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指輪デート 編
指輪を買いに
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そう言ったんだけれど、尊さんは腕組みして無言になり、考え込んでしまった。
「んも~、気にしいだなぁ……」
私は尊さんの脇腹を指でクリクリとつついていじる。
するとギュッと手を握られ、ジロリと睨まれた。
――けど、彼は「あ」という顔をして尋ねてくる。
「神は?」
「んー、…………もらいました」
私は少し気まずいながらも答えて、お返しをもらった時の事を思い出す。
バレンタイン当日、私は仕事が終わったあとに神くんをビルの展望台に呼び出し、痴漢から助けてくれたお礼込みでチョコを渡した。
その時少し食い下がられたけど、私が彼になびく事はないとハッキリ伝え、少し気まずい雰囲気になってしまった。
でもさすが尊さんが目を掛けている神くんだけあって、自分のマイナスの感情に折り合いをつけ、またいつも通りお願いしますと言ってくれ、今に至る。
とはいえ、少しだけ切ない気持ちをぶつけられてしまい、あの出来事が魚の小骨のように引っ掛かっている。
でも、時間を掛けてお互い忘れていくしかない。
そう思っていたらホワイトデーになり、神くんから一か月前と同じ場所に呼び出され、お返しのお菓子をもらった次第だ。
「……でも『お返しをして、これで最後です』って言ってました。私は助けてもらったお礼も込みで、ちょうど二月だったからチョコをあげたんです。そしたらお返しとしてホワイトデーに……って事らしくて。来年からは何もなしです」
「そうか……」
尊さんは溜め息をつき、少しの間、窓の外を見て何か考えていた。
「……まぁ、それで終わりでいいんじゃないか? 朱里としては気まずさがあるだろうけど、お互いのためにもそのほうがいい」
「ですよね……」
私は脚を組み、「ふー……」と溜め息をつく。
と、尊さんが私の手を握り、その甲にチュッとキスをしてきた。
「週末は俺とのデートだから、他の男の事考えるなよ?」
「……は、はい」
近づけられた顔の良さにポッと赤面しつつ、私はつい運転手さんの反応を気にしてバックミラーを見てしまう。
けれど運転手さんはこういうのには慣れているのか、まっすぐ前を見たままだった。
**
土曜日、私はキャミソールの上にグレージュのシースルーニットを着て、春らしいラベンダーカラーのマーメイドスカートを穿いた。
髪は一本に纏めてくるりんぱをし、毛先を軽く巻くと、トレンチコートを羽織る。
「お待たせです」
リビングに行くと、尊さんはすでに支度を終えて待っていた。
「おう」
彼は白ニットに黒いジャケット、黒いテーパードパンツというモノトーンコーデだ。
(……この男、何を着てもさまになる……)
私はスッ……とスマホを出し、何も言わずにパシャッと彼を撮る。
「チェキ代とるぞ」
尊さんはクシャッと笑い、自分もスマホを出して私を撮影する。
「尊さんにファンサしてもらえるなら、課金しますよ」
「無課金でファンサするよ」
ソファから立った尊さんは、改めて上から下まで私を見て頷いた。
「今日も推しが可愛くてつらい」
「あははっ!」
アイドルオタクみたいな事を言うからおかしくて、私はつい笑ってしまう。
「さて、行くか」
「推しとのデートですね」
まだ推しネタを引っ張ると、尊さんは苦笑する。
「過激派に刺されるな」
「やだもー」
そんな会話をしながら、私たちは玄関に向かった。
**
ハイヤーの中で、尊さんが言う。
「急で悪いけど、今日は婚約指輪と結婚指輪を決めたいと思って」
「えっ? 本当に急ですね」
「銀座に行けばティファニーやカルティエ、ヴァンクリと色々店舗があるから、順番に回って見てみよう」
「わぁ……」
銀座、それに名だたるハイジュエリーブランドの名前が出て、私は目を丸くする。
「んも~、気にしいだなぁ……」
私は尊さんの脇腹を指でクリクリとつついていじる。
するとギュッと手を握られ、ジロリと睨まれた。
――けど、彼は「あ」という顔をして尋ねてくる。
「神は?」
「んー、…………もらいました」
私は少し気まずいながらも答えて、お返しをもらった時の事を思い出す。
バレンタイン当日、私は仕事が終わったあとに神くんをビルの展望台に呼び出し、痴漢から助けてくれたお礼込みでチョコを渡した。
その時少し食い下がられたけど、私が彼になびく事はないとハッキリ伝え、少し気まずい雰囲気になってしまった。
でもさすが尊さんが目を掛けている神くんだけあって、自分のマイナスの感情に折り合いをつけ、またいつも通りお願いしますと言ってくれ、今に至る。
とはいえ、少しだけ切ない気持ちをぶつけられてしまい、あの出来事が魚の小骨のように引っ掛かっている。
でも、時間を掛けてお互い忘れていくしかない。
そう思っていたらホワイトデーになり、神くんから一か月前と同じ場所に呼び出され、お返しのお菓子をもらった次第だ。
「……でも『お返しをして、これで最後です』って言ってました。私は助けてもらったお礼も込みで、ちょうど二月だったからチョコをあげたんです。そしたらお返しとしてホワイトデーに……って事らしくて。来年からは何もなしです」
「そうか……」
尊さんは溜め息をつき、少しの間、窓の外を見て何か考えていた。
「……まぁ、それで終わりでいいんじゃないか? 朱里としては気まずさがあるだろうけど、お互いのためにもそのほうがいい」
「ですよね……」
私は脚を組み、「ふー……」と溜め息をつく。
と、尊さんが私の手を握り、その甲にチュッとキスをしてきた。
「週末は俺とのデートだから、他の男の事考えるなよ?」
「……は、はい」
近づけられた顔の良さにポッと赤面しつつ、私はつい運転手さんの反応を気にしてバックミラーを見てしまう。
けれど運転手さんはこういうのには慣れているのか、まっすぐ前を見たままだった。
**
土曜日、私はキャミソールの上にグレージュのシースルーニットを着て、春らしいラベンダーカラーのマーメイドスカートを穿いた。
髪は一本に纏めてくるりんぱをし、毛先を軽く巻くと、トレンチコートを羽織る。
「お待たせです」
リビングに行くと、尊さんはすでに支度を終えて待っていた。
「おう」
彼は白ニットに黒いジャケット、黒いテーパードパンツというモノトーンコーデだ。
(……この男、何を着てもさまになる……)
私はスッ……とスマホを出し、何も言わずにパシャッと彼を撮る。
「チェキ代とるぞ」
尊さんはクシャッと笑い、自分もスマホを出して私を撮影する。
「尊さんにファンサしてもらえるなら、課金しますよ」
「無課金でファンサするよ」
ソファから立った尊さんは、改めて上から下まで私を見て頷いた。
「今日も推しが可愛くてつらい」
「あははっ!」
アイドルオタクみたいな事を言うからおかしくて、私はつい笑ってしまう。
「さて、行くか」
「推しとのデートですね」
まだ推しネタを引っ張ると、尊さんは苦笑する。
「過激派に刺されるな」
「やだもー」
そんな会話をしながら、私たちは玄関に向かった。
**
ハイヤーの中で、尊さんが言う。
「急で悪いけど、今日は婚約指輪と結婚指輪を決めたいと思って」
「えっ? 本当に急ですね」
「銀座に行けばティファニーやカルティエ、ヴァンクリと色々店舗があるから、順番に回って見てみよう」
「わぁ……」
銀座、それに名だたるハイジュエリーブランドの名前が出て、私は目を丸くする。
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