【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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女子会 編

友達のなりかた

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「その点、二人はいいわぁ~。こういう、偶然の出会いを待ってたの! 自分がいつも過ごしている環境だと、他の会社に勤めている女の子となかなか出会えないじゃない」

「……そ、そんな大したもんじゃないですが……」

 恐縮すると、春日さんは「やだー!」と言って私の肩をどーん! と押してきた。

「副社長と恋愛してる秘書、部長と恋愛してる社員! 漫画みたいじゃない!」

「そんなの、三ノ宮重工にもいると思いますけど?」

 エミリさんは首を傾げ、スコーンをサクサク囓りながら言う。

「自分の会社は嫌なの。下手したら泥沼化して、聞きたくもない報告を聞く羽目になるわ」

 うっ……、き、気をつけよう……。

「惚れた腫れたは、安全圏にいて酒の肴に聞く程度が丁度いいのよ」

「確かに、一理ありますね。私も社内恋愛は自分の事で精一杯で、あとはまったく関係ない人の話を聞くぐらいが丁度いいかな。……あっ、朱里さんと尊さんは別ね」

 エミリさんが言い、私も「確かに……」と流されて頷く。

「……っていうか、風磨さんお元気ですか?」

 エミリさんに尋ねると、彼女はニコッと笑った。

「元気よ~。一月の事があってから、まぁちょっとは落ち込んでいたけど、『尊だけに重荷を背負わせる訳にいかない。俺は兄だから』って言ってたわ。あの人、ちょっと流されやすくて頼りないところもあるけど、責任感はあるの」

 彼女の微笑みの奥に、風磨さんへの無限の信頼感を感じ、私は思わずニコニコしてしまう。

「朱里さんの事も気にしていたわ。『ぜひまた食事会でも開いて、尊ともども仲良くなりたい』って」

「はい、ぜひ!」

 ニッコリ笑って頷くと、エミリさんがニヤリと笑って付け加えた。

「もし食べたい物があるなら教えてね。秘書の腕を遺憾なく発揮して、オススメの店をリザーブしておくから」

「えっ? た、食べたい物?」

 そこまで食い意地張ってる顔をしてるかな? と思った時、エミリさんがクスクス笑った。

「風磨さんが尊さんに、『朱里さんとも仲良くしたいんだけど』って言ったら、なんだか色々文句言われたみたいだけど、最終的に『食い気で釣れる』って教えてもらったみたい。だからその点は任されてるわ」

「もおお……!」

 尊さんに食いしん坊を共有され、私は羞恥でバシバシと太腿を叩く。

 私の様子を見て、春日さんは笑い転げていた。

「可愛い……! ねえ、松阪牛のハンバーグあげるって言ったら友達になってくれる?」

「もー! 弄らないでください! ハンバーグは食べたいですけど、バーグ抜きでも友達にはなりますよ。……ってか、こうやってお茶してる時点で友達じゃないですか」

 そう言うと、春日さんはキョトンとした顔をしたあと、ニヤついて横を向いてしまった。

「そ、そんな……、何もしてないのに友達になってもらえるなんて、思ってないんだからね」

「ツンデレか」

 私は思わず突っ込んでしまい、エミリさんが手を打ち鳴らして笑う。

「……ていうか春日さん、あまりにナチュラルな友達がいないものだから、友達のなりかた、分かってないでしょう」

 指摘すると、彼女はサッと赤面して紅茶を飲み、図星なのを誤魔化す。

「友達になるのに、条件なんてないですからね。暇があったら声を掛けてくれたら一緒に遊びますし、『今日こんなもの食べた』ってメッセージくれてもいいんです。友達になってほしいからって、何か〝もの〟を差しだしたら、損得ありの状態でスタートしてしまいますから、駄目ですからね。何を差しださなくても側にいて、話を聞いて、一緒に笑って泣いてくれる友達がほしいなら、ゼロからスタートしないと」

 ちょっとお説教臭かったかな? と思いつつ春日さんに微笑みかけると、彼女は私を凝視してから、「…………好き」とボソッと呟いた。

「朱里さん、好き! こんな子、今までいなかったわ。あ~~~、なんていい子なの!? ちょっ……、どうしよう。なんか買ってあげたくなった」

「人の話聞いてました?」

 私が突っ込んだあと、エミリさんが笑いながら言う。

「春日さんはこじらせてるなぁ~。……てか、そんな状態で今まで恋愛のほうはどうだったんです?」

 尋ねられ、私を見てソワソワしていた春日さんの動きが、ピタッと止まる。

 そして眉間に名刺でも挟めそうな深い皺を刻み、重たい溜め息をついた。

 まるでロダンの『考える人』のようなポーズで固まってしまい、私はエミリさんと顔を見合わせる。

 彼女はしばし黙っていたけれど、顔を上げて私とエミリさんを指でちょいちょいと呼び寄せると、小声で言った。

「……実は、ダメンズホイホイなの」
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