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北海道旅行 編
朝食
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「大丈夫ですか?」
尋ねると、お婆さんは自分の足に力を込めて立ち直し、弱々しく笑った。
「ごめんなさい。ありがとう。駄目ね、歳をとってくると目眩を起こしてしまったり、脚が弱くなったりで」
「いえいえ。朝食、きっと美味しいでしょうから、モリモリ食べて栄養をつけてください」
そう言うと、お婆さんはおかしそうに笑った。
「確かに、ここの朝食は美味しいわよ。私、連泊してるの」
「お墨付きで良かったです。私は今日チェックアウトなんですが、どうか奥さんも良い旅を」
微笑んで会釈すると、彼女も小さく頭を下げ、再びラウンジに向かった。
部屋に戻ると尊さんは洗面所にいて、顔を洗い終えたところだった。
「おー、早いな」
「おはようございます。んー……」
私は彼に抱きつき、首に両手を回すとチュッチュッとキスをする。
「お風呂入りました?」
「いや、まだ」
「じゃあ、ご飯までに時間があるから、ちょっと入りましょう」
「OK」
露天風呂で温まったあと、私たちは朝食会場に向かった。
昨日の『仙食庵』に行くと場所が違うみたいで、スタッフに『喜庵』に案内された。
『仙食庵』ではバイキングをしているらしく、そちらもとても気になるけれど、私たちはスペシャルな朝食らしい。
「わぁ……」
案内されたのは木製のテーブルセットで、近くにはシルクロードの番組で出てきそうな楽器や、不思議な形の駒がセットされてあるチェス盤があった。
「ここのオーナーが、こういう物を集めるのが好きみたいだ」
「そうなんですね。不思議な物が沢山あって、博物館みたい」
周囲を気にしつつも、一番目がいくのは卓上だ。
左手前には伏せられたお茶碗、奥にはご飯が入った小さなお釜があり、一人用の小さな鉄鍋には湯豆腐もある。
さらに宝箱みたいな箱もあり、中に何があるのかめちゃくちゃ気になってしまった。
箱は貝細工のような繊細な模様で、ピンクと白の色使いで牡丹の花が描かれてあり、本当に綺麗だ。
「尊さん、お宝ボックス開けてもいいかな?」
「まだ加熱してないから、いいんじゃないか?」
言われて開けてみると、木の板の上に鮭の切り身とチンゲン菜、帆立があった。
「これ、どうやって加熱するんですか?」
尋ねると、尊さんはニヤッと笑った。
「あとからのお楽しみ」
「えー」
楽しみでニヤニヤしていると、スタッフが来て食前のフルーツ酢を出してくれた。
酸っぱ美味しいそれを飲んでから食べたのは、ガラスのボウルに入ったサラダ。
わさびのドレッシングが掛かっているらしく、底の方にはコーンも入っていて、甘くて美味しい。
そしてスタッフが例の宝箱に何かを入れて蓋を閉じ、中でもうもうと水蒸気が立ち始めた。
何を入れたか尋ねると、乾燥剤に水を掛けて発熱反応を起こし、それで中に入っている物を蒸しているというので、思わずうなってしまった。
そのあと湯豆腐やたっぷりのなめこと三つ葉が入ったお味噌汁、そして山菜のおこわを食べて幸せいっぱいになっているところ、物凄い物がきた。
「すっごーい! プルプル!」
運ばれてきたのは、とても大きくてプルプルな、できたての玉子焼きだ。
綺麗な色をしていて、ホカホカと湯気が立って、こんなに美味しそうな玉子焼きを見た事がない。
満腹になったあと、デザートに果物と温かい自家製プリンが出され、ホットコーヒーで締めとなり、私たちはお腹ポンポンになって部屋に戻ったのだった。
歯磨きをしたあと、まだ時間はあるのでもう一回露天風呂に入ろうか迷う。
「チェックアウトに合わせて、タクシーは呼んである。荷造りしてすぐ出られるようにして、もう一回入っておくか」
「はい!」
尊さんに言われ、私はまた螺旋階段を上がり、すっぽんと作務衣を脱いで露天風呂に入った。
尋ねると、お婆さんは自分の足に力を込めて立ち直し、弱々しく笑った。
「ごめんなさい。ありがとう。駄目ね、歳をとってくると目眩を起こしてしまったり、脚が弱くなったりで」
「いえいえ。朝食、きっと美味しいでしょうから、モリモリ食べて栄養をつけてください」
そう言うと、お婆さんはおかしそうに笑った。
「確かに、ここの朝食は美味しいわよ。私、連泊してるの」
「お墨付きで良かったです。私は今日チェックアウトなんですが、どうか奥さんも良い旅を」
微笑んで会釈すると、彼女も小さく頭を下げ、再びラウンジに向かった。
部屋に戻ると尊さんは洗面所にいて、顔を洗い終えたところだった。
「おー、早いな」
「おはようございます。んー……」
私は彼に抱きつき、首に両手を回すとチュッチュッとキスをする。
「お風呂入りました?」
「いや、まだ」
「じゃあ、ご飯までに時間があるから、ちょっと入りましょう」
「OK」
露天風呂で温まったあと、私たちは朝食会場に向かった。
昨日の『仙食庵』に行くと場所が違うみたいで、スタッフに『喜庵』に案内された。
『仙食庵』ではバイキングをしているらしく、そちらもとても気になるけれど、私たちはスペシャルな朝食らしい。
「わぁ……」
案内されたのは木製のテーブルセットで、近くにはシルクロードの番組で出てきそうな楽器や、不思議な形の駒がセットされてあるチェス盤があった。
「ここのオーナーが、こういう物を集めるのが好きみたいだ」
「そうなんですね。不思議な物が沢山あって、博物館みたい」
周囲を気にしつつも、一番目がいくのは卓上だ。
左手前には伏せられたお茶碗、奥にはご飯が入った小さなお釜があり、一人用の小さな鉄鍋には湯豆腐もある。
さらに宝箱みたいな箱もあり、中に何があるのかめちゃくちゃ気になってしまった。
箱は貝細工のような繊細な模様で、ピンクと白の色使いで牡丹の花が描かれてあり、本当に綺麗だ。
「尊さん、お宝ボックス開けてもいいかな?」
「まだ加熱してないから、いいんじゃないか?」
言われて開けてみると、木の板の上に鮭の切り身とチンゲン菜、帆立があった。
「これ、どうやって加熱するんですか?」
尋ねると、尊さんはニヤッと笑った。
「あとからのお楽しみ」
「えー」
楽しみでニヤニヤしていると、スタッフが来て食前のフルーツ酢を出してくれた。
酸っぱ美味しいそれを飲んでから食べたのは、ガラスのボウルに入ったサラダ。
わさびのドレッシングが掛かっているらしく、底の方にはコーンも入っていて、甘くて美味しい。
そしてスタッフが例の宝箱に何かを入れて蓋を閉じ、中でもうもうと水蒸気が立ち始めた。
何を入れたか尋ねると、乾燥剤に水を掛けて発熱反応を起こし、それで中に入っている物を蒸しているというので、思わずうなってしまった。
そのあと湯豆腐やたっぷりのなめこと三つ葉が入ったお味噌汁、そして山菜のおこわを食べて幸せいっぱいになっているところ、物凄い物がきた。
「すっごーい! プルプル!」
運ばれてきたのは、とても大きくてプルプルな、できたての玉子焼きだ。
綺麗な色をしていて、ホカホカと湯気が立って、こんなに美味しそうな玉子焼きを見た事がない。
満腹になったあと、デザートに果物と温かい自家製プリンが出され、ホットコーヒーで締めとなり、私たちはお腹ポンポンになって部屋に戻ったのだった。
歯磨きをしたあと、まだ時間はあるのでもう一回露天風呂に入ろうか迷う。
「チェックアウトに合わせて、タクシーは呼んである。荷造りしてすぐ出られるようにして、もう一回入っておくか」
「はい!」
尊さんに言われ、私はまた螺旋階段を上がり、すっぽんと作務衣を脱いで露天風呂に入った。
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