268 / 778
女子会 編
春日の悩み
しおりを挟む
エミリさんがホールスタッフにアフターヌーンティーの準備を頼んだあと、「元気だった?」と微笑みかけてくる。
「はい。あ、そうだ。先日、尊さんと一緒に札幌に行ってきまして……。ちょっとした物ですが、どうぞ」
私が差しだしたのは、定番の北海道銘菓のお菓子と、尊さんが予約して買っておいた『ボン・ヴィバン』の焼き菓子詰め合わせだ。
女子会があると分かっていた彼は、『お決まりのお菓子に加えて、こういうのもあったほうが喜ぶと思う』と言っていた。さすが、気遣いの人、速水尊……。
「えー? やだ、嬉しい! いいの? 何もしてないのにお土産もらっちゃった」
「ありがとう! 朱里さん。風磨さんと一緒にいただくわ」
二人とも喜んでくれて、私は中身を軽く説明しておく。すると、二人ともめちゃくちゃ感心した顔で頷いた。
「王道お菓子も嬉しいけど、その土地の美味しいパティスリーのお菓子はマジで嬉しいかも。本当に気が利くわね」
春日さんに言われ、私は照れ笑いする。
「あ、いえ。これは尊さんの案なので……。彼にお礼を言ってください。私はただのお渡し役です」
「そうなの? 意外と細やかなのね」
彼女が心底意外……という顔をするので、私は思わず笑ってしまう。
同時に、春日さんの尊さんへの態度の中に、特筆すべきものがなくて少し安心してしまった。
今さらだけど、私が二十六歳、春日さんが二十七歳、エミリさんが二十八歳で、三姉妹みたいな年齢差で、恵や職場の人以外に近い年齢の人とあまり接していない私は、嬉しくてドキドキする。
そのあと、二月といえば苺とチョコレートのアフターヌーンティーが運ばれてきた。
一段目には焼きたてスコーンが三種類、二段目にはローストビーフやスモークサーモンのサンドウィッチ、小さなミニグラタンのパイ、ガラスの器に入った苺と赤ワインのジュレが入ったミニパフェ。
三段目には苺のブラマンジェに苺とその他フルーツのゼリー寄せ、ピンクが可愛い苺のマカロンに、一口サイズの苺のショートケーキ、フランボワーズのケーキ。
女子の夢の憧れと言ってしまってもいいような、可愛いティースタンドを前に、目がハートになってしまいそうだ。
「かんわいぃ~」
「映えね、映え」
「ちょっと、写真撮りましょ」
撮影タイムになって私とエミリさんがスマホを出したところ、おもむろに春日さんが一眼レフを出したので笑ってしまった。
「凄い! 本格的!」
「SNSで見栄を張るなら、写真にも気合い入れないと~」
彼女は言いながら、中腰になって高層階からの眺めを背景にした、ティースタンドを激写した。
撮影タイムが終わったあと、ホテルご自慢のブレンドティーをいただきながら、いざアフターヌーンティーが始まった。
「でも意外。春日さん、SNSとかこだわるタイプなんですね」
苺味のスコーンを食べながら言うと、彼女は首をすくめる。
「私、友達いないから、そういうところで見栄を張るしかないの」
「ええ? 嘘~。春日さんなら絶対に皆の人気者じゃない」
エミリさんが言い、私も「んだ」と頷く。
てっきり笑いをとるための冗談かと思っていたんだけれど、春日さんは困ったように笑い、マカロンをポンと口に放り込んだ。
彼女は口の中の物をモグモグと咀嚼し、紅茶で流し込んでから、お酒を飲んでいる時のような荒っぽい溜め息をつく。
「皆そういう〝補正〟があるのよねぇ。うちって結構大企業じゃない。で、子供の頃から周りの子は『春日ちゃんと仲良くするのよ』って言われてるワケ。そのお陰で喧嘩一つない人生だったわ」
波風がないのはいい事……と思いがちだけど、春日さんには春日さんの苦しみがあるようだ。
「中学生の時、親友が他の女子に囲まれてシクシク泣いてるから、何事かと思って問い詰めてみたら、その子の好きな男子が私に告白して振られたんだって。でも私に悪気がないのは分かってるから、何も言えなくてつらい……って。気まずくなってその子とはなんとなく疎遠になったけど、高校生になっても似たような事があったわ」
美人でモテるがゆえの、苦しみもあったのか……。
「皆、私に遠慮して、言いたい事の一つも言えず、好きな人を取られても何も文句を言えない。……そんな状態で本当の友達なんてできないじゃない」
「……確かに……」
春日さんの悩みを聞き、私は頷く。
「それなりに、取り巻きみたいな友達はいるのよ。でも一緒にいて心安らぐ……って感じではないわね。皆、美人で金持ちの友達しか持ちたがらなくて、会話も〝そういうの〟ばっかり。腹の底が見えないから、一緒にいても何だかつまらなくて」
言ってから、春日さんは私とエミリさんを見てニヤリと笑う。
