【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
297 / 778
指輪デート 編

親戚紹介

しおりを挟む
「あぁ……、お腹いっぱい……。沢山悩んで頭を働かせて、消化しないと」

 お腹をさすりつつ言うと、尊さんがびっくりして突っ込んできた。

「それで消化するのか!?」

「多分すると思います」

「しねぇよ」

 尊さんはビシッと突っ込んだあと、大きめの溜め息をつく。

「…………神たちは驚くだろうな……。ツンとしたお澄まし美人と思ってるのに、蓋を開けたら胃袋がわんぱくな愉快な女だもんな……」

「なんて例え方をするんですか。可愛い彼女に向かって、もう……」

 むくれてみせると、尊さんはテーブルの上にのっていた私の手に自分のそれを重ね、微笑んできた。

「食いしん坊も含めて、世界一魅力的な婚約者だと思ってるよ」

「む、むぅ……」

 婚約者と言われ、私はむくれた顔をキープしようとして……、ニマァ……とにやついてしまう。

「体は正直だな」

 そう言われ、私は目をまん丸に見開くと、他の客席のほうを見た。セ、セーフ……!

「ちょ、ちょっと。外で卑猥な事を言わないでくださいよ」

「じゃあ、顔面は正直って言ったほうが良かったか?」

「もう……」

 私は下唇を出してむくれたあと、アイスを食べ終えてコーヒーを飲む。

「お土産、どんな物がいいですか?」

「皆で食べられるデザート類がいいと思う」

「そうなんですか? お土産物って、生菓子系はあまり良くないかと思ってました」

 尊さんと付き合うようになってから、結婚に関するマナーをネットで調べて、生菓子は相手の食べるタイミングが合わないかもしれないから、避けたほうがいいと書いてあった。

「場合により、だよ」

 尊さんはそう言ってから、スマホを出して操作し、写真を見せてきた。

「これがちえり叔母さん」

「ん、どれどれ……」

 身を乗り出して尊さんのスマホを覗き込むと、笑顔の集合写真がある。

「これが裕真ゆうま伯父さん。五十七歳で『HAYAMI』の現社長。で、その息子の貴弘たかひろくんは副社長で三十四歳。専業主婦の奥さんが菊花きっかさん、三十二歳。その長女の心陽こはるちゃん六歳、愛菜あいなちゃん四歳、陽太ひなたくん二歳。こっちがちえり叔母さん。五十三歳で、ピアノ教室『詩音しおん』グループの社長。……母は生きていたら五十五歳だ」

 尊さんは一人ずつ順番に写真をピンチインして顔をアップにし、親戚を紹介していく。

 今、名前は出なかったけれど、妹のあかりさんが生きていたら私と同じ二十六歳だ。

「で、こっちが雅也まさや叔父さん、五十五歳。ちえり叔母さんの夫で、呉服屋『東雲』の社長。その長男の大地だいち、三十歳。『東雲』の常務。長女の小牧ちゃんが小料理屋『こま希』をやってる二十九歳。次女の弥生やよいちゃんは母親のピアノ教室で講師をしてる二十七歳」

 その写真には、さゆりさんが仲違いしたお祖母さんはいない。

 尊さんがいる場で撮った写真なら、当然だろうけど。

「お祖父さんとお祖母さんは?」

 尋ねると、尊さんはスマホをしまって苦笑いした。

「わかんね。二人とも、子供世代、孫世代が俺と交流してるのは知ってるけど、黙認状態だ。ちえり叔母さんたちは祖父母にいっさい言わないし、逆に尋ねられる事もない。話題に出ても『元気にしてる』程度で、祖父母が何を言っていたかも言わない。……そもそも、何も言われてない訳だから、言いようがないんだけどな」

「なるほど……」

 二十歳の尊さんが名古屋の本家まで行って顔を見ようしたけど、結局祖父母には会えず、自殺しようとした私に出会った訳で……。

 当時の事を思い出すと、フ……ッと気持ちが重たくなったけれど、コーヒーを一口飲んでごまかす。

 その時、尊さんのスマホがピコンと鳴った。

「悪い。ちえり叔母さんかも」

 彼は断りを入れ、スマホを見る。

 スマホを操作した彼は画面を見て微かに瞠目し、それから私を見てくる。

「……なに? ちえりさん達、何か都合が悪いとか……」

 何か私に関する事だと察して尋ねたけれど、尊さんは微笑んでスマホをしまった。

「いや、別の相手だ」

 そう言った彼は詳細を話さず、コーヒーを飲む。

 私が尊さんを疑うなんて絶対にないし、彼が私を裏切るなんて事もない。

 でもいつもならなんでも情報を明かしてくれるのに、この時は何かをごまかすように黙ったのが、胸の奥に引っ掛かった。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...