっても感染力が低くなる訳じゃない。朱里が仕事に責任を持ってるのは分かるけど、他の人のためにも休んでくれ」
「……はい」
部長としてハッキリと言われ、私は頷く。
「……せっかく実験室使う段階になったのになぁ……」
ボソッと呟くと、尊さんが頭を撫でてくる。
「これが最後じゃないだろ」
言われて、私は小さく頷いた。
「あと、これ」
チリンと音がしたかと思うと、尊さんはポケットから小さなベルを出して枕元に置いた。
「フェリシアに音声で命令出すのもしんどいと思うから、何かあったら鳴らしてくれ」
私用の部屋には、いつの間にか尊さんがスマートスピーカーを設置してくれていた。
でも確かに今の声だと命令するにも不明瞭な声しか出ないので、最悪【すみません、何を言っているのか分かりません】と言われてしまう。つらすぎる。
「……執事みたい」
「お望みならコスプレするけど、そん時は朱里もメイドさんやってくれ。勿論、元気な時に」
「私もか」
思わず突っ込むと、尊さんは小さく笑った。
「おやすみ」
そのあと私の頭を撫で、部屋を出ようとする。
「……尊さん」
「ん?」
常夜灯のみの暗い部屋のなか、廊下のライトを浴びた彼が振り向く。
「……うつしたらごめんなさい」
「全然」
彼はクスッと笑ったあと、部屋を出ていった。
そのあと少し眠ったけれど、酷い寒気と腹痛とで地獄のような苦痛を味わった。
あまりにつらくてちょっぴり泣いてしまい、余計に洟をかむ羽目になる。
さらにつらいのは、本当は寝ていたいのに、高級ベッドを汚したくなくて、頻繁に起きてはトイレに向かわないといけない事だ。
尊さんは書斎にいたけれど、ちょいちょい私の様子を見に部屋を訪れていた。
「……もういいですよ。尊さんは明日も仕事あるんですし、私に構わないで」
お互いマスクをしているものの、彼にうつしたらと思うと申し訳ない。
「明日、町田さんが来たら必要な物を買ってもらってくれ」
「……町田さん?」
「家政婦さんの、町田優子さん」
「ん……」
尊さんは頷いた私の首筋に手を這わせ、「まだ熱いな」と呟く。
そのあとベッドに座り、私の手を握り、髪を撫でてきた。
「早くよくなりますように」
祈るように言ったあと、尊さんはボソッと呟いた。
「俺がインフルになれば良かったのに」
その言葉を聞き、私は首を横に振り、力の入らない手で彼の手を握る。
「……ていうか、タイミング的に朱里にインフルうつしたの、田村っぽいよな。あいつカフェでも少し咳してたし。その前は上村家に行ったけど、誰も体調悪そうにしてなかったもんな」
忌々しげに言ったあと、尊さんは舌打ちする。
かすれた声で何か言おうと思ったけれど、尊さんは左手でそっと私の腕に触れてきた。
「悪い。無理して話さなくていいと言っておきながら、話しかけちまったな。あとで楽になったらじっくり話そう。今は声を出すのもつらいと思うから、休んでいてくれ」
「ん……」
彼の厚意に甘え、私は目を閉じてシートに身を預ける。
そのあと病院について診察を受けたあと、インフルと診断された。
インフルの薬や解熱剤、ついでに鎮痛剤ももらったあと、私はまた尊さんの車に乗って三田に向かう。
二十二時過ぎにマンションに着く頃には、熱は四十度近くまで上がっていて、息も絶え絶えな感じになっていた。
「空腹で薬飲むの良くないから、とりあえずうどん食え」
そう言って、尊さんはコンビニで買ったらしい、アルミの容器に入った鍋焼きうどんを作ってくれる。
「……食べたくない……」
「あとで何でも言う事聞くから、頼むから食え」
「うー……」
私はおでこに冷感ジェルをつけたまま、ノロノロとお箸を手に取ってうどんを食べ始める。
熱々のままだと猫舌な私が食べづらいと思ってか、うどんはスープ皿に移されてあった。
尊さんは自分のご飯をどうするんだろう? と思っていたら、家政婦さんが作り置きした物を温めている。
「食べるか?」
京風の煮物やほうれん草のごま和え、豆腐ハンバーグを見せられたけれど、私は「んーん」と首を横に振った。
いつもなら喜んで食べていたけれど、今は喉を通りそうにない。
なんとかうどんを完食して薬を飲んだあと、歯を磨いてからお手洗いに行き、ベッドに潜り込んだ。
保冷剤をタオルで巻いた物を頭に乗せると、ちょっと楽になったように感じる。
「おやすみ。仕事は一週間は休めよ。熱が下がっても感染力が低くなる訳じゃない。朱里が仕事に責任を持ってるのは分かるけど、他の人のためにも休んでくれ」
「……はい」
部長としてハッキリと言われ、私は頷く。
「……せっかく実験室使う段階になったのになぁ……」
ボソッと呟くと、尊さんが頭を撫でてくる。
「これが最後じゃないだろ」
言われて、私は小さく頷いた。
「あと、これ」
チリンと音がしたかと思うと、尊さんはポケットから小さなベルを出して枕元に置いた。
「フェリシアに音声で命令出すのもしんどいと思うから、何かあったら鳴らしてくれ」
私用の部屋には、いつの間にか尊さんがスマートスピーカーを設置してくれていた。
でも確かに今の声だと命令するにも不明瞭な声しか出ないので、最悪【すみません、何を言っているのか分かりません】と言われてしまう。つらすぎる。
「……執事みたい」
「お望みならコスプレするけど、そん時は朱里もメイドさんやってくれ。勿論、元気な時に」
「私もか」
思わず突っ込むと、尊さんは小さく笑った。
「おやすみ」
そのあと私の頭を撫で、部屋を出ようとする。
「……尊さん」
「ん?」
常夜灯のみの暗い部屋のなか、廊下のライトを浴びた彼が振り向く。
「……うつしたらごめんなさい」
「全然」
彼はクスッと笑ったあと、部屋を出ていった。
そのあと少し眠ったけれど、酷い寒気と腹痛とで地獄のような苦痛を味わった。
あまりにつらくてちょっぴり泣いてしまい、余計に洟をかむ羽目になる。
さらにつらいのは、本当は寝ていたいのに、高級ベッドを汚したくなくて、頻繁に起きてはトイレに向かわないといけない事だ。
尊さんは書斎にいたけれど、ちょいちょい私の様子を見に部屋を訪れていた。
「……もういいですよ。尊さんは明日も仕事あるんですし、私に構わないで」
お互いマスクをしているものの、彼にうつしたらと思うと申し訳ない。
「明日、町田さんが来たら必要な物を買ってもらってくれ」
「……町田さん?」
「家政婦さんの、町田優子さん」
「ん……」
尊さんは頷いた私の首筋に手を這わせ、「まだ熱いな」と呟く。
そのあとベッドに座り、私の手を握り、髪を撫でてきた。
「早くよくなりますように」
祈るように言ったあと、尊さんはボソッと呟いた。
「俺がインフルになれば良かったのに」
その言葉を聞き、私は首を横に振り、力の入らない手で彼の手を握る。
「……ていうか、タイミング的に朱里にインフルうつしたの、田村っぽいよな。あいつカフェでも少し咳してたし。その前は上村家に行ったけど、誰も体調悪そうにしてなかったもんな」
忌々しげに言ったあと、尊さんは舌打ちする。
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