「はい。あ、そうだ。先日、尊さんと一緒に札幌に行ってきまして……。ちょっとした物ですが、どうぞ」
私が差しだしたのは、定番の北海道銘菓のお菓子と、尊さんが予約して買っておいた『ボン・ヴィバン』の焼き菓子詰め合わせだ。
女子会があると分かっていた彼は、『お決まりのお菓子に加えて、こういうのもあったほうが喜ぶと思う』と言っていた。さすが、気遣いの人、速水尊……。
「えー? やだ、嬉しい! いいの? 何もしてないのにお土産もらっちゃった」
「ありがとう! 朱里さん。風磨さんと一緒にいただくわ」
二人とも喜んでくれて、私は中身を軽く説明しておく。すると、二人ともめちゃくちゃ感心した顔で頷いた。
「王道お菓子も嬉しいけど、その土地の美味しいパティスリーのお菓子はマジで嬉しいかも。本当に気が利くわね」
春日さんに言われ、私は照れ笑いする。
「あ、いえ。これは尊さんの案なので……。彼にお礼を言ってください。私はただのお渡し役です」
「そうなの? 意外と細やかなのね」
彼女が心底意外……という顔をするので、私は思わず笑ってしまう。
同時に、春日さんの尊さんへの態度の中に、特筆すべきものがなくて少し安心してしまった。
今さらだけど、私が二十六歳、春日さんが二十七歳、エミリさんが二十八歳で、三姉妹みたいな年齢差で、恵や職場の人以外に近い年齢の人とあまり接していない私は、嬉しくてドキドキする。
そのあと、二月といえば苺とチョコレートのアフターヌーンティーが運ばれてきた。
一段目には焼きたてスコーンが三種類、二段目にはローストビーフやスモークサーモンのサンドウィッチ、小さなミニグラタンのパイ、ガラスの器に入った苺と赤ワインのジュレが入ったミニパフェ。
三段目には苺のブラマンジェに苺とその他フルーツのゼリー寄せ、ピンクが可愛い苺のマカロンに、一口サイズの苺のショートケーキ、フランボワーズのケーキ。
女子の夢の憧れと言ってしまってもいいような、可愛いティースタンドを前に、目がハートになってしまいそうだ。
「かんわいぃ~」
「映えね、映え」
「ちょっと、写真撮りましょ」
撮影タイムになって私とエミリさんがスマホを出したところ、おもむろに春日さんが一眼レフを出したので笑ってしまった。
「凄い! 本格的!」
「SNSで見栄を張るなら、写真にも気合い入れないと~」
彼女は言いながら、中腰になって高層階からの眺めを背景にした、ティースタンドを激写した。
撮影タイムが終わったあと、ホテルご自慢のブレンドティーをいただきながら、いざアフターヌーンティーが始まった。
「でも意外。春日さん、SNSとかこだわるタイプなんですね」
苺味のスコーンを食べながら言うと、彼女は首をすくめる。
「私、友達いないから、そういうところで見栄を張るしかないの」
「ええ? 嘘~。春日さんなら絶対に皆の人気者じゃない」
エミリさんが言い、私も「んだ」と頷く。
てっきり笑いをとるための冗談かと思っていたんだけれど、春日さんは困ったように笑い、マカロンをポンと口に放り込んだ。
彼女は口の中の物をモグモグと咀嚼し、紅茶で流し込んでから、お酒を飲んでいる時のような荒っぽい溜め息をつく。
「皆そういう〝補正〟があるのよねぇ。うちって結構大企業じゃない。で、子供の頃から周りの子は『春日ちゃんと仲良くするのよ』って言われてるワケ。そのお陰で喧嘩一つない人生だったわ」
波風がないのはいい事……と思いがちだけど、春日さんには春日さんの苦しみがあるようだ。
「中学生の時、親友が他の女子に囲まれてシクシク泣いてるから、何事かと思って問い詰めてみたら、その子の好きな男子が私に告白して振られたんだって。でも私に悪気がないのは分かってるから、何も言えなくてつらい……って。気まずくなってその子とはなんとなく疎遠になったけど、高校生になっても似たような事があったわ」
美人でモテるがゆえの、苦しみもあったのか……。
「皆、私に遠慮して、言いたい事の一つも言えず、好きな人を取られても何も文句を言えない。……そんな状態で本当の友達なんてできないじゃない」
「……確かに……」
春日さんの悩みを聞き、私は頷く。
「それなりに、取り巻きみたいな友達はいるのよ。でも一緒にいて心安らぐ……って感じではないわね。皆、美人で金持ちの友達しか持ちたがらなくて、会話も〝そういうの〟ばっかり。腹の底が見えないから、一緒にいても何だかつまらなくて」
言ってから、春日さんは私とエミリさんを見てニヤリと笑う。
151
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる