【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
294 / 782
指輪デート 編

指輪を買いに

しおりを挟む
 そう言ったんだけれど、尊さんは腕組みして無言になり、考え込んでしまった。

「んも~、気にしいだなぁ……」

 私は尊さんの脇腹を指でクリクリとつついていじる。

 するとギュッと手を握られ、ジロリと睨まれた。

 ――けど、彼は「あ」という顔をして尋ねてくる。

「神は?」

「んー、…………もらいました」

 私は少し気まずいながらも答えて、お返しをもらった時の事を思い出す。

 バレンタイン当日、私は仕事が終わったあとに神くんをビルの展望台に呼び出し、痴漢から助けてくれたお礼込みでチョコを渡した。

 その時少し食い下がられたけど、私が彼になびく事はないとハッキリ伝え、少し気まずい雰囲気になってしまった。

 でもさすが尊さんが目を掛けている神くんだけあって、自分のマイナスの感情に折り合いをつけ、またいつも通りお願いしますと言ってくれ、今に至る。

 とはいえ、少しだけ切ない気持ちをぶつけられてしまい、あの出来事が魚の小骨のように引っ掛かっている。

 でも、時間を掛けてお互い忘れていくしかない。

 そう思っていたらホワイトデーになり、神くんから一か月前と同じ場所に呼び出され、お返しのお菓子をもらった次第だ。

「……でも『お返しをして、これで最後です』って言ってました。私は助けてもらったお礼も込みで、ちょうど二月だったからチョコをあげたんです。そしたらお返しとしてホワイトデーに……って事らしくて。来年からは何もなしです」

「そうか……」

 尊さんは溜め息をつき、少しの間、窓の外を見て何か考えていた。

「……まぁ、それで終わりでいいんじゃないか? 朱里としては気まずさがあるだろうけど、お互いのためにもそのほうがいい」

「ですよね……」

 私は脚を組み、「ふー……」と溜め息をつく。

 と、尊さんが私の手を握り、その甲にチュッとキスをしてきた。

「週末は俺とのデートだから、他の男の事考えるなよ?」

「……は、はい」

 近づけられた顔の良さにポッと赤面しつつ、私はつい運転手さんの反応を気にしてバックミラーを見てしまう。

 けれど運転手さんはこういうのには慣れているのか、まっすぐ前を見たままだった。



**



 土曜日、私はキャミソールの上にグレージュのシースルーニットを着て、春らしいラベンダーカラーのマーメイドスカートを穿いた。

 髪は一本に纏めてくるりんぱをし、毛先を軽く巻くと、トレンチコートを羽織る。

「お待たせです」

 リビングに行くと、尊さんはすでに支度を終えて待っていた。

「おう」

 彼は白ニットに黒いジャケット、黒いテーパードパンツというモノトーンコーデだ。

(……この男、何を着てもさまになる……)

 私はスッ……とスマホを出し、何も言わずにパシャッと彼を撮る。

「チェキ代とるぞ」

 尊さんはクシャッと笑い、自分もスマホを出して私を撮影する。

「尊さんにファンサしてもらえるなら、課金しますよ」

「無課金でファンサするよ」

 ソファから立った尊さんは、改めて上から下まで私を見て頷いた。

「今日も推しが可愛くてつらい」

「あははっ!」

 アイドルオタクみたいな事を言うからおかしくて、私はつい笑ってしまう。

「さて、行くか」

「推しとのデートですね」

 まだ推しネタを引っ張ると、尊さんは苦笑する。

「過激派に刺されるな」

「やだもー」

 そんな会話をしながら、私たちは玄関に向かった。



**



 ハイヤーの中で、尊さんが言う。

「急で悪いけど、今日は婚約指輪と結婚指輪を決めたいと思って」

「えっ? 本当に急ですね」

「銀座に行けばティファニーやカルティエ、ヴァンクリと色々店舗があるから、順番に回って見てみよう」

「わぁ……」

 銀座、それに名だたるハイジュエリーブランドの名前が出て、私は目を丸くする。
しおりを挟む
感想 2,470

あなたにおすすめの小説

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

【完結】婚約破棄?ってなんですの?

紫宛
恋愛
「相も変わらず、華やかさがないな」 と言われ、婚約破棄を宣言されました。 ですが……? 貴方様は、どちら様ですの? 私は、辺境伯様の元に嫁ぎますの。

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。

有賀冬馬
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。 特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。 けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。 彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下! 「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。 私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。

【完結】旦那様の幼馴染が離婚しろと迫って来ましたが何故あなたの言いなりに離婚せねばなりませんの?

水月 潮
恋愛
フルール・ベルレアン侯爵令嬢は三ヶ月前にジュリアン・ブロワ公爵令息と結婚した。 ある日、フルールはジュリアンと共にブロワ公爵邸の薔薇園を散策していたら、二人の元へ使用人が慌ててやって来て、ジュリアンの幼馴染のキャシー・ボナリー子爵令嬢が訪問していると報告を受ける。 二人は応接室に向かうとそこでキャシーはとんでもない発言をする。 ジュリアンとキャシーは婚約者で、キャシーは両親の都合で数年間隣の国にいたが、やっとこの国に戻って来れたので、結婚しようとのこと。 ジュリアンはすかさずキャシーと婚約関係にあった事実はなく、もう既にフルールと結婚していると返答する。 「じゃあ、そのフルールとやらと離婚して私と再婚しなさい!」 ……あの? 何故あなたの言いなりに離婚しなくてはならないのかしら? 私達の結婚は政略的な要素も含んでいるのに、たかが子爵令嬢でしかないあなたにそれに口を挟む権利があるとでもいうのかしら? ※設定は緩いです 物語としてお楽しみ頂けたらと思います *HOTランキング1位(2021.7.13) 感謝です*.* 恋愛ランキング2位(2021.7.13)

処理中です...