【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
267 / 778
女子会 編

すき焼きパーティー

しおりを挟む
 ポンと送信してから、「我ながら可愛げのないメッセージだな」と反省した。

 尊さんは私が兄妹と仲良くやっていく事を望んでいる。

 彼の望みを叶えて安心させてあげたいのに、まだ私の心には燻りが残っていた。

(……だって本当に、買い物してる時に近くに立たれるとか、怖かったし嫌だったんだもん)

 亮平と和解したのはちょっと前だし、積もりに積もった鬱憤を「今日からなかった事にしましょう」とするのは、ちょっと無理がある。

(『すぐには無理だけど、努力する』って言おう)

 尊さんの言う事はすべて聞き入れたいけど、どうしても生理的に無理な事もある。

 そこはお互い、話し合っていけたらな、と思った。



**



 家に帰ると町田さんが来ていて、尊さんからすでに連絡を受けていたのか、すき焼きの準備を始めていた。

「アルコールも入るかと思うので、おつまみも作っています」

 町田さんはそう言って、キッチンでテキパキと働いていた。

「……亮平、……兄は車なんですが、どうでしょう……」

 町田さんの了解を得てサーモンのカナッペを一つつまんで尋ねると、彼女は微笑んだ。

「速水さんの事ですから、運転代行サービスを頼まれるかもしれませんね。勿論、お兄様の了承があればですが」

「あ、なるほど……」

 確かに、気遣いの人尊さんらしい選択だ。

 多分、恵が帰る時もタクシー代を渡しそうな気がする。……恵は「パパ活か」って突っ込みそうだけど……。

「お手伝いしますね」

「あら、ありがとうございます」

 私は着替えたあとに手を洗い、町田さんの手伝いを始めた。





 ほどなくして恵が来て彼女も手伝いに参加し、尊さんが帰宅してお土産を持った亮平も現れた。

 尊さんは「サシ肉の脂がきつい」というので、彼は赤身肉でのすき焼きとなり、私たちはサシの入ったA4ランクのお肉を「うまいうまい」と言ってつつき、ビールを空けた。

 恵にお土産を渡し、車を持ってるから私より頻繁に実家に行ける亮平にも、皆の分のお土産を託した。

「朱里~、今度は私と女子旅しようね~」

 酔っぱらった恵が私の腕を組み、尊さんを挑戦的に見ながらわざとらしく言う。

「行く行く!」

 そんな私たちを、尊さんはじっとりとした目で見る。

「みと子はハブにするの?」

「ぶっふぉん!」

 尊さんがいきなり〝みと子〟と名乗り始め、私は盛大に噴きだしてからテーブルをバシバシ叩いて笑う。

「亮子も連れてって」

 亮平まで悪乗りしてきたけど、私はスンッと真顔になって「キモい」と言っておいた。

 そんな感じで急遽集まってのすき焼きパーティーは和やかに行われ、町田さんが予想していたように、亮平は運転代行で帰り、恵は「パパ活」と言いながら尊さんにタクシー代を渡され、タクシーで帰っていった。



**



 一週間が過ぎるのはあっという間で、つよつよ女たちによる女子会当日となった。

 土曜日のお昼過ぎ、私は東京駅まで行って『シャングリ・ラ東京』のザ・ロビーラウンジに向かう。

 ロビーと言うと一階を想像しがちだけど、このホテルはビルの上階にあるので、向かったのは二十八階だ。

 私は黒いタートルネックニットに黒いロングタイトスカート、その上にチェックのダブルボタンジャケットを着ていった。

 五つ星ホテルに入って緊張していると、窓際の席で春日さんが手を挙げてニコニコしている。

(わ……、二人とも装いがフェミニンだ)

 春日さんは髪をハーフアップにして巻き、ヌードカラーのワンピース、エミリさんはアレンジ纏め髪に、紺色に小花柄のついた大人っぽいシフォンワンピースを着ている。

 私は一人だけマニッシュになってしまい、「場違いだったかな」とちょっと恥ずかしくなってしまった。

「ちょっとぶり!」

 春日さんは立ちあがって私にハイタッチしてきて、どんなテンションなのかよく分からないまま、私もハイタッチ
を返す。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...