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女子会 編
チェックアウト
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「寝た?」
「寝ました。……沢山鬱憤晴らせたみたいで、良かったですね」
エミリさんはベッドまでくると、春日さんとは反対側に潜り込み、羽根布団を被る。
「……皆、ストレスが溜まってるわよね。それぞれのキャパとストレスがあって、誰が一番つらいなんて言えないけど、皆で集まって言いたい事を言うと、抱えていたものがフワッと軽くなった気がするわ。『自分だけじゃない』って思える」
「そうですね。……エミリさん、愚痴を言っていたように見えませんでしたけど、楽になりました?」
尋ねると、彼女はフハッと息を吐いて笑い、私の手を握ってきた。
「勿論。私の場合、あまり人に自分の事を言うのは得意じゃないの。信用していないとかじゃなくて、得手不得手の問題かな。その分、人の話を聞くのが好きだわ。それに、女子会って皆で集まって男子禁制の場で好き放題言えるじゃない。その空気が大好きで、この一泊二日でとてもリフレッシュできた気持ちになってる」
「なら良かったです」
暗い天井を見てそっと息を吐いた私は、満ち足りた気持ちで目を閉じる。
「……これからも色々あるけど、なんとかなるわ。私もついてるし、三ノ宮重工のお嬢様もついてる」
「ふふ、頼もしいです」
小さく笑うと、エミリさんは手をポンポンと軽く叩いてきた。
そのあと、私たちは大きなベッドで仲良く、手を繋いで眠ったのだった。
翌朝はゆっくりめに起きて、ホテルに入っているルームサービスで朝食をいただいた。
アフターヌーンティーみたいにティースタンドに洋食が綺麗に盛られていて、メニューで選んだメインのエッグベネディクトは、信じられないぐらい美味しかった。
「あー……、まだちょっと頭痛いかも」
チェックアウト前、私たち三人は洗面台の前に立ち、それぞれのポーチを開けてメイクをしていた。
「春日さんは飲み過ぎなんですよ。……あ、クレドのパウダー」
「これ、いいわよ。朱里さんはSUQQUなんだ」
彼女は私が持っているパウダーを見て尋ねてくる。
「場合によりです。これはオイルインで自然なツヤも出してくれるので、サッとの時に重宝してます」
「二人とも凝ってるわねぇ……」
エミリさんは日焼け止めとBBクリームを塗ったあと、ティントチークを付けて眉毛を描き、すでにリップを塗っている。
「エミリさんはサッと派ですね」
「私、地の顔が派手だから、もとからメイクは短縮気味の癖がついてるの」
「朱里さんは、睫毛が長いわねぇ……。爪楊枝が乗りそう」
春日さんは私の顔をしげしげと見てから、口を開けて目を大きく見開き、マスカラを塗る。
「……マスカラ塗る時、そういう顔になりますよね」
「アイライン引く時なんて、般若よ」
三人で言って「あるある」と頷き、少ししてから全員の身支度が終わった。
「じゃ、行きましょか」
「お邪魔しましたー!」
私たちは荷物を持ち、お世話になったスイートルームに別れを告げる。
(尊さん来てるかな)
エレベーターに乗った私は、メッセージアプリを開く。
今朝起きたら【チェックアウトに合わせて迎えに行く】とだけあり、昨日の一連の事への反応が窺えない。
「昨晩はちょっとやりすぎたから、尊さんに謝らないとね」
「そうね、私も可愛いからって朱里さんに絡みすぎたわ」
エミリさんと春日さんは反省し合い、尊さんにどう謝るか相談している。
(そんな、怒る事じゃないと思うけどな。呆れてるとは思うけど)
ロビーまで着くと、春日さんはサッとフロントに向かった。
「私、ちょっと行ってくるから、二人で話してて」
「あの、春日さん!」
「ん?」
呼び止めると、彼女は立ち止まって微笑む。
「今回は色々ありがとうございました。次もぜひ女子会をしたいですけど、こんな立派なところじゃなくていいですからね?」
「そうそう、なんなら下見がてらラブホで女子会でもいいし」
エミリさんが言うと、春日さんの目がキランッと輝いた。
彼女は周囲をチラッと見てから、とてもいい笑顔で頷き、サムズアップした。
「ありがとね!」
エミリさんもお礼を言ったあと、「あ」とロビーのソファを指さした。
