262 / 781
北海道旅行 編
幸せになるって、忙しいな
しおりを挟む
「んああぁっ、やっ、あぁああぁっ!」
目の前がチカチカと明滅するような激しい悦楽を味わった私は、ただ必死に尊さんにしがみつくしかできない。
(もう駄目……っ、死ぬっ、死んじゃう……っ)
頭の中が真っ白になってフワーッと意識が遠くなりかけた時、尊さんが低くうめき、被膜に射精した。
(出し……、てる……)
トロトロとした頭でそう感じた私は、尊さんにうっとりと笑いかけ、脱力した。
「おっと」
そのまま後ろに倒れる私を、とっさに尊さんが抱き留める。
意識はボーッとしていて、もう動く事ができない。
気持ちよくて、お腹いっぱいでお酒も飲んで、幸せで、幸せで、幸せで。
「死んでもいいかも……」
ポソッと呟いた時、彼が覆い被さって抱き締めてきた。
「…………その時は俺も死ぬよ」
甘い声で囁かれ、私はふにゃりと笑う。
「……だーめ。……尊さんは私が幸せにするんです。……たくさん笑わせて、尊さんの子供……、産んで……、…………お腹いっぱい……に」
そこまで言い、私は力尽きてスヤァ……、と眠ってしまった。
「……最後まで言えよ。こんな時まで腹一杯かよ」
すこやかに眠る朱里を見て俺はクスクス笑い、彼女の髪を撫でつけると、汗ばんだ額にキスをした。
(強行軍であちこち回ったから、疲れてもしゃーねぇか)
彼女との初めての旅行が嬉しくて、俺も柄になく張り切っちまった。
(たらふく食わせて観光して、温泉にセックス……っていったら、そりゃ疲れるわな。……で、帰ったら仕事だよ)
俺はチラッと職場への土産について考え、溜め息をつく。
「……夢みてぇな日々だったな」
ベッドから下りた俺は、いつものように洗面所でタオルをお湯で濡らし、固く絞る。
そして朱里の体を拭き、汗を掻いた自分の体も拭いてから下着を穿いた。
そのあと朱里を抱き上げてもう一つのベッドに移り、照明を落とす。
(そーいや、旅行に出てから、一回も怜香の事を思いだして鬱屈とした気持ちにならなかったな)
一月六日にあいつに引導を渡してから、時々弁護士から報告を受け取っていた。
会社で働き、弁護士からの報告にも事務的に答え、あとは朱里と楽しく過ごそうと努め続け、今までの損なわれ続けた人生に比べたら、幸せすぎて嘘みたいな日々を送っている。
「…………本当に、今なら死んでもいいのかもな」
呟いたあと、俺は頬笑んで朱里の額にキスをする。
「……でも、まだだ」
呟き、母と妹の顔を思い浮かべる。
(二人の分まで幸せになって、理想の家庭を築いて、大往生するまでは、まだ)
それから、これからすべき事を思いだして苦笑いした。
祖父さんも、ちえり叔母さんも、朱里に会いたがっている。
兄貴とエミリが結婚するまで後押ししないといけないし、涼にも会いたがってる。
「……幸せになるって、忙しいな」
四月からは副社長になって、あくせく働かなければならない。
色々厳しい事も起こるだろうし、ずっと平坦な道を歩ける訳じゃない。でも――。
「……頑張ってこうな。お前がいるなら頑張れる」
俺は腕の中でスヤスヤ眠るお姫様に囁き、目を閉じた。
**
あれだけ疲れて眠ったのに、興奮しているからか、翌朝は早めに起きてしまった。
尊さんは眠っていたので寝顔を写真に撮り、そっと部屋を出て朝のラウンジに向かった。
(おっ、昨日と置いてる物が違う)
割と早朝に起きてるというのに、セルフサービスの所にはすでにミニサイズの焼きたてパンが置かれてあった。
(あとで朝食あるけど……。これだけ小さいなら一個だけ)
そう思い、私はミニクロワッサンをお皿にとり、席に座ってモグモグ食べる。
(朝風呂にも入りたいな。夜とはまた違った趣があるだろうし)
食べ終わったあと、ラウンジの雰囲気も堪能したし、部屋に戻る事にした。
ラウンジを出ようとした時、品のいいお婆さんがラウンジに向かって歩いてくる。
「危ないっ!」
すれ違う寸前にお婆さんがバランスを崩してしまい、私はとっさに彼女を抱き留めた。
痩せていてもそれなりの体重はあるので、足腰に力を込めて彼女に怪我をさせないよう気をつける。
目の前がチカチカと明滅するような激しい悦楽を味わった私は、ただ必死に尊さんにしがみつくしかできない。
(もう駄目……っ、死ぬっ、死んじゃう……っ)
頭の中が真っ白になってフワーッと意識が遠くなりかけた時、尊さんが低くうめき、被膜に射精した。
(出し……、てる……)
トロトロとした頭でそう感じた私は、尊さんにうっとりと笑いかけ、脱力した。
「おっと」
そのまま後ろに倒れる私を、とっさに尊さんが抱き留める。
意識はボーッとしていて、もう動く事ができない。
気持ちよくて、お腹いっぱいでお酒も飲んで、幸せで、幸せで、幸せで。
「死んでもいいかも……」
ポソッと呟いた時、彼が覆い被さって抱き締めてきた。
「…………その時は俺も死ぬよ」
甘い声で囁かれ、私はふにゃりと笑う。
「……だーめ。……尊さんは私が幸せにするんです。……たくさん笑わせて、尊さんの子供……、産んで……、…………お腹いっぱい……に」
