【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
296 / 778
指輪デート 編

最高のスパダリ

しおりを挟む
「ホワイトデーじゃないけど、お望み通り肉」

「肉!」

 店内に入ると大きな窓の向こうには銀座の街並みが見え、壁際には棚の上にニュージーランドのアートが飾られてあった。

 他にも国旗が飾られていたり、シートはモスグリーンで自然を意識している感じで、お洒落だけど郷土愛を感じさせる内装になっている。

 席につくまで他の人のテーブルをチラッと見ると、みんな鉄板の上でジュージューしてる骨付きのお肉や、ゴロンとしたお肉を食べていた。

 他のアラカルトメニューも美味しそうで、ワクワクしてしまう。

 窓際の席に案内され、お水を出されたあと、私はワクワクしてメニューを開く。

「アルコールメニューが多いけど、昼間だしソフトドリンクにしておくか」

「はい。ピンクグレープフルーツジュース」

「早ぇな」

 ドリンクメニューを見て即決した私に、尊さんは笑い崩れる。

 ニュージーランドワインも沢山あって興味があるけど、今日は昼も夜も大切な日だからまた今度にしておく。

「さて……」

 飲み物をオーダーしたあと、私は心してメニューを開く。

「どうしよう~。どれも美味しそうでときめいちゃう……! 涎がジュビジュバ」

 目を輝かせてメニューを見ている私を見て、尊さんは呆れ半分、感心半分で溜め息をついた。

「……お前、俺といる時もそんな高い声をあげてときめかないよな……。肉、すげぇな」

「肉は最高のスパダリですから」

「食っちまうの?」

「愛する人を食べて血肉にする……」

 両手を合わせて片頬に添え、うっとりと目を閉じると、尊さんが「怖ぇって」と突っ込んで笑った。

「この盛り合わせだと、羊も牛も食えて良さそうだな」

「ですね。……あぁ、牡蠣も気になる。ん? フルーツソースの掛かったブラータチーズ! しゅてき……!」

 メニューを見ながら味を想像しているので、本当に涎が零れそうになって、思わず手で口元を押さえる。

 ちなみにブラータチーズとは、ざっくりとモッツァレラチーズに似たタイプの物だ。

「夜に影響しない程度なら、なんでも食えよ」

「いい? 頼んでいい?」

「いいってば。でも野菜も食えよ」

「はーいシーザーサラダ」

 私は流れるように即決する。

「デザートは?」

「んーと、これ! 大将、ホーキーポーキー一丁!」

 ホーキーポーキーとは、ニュージーランドのアイスクリームのフレーバーで、バニラアイスにトフィー……、キャラメルやヌガーみたいな物が入ってるやつだ。

「……ホント、食べ物を前にすると、すげぇ元気だな」

 楽しそうに笑った尊さんも、同じようにお肉の盛り合わせと牡蠣を頼み、チーズとサラダはシェアして食べる事にした。

 パスタも美味しそうだったけど、また今度……。

 オーダーし終わったあと、私はルンルンして両手を拳にしてトントンとテーブルを打つ。

「ガキか」

 尊さんは呆れたように笑い、そんな私の様子を動画に撮っている。

「おっにく♪ おっにく♪」

 しばらくルンルンしていたけれど、尊さんが神妙な面持ちになってスマホをしまったので、「ん?」と彼を見て首を傾げる。

「……いや、今日って女子の憧れのハイブランドの店に入ったから、てっきりそっちでテンションぶち上げてくれると思ってたんだけど、肉の足元にも及ばない事が分かった」

「女ゴコロを理解しようなんて、早い早い」

「みと子はまだ初心者だから、肉の申し子の気持ちは分からないわ……」

 うなだれる尊さんがおかしくて、私はケラケラ笑う。

「飯食ったあと、二軒は行きたいと思ってるけど、大丈夫か?」

「はい! お肉の分、誠心誠意をもって選ばせていただきます」

「……午前の部とやる気が違う……」

 尊さんはガックリとうなだれ、手で額を押さえた。

 その後、牡蠣をちゅるんと食べ、あっさりした赤身の多い肉をモリモリといただき、尊さんの「野菜食え」の圧を受けながらサラダを食べ、半分こしたチーズもペロリと完食する。

「はぁ~、映えうま~」

 ニコニコしてアイスを食べている私を、尊さんはコーヒーをのみつつ、少し引いた目で見ている。

「中村さんが『化け物』って言ってたのがよく分かるわ……」

「なにをう、失礼な」

 私は尊さんの分もミルクをもらい、コーヒーに入れてかき混ぜる。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...