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北海道旅行 編
そういうトコ長所だよな
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「一瞬焦りはしたかな。二人で飲んでた時に『上村さん、美人ですよね』って言われたけど、特に何も言わずにいた。付き合ってる事を秘密にしてるのに、墓穴掘る事はねぇからな。そう言われていたから神の気持ちは知ってたけど、まさか本人の前であんだけ暴露すると思わなかった」
「物凄く暴露してましたね。往来の真ん中で……」
当時を思い出し、私は溜め息をつく。
「申し訳なさはあるけど、譲るつもりはねぇ。あいつも『僕の気持ちを知っておきながら』って恨んでるかもしれないけど、そう根に持つ奴じゃないと信じてる」
「ハイスペのいい男は、みっともなく嫉妬しないもんですよね。大人の分別を持ってそう」
勝手な見解を口にした私は、いつもニコニコしている神くんの笑顔を思い出す。
「そうなんだけどな……」
尊さんは溜め息をつき、チャポ……と音を立てて足でお湯をかく。
「ハイスペだからこそ、諦めきれずに本気で手に入れようとしてきた時が怖ぇな、って思ってる」
「やめてくださいよ~! 怖い」
私は思わず両手で拳を握り、ポコポコと自分の太腿を打つ。
「……まぁ、大丈夫と思いたいけどな。あいつと俺の仲っていうより、神は朱里の気持ちを第一に考えると思う。何が朱里にとって幸せかを見極められたなら、……下手な事はしないんじゃないかな」
尊さんの言葉を聞いていると、神くんが凄く私を想っているように感じられて、なんとも言えなくなる。
神くんは私の前ではいつも明るくて素直ないい後輩で、それ以上にも以下にも思った事はなかった。
もっと言えば、彼は皆の前で怒ったりふてくされたりした事がなく、仕事もスイスイこなし、いやみがなくて本当に愛されキャラだ。
本当は嫌な事やムカつく事だってあるはずなのに、完璧に感情をコントロールしている。
失礼な事をいうと、そういう理由があるから、神くんに人間くささを感じなかった。
だから無意識に『完璧すぎて怖い』と思い、恋愛対象に見る事ができなかったんだろう。
考えていると、尊さんがこめかみにキスしてきた。
「この件、一旦保留にしようか。今は二人で温泉に来てるんだし」
言われて、ハッとする。
涼さんの話は雑談としてアリだけど、私を好きだと言った神くんの話題は適していると言いがたい。
「そうですね。ごめんなさい。カニの事だけ考えます」
「カニかよ」
あからさまに話題を変えたけれど、笑いの方向に持っていったからか、尊さんはフハッと力が抜けたように笑ってくれた。
そのあと、ハッとして付け加える。
「予約する時に、勝手にタラバにしたけど、大丈夫だったか? 毛蟹もあったんだけど」
「タラバ大好きです! カニに貴賤なし! どこからでも掛かってこい!」
私は「むんっ」と気合いを入れ、両手でピースサインをし、ファイティングポーズをとってみせる。
「カニ戦士かよ……。ま、良かった。多分朱里はなんでも喜んでくれるとは思ってたけど、一言聞いておけば良かったな」
「いえいえ、本当に連れてきてもらえただけでも御の字ですし、用意された物はなんでも美味しく食べます」
「そっか。なら良かった。……朱里って、そういうトコ長所だよな」
「ん?」
「や、好き嫌いなくなんでも食べられるって、ご馳走する側から見てすげぇ安心する」
「そう言ってもらえて良かったです。私もご飯作る時、好き嫌いが少ないと気を遣わずに作れるので安心します」
言いながら、私は一瞬昭人を思い出してしまっていた。
付き合っていた当時、昭人に手料理を作ったけど、彼はいつも好き嫌いを言う人だった。
野菜炒めにピーマンが入っていたら、ピーマンだけを除けたり、『お前なんでも食べるだろ』と言って私のお皿にのせてきた。
そうされて、『私が作った料理なのに、傷付くって思わないのかな』とモヤモヤしながら、深く考えないように食べていた。
一緒に外食しても味付けが濃いだの薄いだの言って、作り手へのリスペクトも感じられないし、ホールスタッフへの態度も尊大で嫌だった。
だから、尊さんみたいに色んな意味で気持ちよくご飯を食べられる人って、本当にありがたい。
「そろそろ行くか」
尊さんがチラッと腕時計を見て言い、私は「はい」と頷く。
足湯の場所にタオルがあったので足を拭き、かなりポカポカ温まった体で館内に戻る。
時刻は十六時すぎで、ひとっ風呂浴びれるといえばいける。
(でも部屋の露天入ったら、ゴングが鳴りそうで怖い……)
