294 / 810
指輪デート 編
指輪を買いに
しおりを挟む
そう言ったんだけれど、尊さんは腕組みして無言になり、考え込んでしまった。
「んも~、気にしいだなぁ……」
私は尊さんの脇腹を指でクリクリとつついていじる。
するとギュッと手を握られ、ジロリと睨まれた。
――けど、彼は「あ」という顔をして尋ねてくる。
「神は?」
「んー、…………もらいました」
私は少し気まずいながらも答えて、お返しをもらった時の事を思い出す。
バレンタイン当日、私は仕事が終わったあとに神くんをビルの展望台に呼び出し、痴漢から助けてくれたお礼込みでチョコを渡した。
その時少し食い下がられたけど、私が彼になびく事はないとハッキリ伝え、少し気まずい雰囲気になってしまった。
でもさすが尊さんが目を掛けている神くんだけあって、自分のマイナスの感情に折り合いをつけ、またいつも通りお願いしますと言ってくれ、今に至る。
とはいえ、少しだけ切ない気持ちをぶつけられてしまい、あの出来事が魚の小骨のように引っ掛かっている。
でも、時間を掛けてお互い忘れていくしかない。
そう思っていたらホワイトデーになり、神くんから一か月前と同じ場所に呼び出され、お返しのお菓子をもらった次第だ。
「……でも『お返しをして、これで最後です』って言ってました。私は助けてもらったお礼も込みで、ちょうど二月だったからチョコをあげたんです。そしたらお返しとしてホワイトデーに……って事らしくて。来年からは何もなしです」
「そうか……」
尊さんは溜め息をつき、少しの間、窓の外を見て何か考えていた。
「……まぁ、それで終わりでいいんじゃないか? 朱里としては気まずさがあるだろうけど、お互いのためにもそのほうがいい」
「ですよね……」
私は脚を組み、「ふー……」と溜め息をつく。
と、尊さんが私の手を握り、その甲にチュッとキスをしてきた。
「週末は俺とのデートだから、他の男の事考えるなよ?」
「……は、はい」
近づけられた顔の良さにポッと赤面しつつ、私はつい運転手さんの反応を気にしてバックミラーを見てしまう。
けれど運転手さんはこういうのには慣れているのか、まっすぐ前を見たままだった。
**
土曜日、私はキャミソールの上にグレージュのシースルーニットを着て、春らしいラベンダーカラーのマーメイドスカートを穿いた。
髪は一本に纏めてくるりんぱをし、毛先を軽く巻くと、トレンチコートを羽織る。
「お待たせです」
リビングに行くと、尊さんはすでに支度を終えて待っていた。
「おう」
彼は白ニットに黒いジャケット、黒いテーパードパンツというモノトーンコーデだ。
(……この男、何を着てもさまになる……)
私はスッ……とスマホを出し、何も言わずにパシャッと彼を撮る。
「チェキ代とるぞ」
尊さんはクシャッと笑い、自分もスマホを出して私を撮影する。
「尊さんにファンサしてもらえるなら、課金しますよ」
「無課金でファンサするよ」
ソファから立った尊さんは、改めて上から下まで私を見て頷いた。
「今日も推しが可愛くてつらい」
「あははっ!」
アイドルオタクみたいな事を言うからおかしくて、私はつい笑ってしまう。
「さて、行くか」
「推しとのデートですね」
まだ推しネタを引っ張ると、尊さんは苦笑する。
「過激派に刺されるな」
「やだもー」
そんな会話をしながら、私たちは玄関に向かった。
**
ハイヤーの中で、尊さんが言う。
「急で悪いけど、今日は婚約指輪と結婚指輪を決めたいと思って」
「えっ? 本当に急ですね」
「銀座に行けばティファニーやカルティエ、ヴァンクリと色々店舗があるから、順番に回って見てみよう」
「わぁ……」
銀座、それに名だたるハイジュエリーブランドの名前が出て、私は目を丸くする。
「んも~、気にしいだなぁ……」
私は尊さんの脇腹を指でクリクリとつついていじる。
するとギュッと手を握られ、ジロリと睨まれた。
――けど、彼は「あ」という顔をして尋ねてくる。
「神は?」
「んー、…………もらいました」
私は少し気まずいながらも答えて、お返しをもらった時の事を思い出す。
バレンタイン当日、私は仕事が終わったあとに神くんをビルの展望台に呼び出し、痴漢から助けてくれたお礼込みでチョコを渡した。
その時少し食い下がられたけど、私が彼になびく事はないとハッキリ伝え、少し気まずい雰囲気になってしまった。
でもさすが尊さんが目を掛けている神くんだけあって、自分のマイナスの感情に折り合いをつけ、またいつも通りお願いしますと言ってくれ、今に至る。
とはいえ、少しだけ切ない気持ちをぶつけられてしまい、あの出来事が魚の小骨のように引っ掛かっている。
でも、時間を掛けてお互い忘れていくしかない。
そう思っていたらホワイトデーになり、神くんから一か月前と同じ場所に呼び出され、お返しのお菓子をもらった次第だ。
「……でも『お返しをして、これで最後です』って言ってました。私は助けてもらったお礼も込みで、ちょうど二月だったからチョコをあげたんです。そしたらお返しとしてホワイトデーに……って事らしくて。来年からは何もなしです」
「そうか……」
尊さんは溜め息をつき、少しの間、窓の外を見て何か考えていた。
「……まぁ、それで終わりでいいんじゃないか? 朱里としては気まずさがあるだろうけど、お互いのためにもそのほうがいい」
「ですよね……」
私は脚を組み、「ふー……」と溜め息をつく。
と、尊さんが私の手を握り、その甲にチュッとキスをしてきた。
「週末は俺とのデートだから、他の男の事考えるなよ?」
「……は、はい」
近づけられた顔の良さにポッと赤面しつつ、私はつい運転手さんの反応を気にしてバックミラーを見てしまう。
けれど運転手さんはこういうのには慣れているのか、まっすぐ前を見たままだった。
**
土曜日、私はキャミソールの上にグレージュのシースルーニットを着て、春らしいラベンダーカラーのマーメイドスカートを穿いた。
髪は一本に纏めてくるりんぱをし、毛先を軽く巻くと、トレンチコートを羽織る。
「お待たせです」
リビングに行くと、尊さんはすでに支度を終えて待っていた。
「おう」
彼は白ニットに黒いジャケット、黒いテーパードパンツというモノトーンコーデだ。
(……この男、何を着てもさまになる……)
私はスッ……とスマホを出し、何も言わずにパシャッと彼を撮る。
「チェキ代とるぞ」
尊さんはクシャッと笑い、自分もスマホを出して私を撮影する。
「尊さんにファンサしてもらえるなら、課金しますよ」
「無課金でファンサするよ」
ソファから立った尊さんは、改めて上から下まで私を見て頷いた。
「今日も推しが可愛くてつらい」
「あははっ!」
アイドルオタクみたいな事を言うからおかしくて、私はつい笑ってしまう。
「さて、行くか」
「推しとのデートですね」
まだ推しネタを引っ張ると、尊さんは苦笑する。
「過激派に刺されるな」
「やだもー」
そんな会話をしながら、私たちは玄関に向かった。
**
ハイヤーの中で、尊さんが言う。
「急で悪いけど、今日は婚約指輪と結婚指輪を決めたいと思って」
「えっ? 本当に急ですね」
「銀座に行けばティファニーやカルティエ、ヴァンクリと色々店舗があるから、順番に回って見てみよう」
「わぁ……」
銀座、それに名だたるハイジュエリーブランドの名前が出て、私は目を丸くする。
172
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる