【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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指輪デート 編

指輪を買いに

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 そう言ったんだけれど、尊さんは腕組みして無言になり、考え込んでしまった。

「んも~、気にしいだなぁ……」

 私は尊さんの脇腹を指でクリクリとつついていじる。

 するとギュッと手を握られ、ジロリと睨まれた。

 ――けど、彼は「あ」という顔をして尋ねてくる。

「神は?」

「んー、…………もらいました」

 私は少し気まずいながらも答えて、お返しをもらった時の事を思い出す。

 バレンタイン当日、私は仕事が終わったあとに神くんをビルの展望台に呼び出し、痴漢から助けてくれたお礼込みでチョコを渡した。

 その時少し食い下がられたけど、私が彼になびく事はないとハッキリ伝え、少し気まずい雰囲気になってしまった。

 でもさすが尊さんが目を掛けている神くんだけあって、自分のマイナスの感情に折り合いをつけ、またいつも通りお願いしますと言ってくれ、今に至る。

 とはいえ、少しだけ切ない気持ちをぶつけられてしまい、あの出来事が魚の小骨のように引っ掛かっている。

 でも、時間を掛けてお互い忘れていくしかない。

 そう思っていたらホワイトデーになり、神くんから一か月前と同じ場所に呼び出され、お返しのお菓子をもらった次第だ。

「……でも『お返しをして、これで最後です』って言ってました。私は助けてもらったお礼も込みで、ちょうど二月だったからチョコをあげたんです。そしたらお返しとしてホワイトデーに……って事らしくて。来年からは何もなしです」

「そうか……」

 尊さんは溜め息をつき、少しの間、窓の外を見て何か考えていた。

「……まぁ、それで終わりでいいんじゃないか? 朱里としては気まずさがあるだろうけど、お互いのためにもそのほうがいい」

「ですよね……」

 私は脚を組み、「ふー……」と溜め息をつく。

 と、尊さんが私の手を握り、その甲にチュッとキスをしてきた。

「週末は俺とのデートだから、他の男の事考えるなよ?」

「……は、はい」

 近づけられた顔の良さにポッと赤面しつつ、私はつい運転手さんの反応を気にしてバックミラーを見てしまう。

 けれど運転手さんはこういうのには慣れているのか、まっすぐ前を見たままだった。



**



 土曜日、私はキャミソールの上にグレージュのシースルーニットを着て、春らしいラベンダーカラーのマーメイドスカートを穿いた。

 髪は一本に纏めてくるりんぱをし、毛先を軽く巻くと、トレンチコートを羽織る。

「お待たせです」

 リビングに行くと、尊さんはすでに支度を終えて待っていた。

「おう」

 彼は白ニットに黒いジャケット、黒いテーパードパンツというモノトーンコーデだ。

(……この男、何を着てもさまになる……)

 私はスッ……とスマホを出し、何も言わずにパシャッと彼を撮る。

「チェキ代とるぞ」

 尊さんはクシャッと笑い、自分もスマホを出して私を撮影する。

「尊さんにファンサしてもらえるなら、課金しますよ」

「無課金でファンサするよ」

 ソファから立った尊さんは、改めて上から下まで私を見て頷いた。

「今日も推しが可愛くてつらい」

「あははっ!」

 アイドルオタクみたいな事を言うからおかしくて、私はつい笑ってしまう。

「さて、行くか」

「推しとのデートですね」

 まだ推しネタを引っ張ると、尊さんは苦笑する。

「過激派に刺されるな」

「やだもー」

 そんな会話をしながら、私たちは玄関に向かった。



**



 ハイヤーの中で、尊さんが言う。

「急で悪いけど、今日は婚約指輪と結婚指輪を決めたいと思って」

「えっ? 本当に急ですね」

「銀座に行けばティファニーやカルティエ、ヴァンクリと色々店舗があるから、順番に回って見てみよう」

「わぁ……」

 銀座、それに名だたるハイジュエリーブランドの名前が出て、私は目を丸くする。
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