一晩経って今は落ち着いているものの、昨晩焦らされた分、一度始まってしまったら最後までしてほしくなる。
(きっと尊さんも最後までしたいって思ってくれてる……と思うし)
そう思った私は、明るく言った。
「物凄く暴露してましたね。往来の真ん中で……」
当時を思い出し、私は溜め息をつく。
「申し訳なさはあるけど、譲るつもりはねぇ。あいつも『僕の気持ちを知っておきながら』って恨んでるかもしれないけど、そう根に持つ奴じゃないと信じてる」
「ハイスペのいい男は、みっともなく嫉妬しないもんですよね。大人の分別を持ってそう」
勝手な見解を口にした私は、いつもニコニコしている神くんの笑顔を思い出す。
「そうなんだけどな……」
尊さんは溜め息をつき、チャポ……と音を立てて足でお湯をかく。
「ハイスペだからこそ、諦めきれずに本気で手に入れようとしてきた時が怖ぇな、って思ってる」
「やめてくださいよ~! 怖い」
私は思わず両手で拳を握り、ポコポコと自分の太腿を打つ。
「……まぁ、大丈夫と思いたいけどな。あいつと俺の仲っていうより、神は朱里の気持ちを第一に考えると思う。何が朱里にとって幸せかを見極められたなら、……下手な事はしないんじゃないかな」
尊さんの言葉を聞いていると、神くんが凄く私を想っているように感じられて、なんとも言えなくなる。
神くんは私の前ではいつも明るくて素直ないい後輩で、それ以上にも以下にも思った事はなかった。
もっと言えば、彼は皆の前で怒ったりふてくされたりした事がなく、仕事もスイスイこなし、いやみがなくて本当に愛されキャラだ。
本当は嫌な事やムカつく事だってあるはずなのに、完璧に感情をコントロールしている。
失礼な事をいうと、そういう理由があるから、神くんに人間くささを感じなかった。
だから無意識に『完璧すぎて怖い』と思い、恋愛対象に見る事ができなかったんだろう。
考えていると、尊さんがこめかみにキスしてきた。
「この件、一旦保留にしようか。今は二人で温泉に来てるんだし」
言われて、ハッとする。
涼さんの話は雑談としてアリだけど、私を好きだと言った神くんの話題は適していると言いがたい。
「そうですね。ごめんなさい。カニの事だけ考えます」
「カニかよ」
あからさまに話題を変えたけれど、笑いの方向に持っていったからか、尊さんはフハッと力が抜けたように笑ってくれた。
そのあと、ハッとして付け加える。
「予約する時に、勝手にタラバにしたけど、大丈夫だったか? 毛蟹もあったんだけど」
「タラバ大好きです! カニに貴賤なし! どこからでも掛かってこい!」
私は「むんっ」と気合いを入れ、両手でピースサインをし、ファイティングポーズをとってみせる。
「カニ戦士かよ……。ま、良かった。多分朱里はなんでも喜んでくれるとは思ってたけど、一言聞いておけば良かったな」
「いえいえ、本当に連れてきてもらえただけでも御の字ですし、用意された物はなんでも美味しく食べます」
「そっか。なら良かった。……朱里って、そういうトコ長所だよな」
「ん?」
「や、好き嫌いなくなんでも食べられるって、ご馳走する側から見てすげぇ安心する」
「そう言ってもらえて良かったです。私もご飯作る時、好き嫌いが少ないと気を遣わずに作れるので安心します」
言いながら、私は一瞬昭人を思い出してしまっていた。
付き合っていた当時、昭人に手料理を作ったけど、彼はいつも好き嫌いを言う人だった。
野菜炒めにピーマンが入っていたら、ピーマンだけを除けたり、『お前なんでも食べるだろ』と言って私のお皿にのせてきた。
そうされて、『私が作った料理なのに、傷付くって思わないのかな』とモヤモヤしながら、深く考えないように食べていた。
一緒に外食しても味付けが濃いだの薄いだの言って、作り手へのリスペクトも感じられないし、ホールスタッフへの態度も尊大で嫌だった。
だから、尊さんみたいに色んな意味で気持ちよくご飯を食べられる人って、本当にありがたい。
「そろそろ行くか」
尊さんがチラッと腕時計を見て言い、私は「はい」と頷く。
足湯の場所にタオルがあったので足を拭き、かなりポカポカ温まった体で館内に戻る。
時刻は十六時すぎで、ひとっ風呂浴びれるといえばいける。
(でも部屋の露天入ったら、ゴングが鳴りそうで怖い……)
一晩経って今は落ち着いているものの、昨晩焦らされた分、一度始まってしまったら最後までしてほしくなる。
(きっと尊さんも最後までしたいって思ってくれてる……と思うし)
そう思った私は、明るく言った。
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