「あっ」
そこには黒いチェスターコートを着た尊さんが座っていた。
「寝ました。……沢山鬱憤晴らせたみたいで、良かったですね」
エミリさんはベッドまでくると、春日さんとは反対側に潜り込み、羽根布団を被る。
「……皆、ストレスが溜まってるわよね。それぞれのキャパとストレスがあって、誰が一番つらいなんて言えないけど、皆で集まって言いたい事を言うと、抱えていたものがフワッと軽くなった気がするわ。『自分だけじゃない』って思える」
「そうですね。……エミリさん、愚痴を言っていたように見えませんでしたけど、楽になりました?」
尋ねると、彼女はフハッと息を吐いて笑い、私の手を握ってきた。
「勿論。私の場合、あまり人に自分の事を言うのは得意じゃないの。信用していないとかじゃなくて、得手不得手の問題かな。その分、人の話を聞くのが好きだわ。それに、女子会って皆で集まって男子禁制の場で好き放題言えるじゃない。その空気が大好きで、この一泊二日でとてもリフレッシュできた気持ちになってる」
「なら良かったです」
暗い天井を見てそっと息を吐いた私は、満ち足りた気持ちで目を閉じる。
「……これからも色々あるけど、なんとかなるわ。私もついてるし、三ノ宮重工のお嬢様もついてる」
「ふふ、頼もしいです」
小さく笑うと、エミリさんは手をポンポンと軽く叩いてきた。
そのあと、私たちは大きなベッドで仲良く、手を繋いで眠ったのだった。
翌朝はゆっくりめに起きて、ホテルに入っているルームサービスで朝食をいただいた。
アフターヌーンティーみたいにティースタンドに洋食が綺麗に盛られていて、メニューで選んだメインのエッグベネディクトは、信じられないぐらい美味しかった。
「あー……、まだちょっと頭痛いかも」
チェックアウト前、私たち三人は洗面台の前に立ち、それぞれのポーチを開けてメイクをしていた。
「春日さんは飲み過ぎなんですよ。……あ、クレドのパウダー」
「これ、いいわよ。朱里さんはSUQQUなんだ」
彼女は私が持っているパウダーを見て尋ねてくる。
「場合によりです。これはオイルインで自然なツヤも出してくれるので、サッとの時に重宝してます」
「二人とも凝ってるわねぇ……」
エミリさんは日焼け止めとBBクリームを塗ったあと、ティントチークを付けて眉毛を描き、すでにリップを塗っている。
「エミリさんはサッと派ですね」
「私、地の顔が派手だから、もとからメイクは短縮気味の癖がついてるの」
「朱里さんは、睫毛が長いわねぇ……。爪楊枝が乗りそう」
春日さんは私の顔をしげしげと見てから、口を開けて目を大きく見開き、マスカラを塗る。
「……マスカラ塗る時、そういう顔になりますよね」
「アイライン引く時なんて、般若よ」
三人で言って「あるある」と頷き、少ししてから全員の身支度が終わった。
「じゃ、行きましょか」
「お邪魔しましたー!」
私たちは荷物を持ち、お世話になったスイートルームに別れを告げる。
(尊さん来てるかな)
エレベーターに乗った私は、メッセージアプリを開く。
今朝起きたら【チェックアウトに合わせて迎えに行く】とだけあり、昨日の一連の事への反応が窺えない。
「昨晩はちょっとやりすぎたから、尊さんに謝らないとね」
「そうね、私も可愛いからって朱里さんに絡みすぎたわ」
エミリさんと春日さんは反省し合い、尊さんにどう謝るか相談している。
(そんな、怒る事じゃないと思うけどな。呆れてるとは思うけど)
ロビーまで着くと、春日さんはサッとフロントに向かった。
「私、ちょっと行ってくるから、二人で話してて」
「あの、春日さん!」
「ん?」
呼び止めると、彼女は立ち止まって微笑む。
「今回は色々ありがとうございました。次もぜひ女子会をしたいですけど、こんな立派なところじゃなくていいですからね?」
「そうそう、なんなら下見がてらラブホで女子会でもいいし」
エミリさんが言うと、春日さんの目がキランッと輝いた。
彼女は周囲をチラッと見てから、とてもいい笑顔で頷き、サムズアップした。
「ありがとね!」
エミリさんもお礼を言ったあと、「あ」とロビーのソファを指さした。
「あっ」
そこには黒いチェスターコートを着た尊さんが座っていた。
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