そこまで言い、私は力尽きてスヤァ……、と眠ってしまった。
「……最後まで言えよ。こんな時まで腹一杯かよ」
すこやかに眠る朱里を見て俺はクスクス笑い、彼女の髪を撫でつけると、汗ばんだ額にキスをした。
(強行軍であちこち回ったから、疲れてもしゃーねぇか)
彼女との初めての旅行が嬉しくて、俺も柄になく張り切っちまった。
(たらふく食わせて観光して、温泉にセックス……っていったら、そりゃ疲れるわな。……で、帰ったら仕事だよ)
俺はチラッと職場への土産について考え、溜め息をつく。
「……夢みてぇな日々だったな」
ベッドから下りた俺は、いつものように洗面所でタオルをお湯で濡らし、固く絞る。
そして朱里の体を拭き、汗を掻いた自分の体も拭いてから下着を穿いた。
そのあと朱里を抱き上げてもう一つのベッドに移り、照明を落とす。
(そーいや、旅行に出てから、一回も怜香の事を思いだして鬱屈とした気持ちにならなかったな)
一月六日にあいつに引導を渡してから、時々弁護士から報告を受け取っていた。
会社で働き、弁護士からの報告にも事務的に答え、あとは朱里と楽しく過ごそうと努め続け、今までの損なわれ続けた人生に比べたら、幸せすぎて嘘みたいな日々を送っている。
「…………本当に、今なら死んでもいいのかもな」
呟いたあと、俺は頬笑んで朱里の額にキスをする。
「……でも、まだだ」
呟き、母と妹の顔を思い浮かべる。
(二人の分まで幸せになって、理想の家庭を築いて、大往生するまでは、まだ)
それから、これからすべき事を思いだして苦笑いした。
祖父さんも、ちえり叔母さんも、朱里に会いたがっている。
兄貴とエミリが結婚するまで後押ししないといけないし、涼にも会いたがってる。
「……幸せになるって、忙しいな」
四月からは副社長になって、あくせく働かなければならない。
色々厳しい事も起こるだろうし、ずっと平坦な道を歩ける訳じゃない。でも――。
「……頑張ってこうな。お前がいるなら頑張れる」
俺は腕の中でスヤスヤ眠るお姫様に囁き、目を閉じた。
**
あれだけ疲れて眠ったのに、興奮しているからか、翌朝は早めに起きてしまった。
尊さんは眠っていたので寝顔を写真に撮り、そっと部屋を出て朝のラウンジに向かった。
(おっ、昨日と置いてる物が違う)
割と早朝に起きてるというのに、セルフサービスの所にはすでにミニサイズの焼きたてパンが置かれてあった。
(あとで朝食あるけど……。これだけ小さいなら一個だけ)
そう思い、私はミニクロワッサンをお皿にとり、席に座ってモグモグ食べる。
(朝風呂にも入りたいな。夜とはまた違った趣があるだろうし)
食べ終わったあと、ラウンジの雰囲気も堪能したし、部屋に戻る事にした。
ラウンジを出ようとした時、品のいいお婆さんがラウンジに向かって歩いてくる。
「危ないっ!」
すれ違う寸前にお婆さんがバランスを崩してしまい、私はとっさに彼女を抱き留めた。
痩せていてもそれなりの体重はあるので、足腰に力を込めて彼女に怪我をさせないよう気をつける。
205
あなたにおすすめの小説
結婚式の晩、「すまないが君を愛することはできない」と旦那様は言った。
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
「俺には愛する人がいるんだ。両親がどうしてもというので仕方なく君と結婚したが、君を愛することはできないし、床を交わす気にもなれない。どうか了承してほしい」
結婚式の晩、新妻クロエが夫ロバートから要求されたのは、お飾りの妻になることだった。
「君さえ黙っていれば、なにもかも丸くおさまる」と諭されて、クロエはそれを受け入れる。そして――
〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
帰ってきた兄の結婚、そして私、の話
鳴哉
恋愛
侯爵家の養女である妹 と
侯爵家の跡継ぎの兄 の話
短いのでサクッと読んでいただけると思います。
読みやすいように、5話に分けました。
毎日2回、予約投稿します。
2025.12.24
誤字修正いたしました。
ご指摘いただき、ありがとうございました。
今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。
有賀冬馬
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。
特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。
けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。
彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下!
「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。
私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる